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原発事故の後始末

 きょう11日で東日本大震災と福島第1原発事故から8年を迎えるが、原発事故の後始末は先が全く見通せない状態だ。今も汚染水が発生し続け、溶けた核燃料「デブリ」の取り出し方法さえ決まっていない。8年たった今も5万人以上が避難生活を強いられている。
 デブリの撤去は放射線量が著しく高いため、人が近づいて作業することはできず、機材を遠隔操作して対処するしかない。回収機器の開発は可能として、デブリの保管や処分をどうするのか、どこが受け入れるのか。廃炉作業には30~40年かかると想定されているが、これまで経験したことのない壁が立ちはだかる。
 海外の事例では、1957年に火災事故を起こしたイギリスのウィンズケール原発は放射能が半減するまで100年以上待ってから施設を解体する予定で、目標年は2120年という。1986年に炉心溶融した旧ソ連のチェルノブイリ原発はデブリの取り出しを断念し、「石棺」と呼ばれるコンクリートの構造物で覆う応急処置のまま放置されている。目下、石棺の老朽化対策が大きな課題だ。
 この2例を知るにつけ、福島第1原発のデブリを回収、処分することは可能なのか懐疑的にならざるを得ないが、世界中に原発が設置され、いつかどこかで同様の事故が発生することを想定すれば、福島第1原発の後始末を成功させることは原発先進国である日本の責任だろう。
 福島第1原発事故は、世界のエネルギー政策の転機となった。ドイツが脱原発に舵を切ったように原発との決別を決めた国もある。また、各地の原発新設コストが安全対策のために高騰し、新設計画が廃止に追い込まれるケースも出ている。この影響で安倍政権が旗振り役となっていた日本の原発輸出も全て行き詰まっている。
 しかし、昨年7月に改訂された政府のエネルギー基本計画では「依存度をできるかぎり低減する」という方針を掲げながらも原発を基幹電源として位置づけ、2030年の電源構成比率の目標を20~22%に据え置いている。
 さて、民間シンクタンクの日本経済研究センターが福島第1原発事故の処理費用が最終的に80兆円を上回ると試算した。経済産業省は2016年12月に事故処理に22兆円かかるとの試算を公表していたが、それを大きく上回る金額だ。センターは過去にも「原発は安価な電源という訳ではない」と指摘し、今回もこの試算に合わせて「中長期のエネルギー計画の中で原発の存否について早急に議論、対応を決めるときではないだろうか」と提案している。
 センターが指摘するように、事故処理を含めた原発のコストが「安価」でないのなら、原発に依存する必要はない。脱原発を明確にし再生エネルギーへの転換を宣言することが、福島第1原発事故を防げず後始末もできていない日本の政治の責任ではないか。

2019年03月11日 15:48 |


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