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2019年01月30日

UAEの蛮行

 アラブ首長国連邦(UAE)で開催中のサッカーアジアカップは日本代表が強豪イランを下して優勝へ王手をかけた。2月1日夜、初の決勝進出を決めたカタールと対戦し、2大会ぶり5度目の制覇を目指す。
 29日夜に行われたUAEとカタールの試合は、両国の国交断絶の影響を受けて、UAE側の「蛮行」が目立った。UAEのナヒヤーン・ビン・ザイード王子は全席を買い占めてUAEサポーターに無料で配布するという暴挙に出た。ゆえにスタジアムはUAE応援一色。キックオフ直前の国歌斉唱ではカタールの国歌にブーイングが起こった。そのサポーターの期待とは裏腹に、試合はカタールが常に主導権を握り、結果は4対0のカタールの圧勝。このため、シュートを決めたカタール選手に客席からペットボトルや靴が投げられるなど、UAEサポーターは不満を爆発させていた。
 さて、UAEとカタールの国交断絶は2017年に遡る。カタールが「ムスリム同胞団」などのテロ組織を支援しているというのが理由だ。UAEのほか、大国サウジアラビアなどの複数の国がカタールと現在も断交している。政治的対立をスポーツに持ち込まないのが観戦マナーではあるが、試合を通じて愛国心が高揚し、感情を爆発させるケースは珍しくない。南米では過去にサッカーの試合が戦争の引き金になったケースもある。
 2004年に中国で行われたアジアカップを思い出す。決勝戦で日本代表が開催国の中国を破り3度目の優勝を果たした大会だったが、日本はグループステージから決勝まで、国歌斉唱時や試合中に中国人サポーターから激しいブーイングを受けた。また、日本人サポーターもごみを投げつけられたり、罵声を浴びせられたりして、中国での反日感情の高さと、マナーの悪さがクローズアップされた。
 当時、中国は4年後に北京五輪を控えてきたこともあり、こうした反日的行為を戒める意見もあったが、アジアカップ翌年には「愛国無罪」を掲げて反日デモが各地で発生するなど、当時の中国は反日なら「何でもあり」の風潮だった。
 UAEサポーターの観戦マナーは、当時の中国を彷彿とさせたが、カタール国民はその快勝で大いに留飲を下げたに違いない。2月1日の決勝戦も、おそらくカタールに対してブーイングが起き、日本贔屓の応援ムードとなりそうだが、カタール代表は敵地にあって果敢に日本ゴールを襲うことだろう。カタールを応援する判官びいき、きっと少なくない。

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2019年01月23日

成人雑誌と受動喫煙

 セブンイレブンとローソンが21日、成人雑誌の取り扱いを中止することを発表し、ファミリマートも22日追随した。老若男女が気軽に利用するコンビニで成人雑誌が堂々と陳列されている異様な光景が解消されることは大いに歓迎される。
 成人雑誌の陳列棚はトイレの近くに設けられていることから、女性や子どもにとって、その前を通ることは不快であろう。外国人観光客からも「女性や子どもも利用するコンビニの一角に、なぜ平然とポルノ雑誌を置いているのか?」と疑問の声が出ていた。
 イオングループ傘下のミニストップでは、すでに昨年から成人雑誌の販売を中止している。本社がある千葉市の熊谷俊人市長が東京五輪を見据えて「国際的感覚に照らして疑問を持たれかねない」とコンビニでの成人雑誌陳列に疑問を呈し、雑誌にカバーを掛けて表紙を見えなくするモデル事業を発表したのがきっかけだった。
 コンビニ各社が取り扱いの中止を決めたのは、女性客が増えていること、成人雑誌の売上が減少していること、外国人観光客が増えていることなどが理由。売上が低迷しているうえに客からの批判が多いとなれば、あえて取り扱う必要性はないというのが本音だろう。
 そして、引き金となったのは東京五輪が迫っていることだろう。成人雑誌が堂々と陳列されているようでは、日本人の文化的、国際的感覚を疑われかねない。
 東京五輪を機に受動喫煙対策が進むことも期待したい。昨年成立した受動喫煙対策を強化する改正健康増進法は、事務所や飲食店など多くの人が集まる施設を原則として屋内禁煙とし、違反者には罰則を適用する。ただし、飲食店のうち、中小企業や個人店の場合は、客席面積が100平方㍍以下の既存店には「喫煙可能」などと標識で示せば例外的に喫煙を認めることにしている。当初の厚生労働省案は例外の扱いを「30平方㍍以下」としていたが、自民党たばこ議連の抵抗により後退した経緯がある。
 欧米やアジアの先進地では、ホテルや駅、デパート、オフィスは全面禁煙が原則で、レストランやカフェは屋外に灰皿を置き、分煙を徹底している。ゆえに日本の飲食店で喫煙できることは外国人観光客に意外性を持ってみられている。
 東京五輪を機にコンビニの成人雑誌は一掃される。喫煙環境についても分煙・禁煙の徹底により、受動喫煙が一掃されることを望みたい。

