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衆参同日選の見送り

 安倍晋三首相は任期満了に参院選に伴う解散・総選挙をぶつける衆参同日選を見送る方針を固めた。これにより、参院選は公職選挙法の規定により7月4日公示、21日投開票の日程で行われる。
 自民党内では同日選とすることで選挙運動の相乗効果が期待できるうえ、共闘を準備する野党が衆参で分断される可能性があることから「解散風」を吹かせていた。安倍首相がどの程度、解散に傾倒していたのかは不明だが、解散の憶測を否定しないこれまでの発言は、常に政権運営を有利に進めたいという自民党総裁としての願望を念頭に置いてのことだろう。
 前回の衆院解散は2017年9月だった。議員任期4年の半分も経過しないうちに衆院を解散するにはよほどの大義が必要だが、今のところ解散すべき大義は見当たらない。
 一部に消費税率10%への引き上げを延期して国民に是非を問うという観測もあったが、すでに小売店などが増税への準備を進めていること、「リーマンショック級」の事態が起こっていないことを考えても、安倍首相に増税を延期する理由はない。
 首相の持つ解散権は「伝家の宝刀」などと呼ばれる。「家に代々伝わる大切な刀。転じて、いよいよという場合にのみ使用するもの。切り札」と辞書にあるが、歴代内閣のほぼすべてが宝刀を抜いている。
 戦後の衆院選は24回あったが、任期満了は1976年の1回きり。この時は、田中角栄前首相がロッキード事件で逮捕された影響により、自民党内が分裂。三木武夫首相が事態を解消するために解散権を行使しようとしたが閣僚に反対され断念。そのまま解散権行使のタイミングを失い任期満了を迎えたという顛末だ。
 その他の23回はすべて、首相が解散権を行使している。「死んだふり解散」(1986年)、「郵政解散」(2005年)などのネーミングが有名だが、直近の「国難突破解散」(2017年)は党利党略そのものだった。内閣改造から約3カ月の解散で「解散権の濫用」との批判が渦巻き、有権者は気乗りしないまま安倍政権継続の是非を問われた。
 本来、解散というものは、大きな政治問題に直面して議会内の意見対立が激化した場合などに、国民の意思を問うために行うべきではないだろうか。選挙によって選ばれた議会を解散するのであれば、国民を納得させる理由が不可欠だ。
 国民の関心を抱くような重大な政治対立がないにもかかわらず、もし、安倍首相が解散・総選挙による衆参同日選挙に踏み切っていれば、国民不在の党利党略と誹られていただろう。ただ、大義を持たない解散が観測や憶測として流れるのは、野党が国民の支持を得られず、安倍政権批判の受け皿になれていないという背景もあるのではないか。解散によって政権交代が起こる可能性がないからこそ、伝家の宝刀を抜きやすい、と。
 安易な解散を制約する仕組みが欲しい。

2019年06月11日 16:04 |


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