滋賀夕刊新聞社は滋賀県長浜を中心に政治、経済、文化の情報をお届けする新聞です。



原発輸出のとん挫

 日立製作所が英国での原子力発電所新設計画の凍結を決めた。2011年の福島第一原発事故以来、国内の新設や増設が見込めない中、政府のバックアップのもと海外市場へ打って出た日本勢だが、東芝はアメリカでの原発計画で会社が傾くほどの巨額損失を出して撤退を表明し、三菱重工業もトルコでの原発新設を断念。今度の日立の計画凍結により、日本の原発輸出政策はすべて、とん挫することとなった。
 科学技術立国であるはずの日本の原発が海外市場で受け入れてもらえない。では、どの国が原発建設を受注しているのか。アメリカか、フランスか、それともロシアか。正解は中国だ。1990年代はゼロだったが、2010年代には26基を受注し、2位のロシア(5基)を大きく引き離している。日本はもちろんゼロ。
 福島第一原発事故を受けて原発の安全対策が強化され、その設置コストは1基当たり1兆円を超える。このため、民間企業が独力で受注するのは難しく、政府のバックアップが欠かせない。その点、中国は国営企業が事業を担い、資金面は政府系金融機関が全面支援。資金が豊富な中国勢に対し、他国の民間企業が渡り合うのは難しく、受注競争に敗れることとなっている。
 「中国製の原発」というと恐ろしく感じるが、その中国企業も受注を重ねるごとに技術力を向上させ、今では米国の原発計画に中国人技術者が派遣されることもあるという。もちろん、原発エネルギー市場を中国が独占することには安全保障上の懸念もある。
 さて、頼みの綱だった海外輸出がとん挫した日本。このままでは国内の原発産業が衰退し、その技術継承にも支障が出かねない。海外市場がだめなら再び国内に目を向けるしかないが、福島第一原発事故以来、既設原発の再稼働もできない状態で展望は開けない。何より放射性廃棄物の保管場所も決まっていない。
 ドイツは福島第一原発事故を契機に脱原発を打ち出し、同国のメーカーも原発から再生可能エネルギーへと舵を切った。再生エネに関しては欧州より出遅れている日本だが、国内外で日本の原発が受け入れてもらえない以上、メーカーも電力会社もエネルギーの方針を大胆に転換すべき段階が訪れている。

2019年01月18日 16:41 |


過去の時評


しが彦根新聞
滋賀夕刊電子版
滋賀夕刊宅配版
滋賀夕刊デジタルトライアル
“新聞広告の資料請求、ご案内はこちらから"
 
長浜市
長浜市議会