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2019年01月21日

沖縄県民投票

 沖縄県の普天間飛行場代替施設建設のための辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票は2月14日に告示されるが、宮古島、沖縄、宜野湾、石垣、うるまの5市が不参加の方針で、県内の有権者の3割に当たる約36万3000人が投票の機会を奪われることになる。
 県民投票は、条例制定を求める9万2848筆の署名を集めた直接請求を受け、県政与党の「社民・社大・結連合」と共産などが中心となって、県議会に「賛成」「反対」の2択を問う条例案を提出し、成立した。これに対し、自民と公明は「賛成」「反対」だけでなく「やむを得ない」「どちらとも言えない」の4択を求める条例案を提出したが、賛成少数で否決された経緯がある。
 県民投票の選択肢について県政与党は「4択では辺野古基地建設に対する民意をあいまいにする」「請求者も4択に反対している」と指摘し、野党は「反対票が多い場合、普天間飛行場の固定化を容認したという誤ったメッセージを発信する」「多様化する県民の思いを反映させるため選択肢を増やすべき」と主張していた。
 5市では市議会で予算案が否決されたことを受け、それぞれの市長が県民投票に参加しないことを表明。市長は「投票結果によっては普天間飛行場の固定化につながる懸念が極めて強い」「単に○か×かで市民に迫るやり方はあまりに乱暴」などと2択を批判している。
 しかし、投票権は民主主義を支える基本的な権利であり、県民投票はその権利を行使する貴重な機会でもある。その機会を市や市議会が奪うのであれば、市民からの批判は免れない。
 今、全市町での実施に向けて選択肢の見直しを求める意見も出ているが、その実現性は流動的だ。そのうえ、菅義偉官房長官は県民投票の結果が移設工事に及ぼす影響は「全くない」と断言し、反対票が賛成票を上回ったケースに備えて予防線を張っている。
 県民の3割が参加せず、投票結果によって移設工事が影響を受けることはない。こんな状況で実施する県民投票にどれほどの意義があるのか?―。県民投票反対派からはそんな声が聞こえてきそうだ。
 だが、県民の意思表示の機会を奪い、県民投票を骨抜きにすることは民主主義の自殺行為ではないだろうか。県議会での与野党間の調整不足が今回の混乱を招いた原因である以上、選択肢の再考を含めた与野党の歩み寄りが欠かせない。目下、5市の不参加回避のため3択案が急浮上している。県民投票の全市町実施のためにも、調整が実現することを期待する。

