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2019年06月17日

交番襲撃許すまじ

 16日朝、大阪府吹田市の吹田署千里山交番の前で、警察官が包丁で刺されて拳銃を奪われた。来週末には大阪市内で20カ国・地域による首脳会議(G20サミット)が開かれる予定なだけに、最悪のタイミングで発生した。
 拳銃が次なる犯行を生まないためにも犯人の早期逮捕が求められていたが、17日早朝、33歳の容疑者の男が逮捕された。奪われた拳銃も回収できた。
 逮捕の決め手は防犯カメラの画像だった。交番に設置されたカメラは、付近をうろつく不審な男をとらえ、画像が公開されると「息子に似ている」との届け出があり、容疑者の特定につながった。
 16日午後8時ごろに箕面市内の山中にある防犯カメラに似た男が写っていた。捜査員は日の出を待って山中に入り、ベンチで横になっている容疑者を発見した。
 交番に詰める警察官が襲撃される事件は1年前の6月にも発生している。富山市の交番で元自衛官の男が警察官を殺害し、拳銃を奪った。さらに交番近くの小学校前で、警備員の男性を射殺した。昨年9月には仙台市の交番で大学生の男が警察官を刺殺する事件も起きている。
 日本の治安の良さは世界的に評価される。その一端を担うのが、警察官が地域に溶け込む交番や駐在所の存在だろう。交番と駐在所は全国に約1万2500カ所にのぼる。交番には原則として24時間、警察官が常駐し、地域の治安を守るだけでなく、遺失物の取り扱いから登下校する子どもの見守りまで、幅広い活動で市民の安全を守ってくれている。
 この交番システムは世界でも注目を集め、ブラジル・サンパウロ州では2005年からJICAの協力で交番制度を導入した。いつも身近に警察官がいて地域の住民と交流することは犯罪の抑止、予防に直結する。サンパウロ州では犯罪が大幅に減少する成果を生んだ。そこでブラジル政府は今年4月、交番など日本の地域警察活動を全国的に導入する方針を決定した。日本の交番システムが世界へと広がりつつある。
 地域を守る拠点である交番を襲撃し、警察官から拳銃を奪う行為は日本の治安に対する挑戦でもある。再発防止のための検証や対策が急がれるとともに、容疑者の早期特定と逮捕に直結した防犯カメラの効能に改めて注目したい。

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2019年06月11日

衆参同日選の見送り

 安倍晋三首相は任期満了に参院選に伴う解散・総選挙をぶつける衆参同日選を見送る方針を固めた。これにより、参院選は公職選挙法の規定により7月4日公示、21日投開票の日程で行われる。
 自民党内では同日選とすることで選挙運動の相乗効果が期待できるうえ、共闘を準備する野党が衆参で分断される可能性があることから「解散風」を吹かせていた。安倍首相がどの程度、解散に傾倒していたのかは不明だが、解散の憶測を否定しないこれまでの発言は、常に政権運営を有利に進めたいという自民党総裁としての願望を念頭に置いてのことだろう。
 前回の衆院解散は2017年9月だった。議員任期4年の半分も経過しないうちに衆院を解散するにはよほどの大義が必要だが、今のところ解散すべき大義は見当たらない。
 一部に消費税率10%への引き上げを延期して国民に是非を問うという観測もあったが、すでに小売店などが増税への準備を進めていること、「リーマンショック級」の事態が起こっていないことを考えても、安倍首相に増税を延期する理由はない。
 首相の持つ解散権は「伝家の宝刀」などと呼ばれる。「家に代々伝わる大切な刀。転じて、いよいよという場合にのみ使用するもの。切り札」と辞書にあるが、歴代内閣のほぼすべてが宝刀を抜いている。
 戦後の衆院選は24回あったが、任期満了は1976年の1回きり。この時は、田中角栄前首相がロッキード事件で逮捕された影響により、自民党内が分裂。三木武夫首相が事態を解消するために解散権を行使しようとしたが閣僚に反対され断念。そのまま解散権行使のタイミングを失い任期満了を迎えたという顛末だ。
 その他の23回はすべて、首相が解散権を行使している。「死んだふり解散」(1986年)、「郵政解散」(2005年)などのネーミングが有名だが、直近の「国難突破解散」(2017年)は党利党略そのものだった。内閣改造から約3カ月の解散で「解散権の濫用」との批判が渦巻き、有権者は気乗りしないまま安倍政権継続の是非を問われた。
 本来、解散というものは、大きな政治問題に直面して議会内の意見対立が激化した場合などに、国民の意思を問うために行うべきではないだろうか。選挙によって選ばれた議会を解散するのであれば、国民を納得させる理由が不可欠だ。
 国民の関心を抱くような重大な政治対立がないにもかかわらず、もし、安倍首相が解散・総選挙による衆参同日選挙に踏み切っていれば、国民不在の党利党略と誹られていただろう。ただ、大義を持たない解散が観測や憶測として流れるのは、野党が国民の支持を得られず、安倍政権批判の受け皿になれていないという背景もあるのではないか。解散によって政権交代が起こる可能性がないからこそ、伝家の宝刀を抜きやすい、と。
 安易な解散を制約する仕組みが欲しい。

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2019年06月04日

川崎・練馬の凶行

 5月28日、川崎市多摩区の住宅街でスクールバスを待っていた小学生らが刃物で刺され、保護者の男性と、6年生の女児の2人が亡くなった。容疑者の男(51)は小学生らを無差別に刺した後、自殺した。親族宅にひきこもり、社会から孤立していた男が何を思って犯行に及んだのか、容疑者死亡で動機が解明されないことが腹立たしい。
 そして6月1日には東京都・練馬区で、元農林水産事務次官の父親(76)が自宅で長男(44)を殺害する事件が発生した。父親の供述によると、長男は仕事をせずに家にひきこもってオンラインゲームにふけり、両親に暴力を繰り返していたという。
 1日、自宅の隣にある小学校の運動会の音に、長男が腹を立て「うるせえな、ぶっ殺すぞ」などと騒いだのが犯行の引き金となった。4日前に発生した川崎殺傷事件と同じように人に危害を加えるかもしれないと考えた父親は、我が子を包丁で刺した。数十カ所も執拗に刺していることから、明確な殺意の下での凶行と推測できる。
 川崎の事件の容疑者と、練馬区の事件の被害者の共通点はひきこもりの中高年。内閣府が今年3月に公表したデータによると、40~64歳の引きこもりは推計61万人で、15~39歳の若年層の約54万人を上回る。
 今、80代の親と50代の子が暮らす世帯が、ひきこもりや親の介護の問題で生活に困窮したり社会から孤立したりすることが「8050問題」として深刻化している。もし、事件の背景に社会からの孤立があるとすれば、その解消にさらなる支援が求められよう。
 ただ、今回の事件で気がかりなのはひきこもりの人に対する偏見の助長だ。1つ目の事件はひきこもりの男による凶行。2つ目の事件は、ひきこもりの長男が人に危害を加えるかもしれないと危惧しての凶行。この流れから、もし、ひきこもりの当事者を、何かしら犯罪予備軍のように扱う空気が漂うのであれば、短絡的だ。
 ひきこもりの当事者は、対人関係や学校、社会の中で傷つき、苦しんでいる人たちだ。ひきこもりと事件をイメージ的に結び付けることは、当事者にさらなる社会的重圧をかけることになりかねない。こういう時こそ手を差し伸べる優しさが欲しい。

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