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カレーの懐の深さ

 全国読書週間に合わせて長浜市内で始まった「お話給食」の取材のため、先日、南郷里小学校を訪れた。献立は絵本「ひみつのカレーライス」にちなんだポークカレー。教室に漂うスパイスの香りに腹が鳴った。
 長浜市内でカレーを食べる際、小生の選択肢は概ね4つ。定番のカレーライスを提供するチェーン店、キーマカレーを専門に扱うカフェ、ココナッツミルクやバター、スパイスが印象的なインドカレー専門店、そしてレッドカレーやグリーンカレーを楽しめるタイ料理店。決して一括りにはできない多彩な味覚を日本の地方都市でも楽しめるのがカレーの魅力ではないだろうか。
 日本の国民食とも言われる定番のカレーは、インドで生まれ、イギリスが改良し、日本がアレンジしたもの。イギリスは植民地のインドの香辛料をブレンドして「カレー粉」を考案。小麦粉でとろみをつけた点はシチューに似ている。そして、そのイギリス式のカレーが日本に伝わったのは文明開化に沸く明治時代。当時の料理本「西洋料理指南」(明治5年)にもカレーの作り方が紹介されているが、食材に魚介類やカエル、長ネギという記述が残り、今の日本のカレーと少し異なる。
 その後、北海道を中心に国内でカレーの材料であるタマネギやジャガイモ、ニンジンが造られ、国産の安価なカレー粉が普及したことで、大正時代に現代のような日本のカレーライスの原型が出来上がった。最近では日本各地の食材を取り込んだ「ご当地カレー」が人気を博している。
 一方、タイには香辛料やハーブを使ったスープ「ゲーン」があり、香辛料を豊富に使っている点からタイ・カレーと称されるが、インドのカレーとは接点がない。また、キーマカレーはインド発祥のひき肉のカレーを指し、スープ状でないことから、日本では「ドライカレー」とも称される。
 さて、多彩なカレー料理からこの日選んだのはチェーン店。カレーはどの店で食べても「外れ」に出会うことはないが、チェーン店ならではの定番の味と安定感は魅力だ。
 このチェーン店は地元産のシカ肉や長浜農業高校のソーセージを食材にするなどオリジナルメニューを出すことで知られ、今の時期はタテボシガイとマジカのカレーを出していた。
 タテボシガイは琵琶湖固有の二枚貝で佃煮などにして食べられてきた伝統食材。平安貴族の烏帽子に似ていることから、この名が付いたそうだ。マジカはニゴイの別名。小骨が多いことから食用には敬遠されがちだが、骨切りなどの下ごしらえをすれば美味しくいただける。
 小生が挑戦したマジカフライカレーは、県漁連青年会が食材として敬遠されてきたニゴイを広く普及させようと水産加工会社などと協力して開発したもの。淡水魚特有の臭みを特に感じることもなく、小骨も気になることもなかった。「ご当地カレー」の一員となれるのかは未知数だが、琵琶湖の恵みを違和感なく食材のひとつとして受け入れる点が、カレーの多様性というか懐の深さではないだろうか。

2018年10月31日 16:20 |


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