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2019年01月18日

原発輸出のとん挫

 日立製作所が英国での原子力発電所新設計画の凍結を決めた。2011年の福島第一原発事故以来、国内の新設や増設が見込めない中、政府のバックアップのもと海外市場へ打って出た日本勢だが、東芝はアメリカでの原発計画で会社が傾くほどの巨額損失を出して撤退を表明し、三菱重工業もトルコでの原発新設を断念。今度の日立の計画凍結により、日本の原発輸出政策はすべて、とん挫することとなった。
 科学技術立国であるはずの日本の原発が海外市場で受け入れてもらえない。では、どの国が原発建設を受注しているのか。アメリカか、フランスか、それともロシアか。正解は中国だ。1990年代はゼロだったが、2010年代には26基を受注し、2位のロシア(5基)を大きく引き離している。日本はもちろんゼロ。
 福島第一原発事故を受けて原発の安全対策が強化され、その設置コストは1基当たり1兆円を超える。このため、民間企業が独力で受注するのは難しく、政府のバックアップが欠かせない。その点、中国は国営企業が事業を担い、資金面は政府系金融機関が全面支援。資金が豊富な中国勢に対し、他国の民間企業が渡り合うのは難しく、受注競争に敗れることとなっている。
 「中国製の原発」というと恐ろしく感じるが、その中国企業も受注を重ねるごとに技術力を向上させ、今では米国の原発計画に中国人技術者が派遣されることもあるという。もちろん、原発エネルギー市場を中国が独占することには安全保障上の懸念もある。
 さて、頼みの綱だった海外輸出がとん挫した日本。このままでは国内の原発産業が衰退し、その技術継承にも支障が出かねない。海外市場がだめなら再び国内に目を向けるしかないが、福島第一原発事故以来、既設原発の再稼働もできない状態で展望は開けない。何より放射性廃棄物の保管場所も決まっていない。
 ドイツは福島第一原発事故を契機に脱原発を打ち出し、同国のメーカーも原発から再生可能エネルギーへと舵を切った。再生エネに関しては欧州より出遅れている日本だが、国内外で日本の原発が受け入れてもらえない以上、メーカーも電力会社もエネルギーの方針を大胆に転換すべき段階が訪れている。

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2019年01月16日

禿山の一夜

 ロシアの作曲家ムソルグスキーの代表作に「禿山の一夜」という交響詩がある。深夜になると魔物や幽霊、精霊たちが禿山で宴会を開いて大騒ぎするが、夜明けを告げる村の鐘の音で宴が終わり、禿山はいつもと変わらない静かな朝を迎えるというもの。
 2020年の東京五輪、そして2025年の大阪万博を控え、経済界が盛り上がっているが、経営コンサルタントの大前研一氏は、広告代理店やゼネコンだけが儲ける「禿山の一夜」で終わると手厳しい。
 半世紀前の1964年の東京五輪、1970年の大阪万博を振り返ると、当時は人口も所得も消費も伸び、高度経済成長期の真っただ中。為替は1ドル360円に固定され、今と比べると超円安。輸出は絶好調だった。そんな時代だからこそ、2大イベントに伴う社会インフラ整備は都市機能を向上させるきっかけともなった。
 しかし、人口減少と消費の伸び悩みが課題となっている今の時代、半世紀に前に思いを馳せ「夢よ、もう一度」の思いは実現しないだろう。大前氏は「残るのは不要な巨大施設や利用者の少ない交通インフラと、国民にツケが回る大赤字だけ」と指摘する。確かに当初「コンパクト」を謳っていた東京五輪の総事業費は3兆円を超える可能が出ている。その投資のツケを回収するのは、結局、国民でしかない。
 イベントへの莫大な投資は滋賀県も同様だ。2024年の国民スポーツ大会(国体)に向け、500億円を超える事業費を投入する。主会場の県立彦根総合運動場を200億円かけて改修するのをはじめ、大津市が体育館(90億円)、草津市がプール(65億円)を新設する。
 一過性のイベントで都市や地域が繁栄する時代ではないが、五輪や万博、そして国民スポーツ大会のように、イベント自体が目的化すると、多額の税金が投入されやすい。一過性で終わらせないためには、イベント後を見据える必要がある。五輪や万博は、縮小する内需に代わる外需獲得の一手段としての、「観光大国」へ浮上する大きなチャンスであり、IRを含め観光客を受け入れるための設備やサービス、商品の開発が欠かせない。また、全国からスポーツ愛好家を受け入れる国体も、県内観光を誘発する仕掛けが欲しい。多額の税金を投入する以上、「禿山の一夜」で終わることのない戦略が求められる。

