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禿山の一夜

 ロシアの作曲家ムソルグスキーの代表作に「禿山の一夜」という交響詩がある。深夜になると魔物や幽霊、精霊たちが禿山で宴会を開いて大騒ぎするが、夜明けを告げる村の鐘の音で宴が終わり、禿山はいつもと変わらない静かな朝を迎えるというもの。
 2020年の東京五輪、そして2025年の大阪万博を控え、経済界が盛り上がっているが、経営コンサルタントの大前研一氏は、広告代理店やゼネコンだけが儲ける「禿山の一夜」で終わると手厳しい。
 半世紀前の1964年の東京五輪、1970年の大阪万博を振り返ると、当時は人口も所得も消費も伸び、高度経済成長期の真っただ中。為替は1ドル360円に固定され、今と比べると超円安。輸出は絶好調だった。そんな時代だからこそ、2大イベントに伴う社会インフラ整備は都市機能を向上させるきっかけともなった。
 しかし、人口減少と消費の伸び悩みが課題となっている今の時代、半世紀に前に思いを馳せ「夢よ、もう一度」の思いは実現しないだろう。大前氏は「残るのは不要な巨大施設や利用者の少ない交通インフラと、国民にツケが回る大赤字だけ」と指摘する。確かに当初「コンパクト」を謳っていた東京五輪の総事業費は3兆円を超える可能が出ている。その投資のツケを回収するのは、結局、国民でしかない。
 イベントへの莫大な投資は滋賀県も同様だ。2024年の国民スポーツ大会(国体)に向け、500億円を超える事業費を投入する。主会場の県立彦根総合運動場を200億円かけて改修するのをはじめ、大津市が体育館(90億円)、草津市がプール(65億円)を新設する。
 一過性のイベントで都市や地域が繁栄する時代ではないが、五輪や万博、そして国民スポーツ大会のように、イベント自体が目的化すると、多額の税金が投入されやすい。一過性で終わらせないためには、イベント後を見据える必要がある。五輪や万博は、縮小する内需に代わる外需獲得の一手段としての、「観光大国」へ浮上する大きなチャンスであり、IRを含め観光客を受け入れるための設備やサービス、商品の開発が欠かせない。また、全国からスポーツ愛好家を受け入れる国体も、県内観光を誘発する仕掛けが欲しい。多額の税金を投入する以上、「禿山の一夜」で終わることのない戦略が求められる。

2019年01月16日 16:14 |


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