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2019年01月10日

安土城復元、正夢に

 織田信長が琵琶湖のほとりに築いた絢爛豪華な安土城。城の外壁は各層が朱や青、白色に彩られ、最上層は金色。内部は京都の絵師・狩野永徳の絵で飾られるなど、当時の技術と芸術の粋の集大成して造られたとされる。歴史ファンでなくとも、その姿を見てみたいと思う安土城について、今、復元の気運が高まりつつある。
 切り出したのは三日月大造知事。昨年、滋賀経済産業協会から復元の提言を受け、新年になって公の場で復元への夢やロマンを語り出した。新年度の予算にも関連経費を計上する見込みという。
 安土城は1579年に築かれたが、3年後の「本能寺の変」で信長が明智光秀に討たれた後に焼失した。今では石垣の一部を残すのみ。たった3年間しか存在しなかったことから、当時の城の姿をうかがい知る史料はほとんどない。
 安土城を描いた史料としては、信長が狩野永徳に描かせたとされる「安土城之屏風」がある。その屏風は天正遣欧使節を通じて当時のローマ法王に献上された。献上後の行方は不明だ。2007年には地元の旧安土町が調査団をバチカンに派遣したが、発見には至っていない。
 復元計画を具体化するには、まずは安土城の姿を解明する必要がある。そのためには屏風の発見が不可欠だ。再度、調査団を派遣し、徹底的な追跡を期待したい。
 また、莫大な資金が必要となる。「300億円」という金額が飛び出すなど、とても滋賀県や地元の近江八幡市が賄える金額ではなく、民間資金の活用が欠かせない。ただ、信長の安土城を復元する計画が具体的に持ち上がれば、全国の歴史ファンからの出資や寄付も望める。
 城の復元をめぐってはコンクリート製の名古屋城の天守を解体し、木造で復元する作業が進んでいる。来年には明智光秀を描いた大河ドラマ「麒麟がくる」が上映される。戦国時代や信長に注目が集まるのは想像に難くない。安土城復元のハードルは高いが、新年早々の夢のある話題が、是非とも正夢となることを願いたい。

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2019年01月07日

市民ホール整備を

 年末、長浜フェスティバルオーケストラのメンバーによる気楽なコンサートが北ビワコホテルグラツィエで開かれた。出席者50人程の密度の濃いコンサートで、ヴァイオリン、フルート、ピアノ、ハープ、コントラバス、ファゴットの演奏、そしてソプラノやバリトンの迫力の声量に圧倒され、演奏会後の立食パーティーは演奏家と交流の場となった。
 このオーケストラは木之本町内で企業を経営する平井正公さんが地域に根ざしたオーケストラを結成しようと音楽仲間に呼びかけ、一昨年に誕生した。プロ、アマが集い、年1回のコンサートを目指している。
 指揮者の藤村知史さんは以前、滋賀夕刊の取材に「とても実験的なオーケストラ。クラシック演奏に触れる機会の少ない田舎で、オーケストラを結成することで、地域の人がクラシック音楽を好きになるかもしれないし、子どもたちが音楽を始めるかもしれない」とオーケストラ結成の意義を語っていた。
 藤村さんが指摘するように、都市部に比べると田舎はどうしてもクラシック音楽に触れる機会が少ない。だからこそ、その機会を大切にしたい。
 大晦日の夜には市民有志の発案により、長浜駅東側のペデストリアンデッキで第九の演奏会があり、市民が楽器を持ち込んだり、合唱に参加したりした。平成最後の大晦日の夜をベートーヴェンの名曲と共に過ごそうという、素敵な企画が市民のアイデアで生まれたことを嬉しく思う。
 長浜市民会館が閉館して10年。そして、長浜文芸会館の耐用年数はあと2年。市は昨秋、懇話会を設置して新しい文化ホールの整備について検討を始めた。ただ、新しいホールの実現には数年かかる見込みで、財源と運営コストも課題となろう。
 長浜の文化・芸術活動の拠点となってきた長浜文芸会館の閉館後、市内の文化・芸術活動の行く末を心配する声も出ている。これらの活動に支障が出れば、新しい文化ホールの整備に手をこまねいてきた市の責任が問われようが、何とか市民のアイデアで乗り切りたい。だからこそ、長浜フェスティバルオーケストラや、市民のアイデアによる第九演奏会を心強く思う。
 長浜で育つ子ども達のために幅広い文化・芸術活動に触れる場となる市民ホールの整備は喫緊の課題だ。その気運が盛り上がることを期待したい。

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