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安田さんの帰国

 イスラム主義の武装組織に拘束されていたジャーナリストの安田純平さんが無事帰国した。内戦下のシリアを取材中の2015年6月に誘拐されて以来、3年4カ月ぶりに自由を手に入れた。
 シリアでは複数の武装組織が外国人を誘拐して身代金を要求する「人質ビジネス」を資金源としてきたとされる。安田さん誘拐の件でも日本政府に身代金が要求されたが、政府は拒否し続けてきた。ただ、解放にあたってカタール政府が身代金を払ったという情報もあり、武装組織は目的を達成したため安田さんを解放したと推測される。
 カタール政府は、なぜ日本に協力したのか。実はカタールの最大の貿易相手国は日本で、主力の液化天然ガスの生産・輸出には日本企業が技術協力している。中東の中でも随一の親日国だそうだ。また、カタールはシリア内戦でアサド政権の打倒を目指す武装組織の支援を行っている。その接点がうまく作用し、安田さんの解放が実現したようだ。
 さて、安田さんの帰国に伴って再び「自己責任論」が飛び交っている。自ら危険な紛争地帯に入って拘束されたことを批判する向きだ。
 だが、ジャーナリストが紛争地へ赴くからこそ、現地でどのような惨劇が起こっているのか、世界に発信される。実態をリポートすることで、支援の輪が広がったり、第3国が介入して紛争が終わったりする可能性もある。仮にジャーナリストがいなければ、例えばシリアの場合なら、アサド政権、そして武装組織それぞれが自身に都合の良い情報を発信し、真実が伝わることはないだろう。
 ジャーナリストは紛争地に入る場合、入念な準備を怠ることはないが、それでも拘束されたり、殺害されたりする。もちろん、すべて「自己責任」で現地に赴くわけだ。一方で、政府には邦人保護の責務があり、万一、邦人が拘束されれば救助に当たる必要がある。これは取材だろうが、旅行だろうが関係ない。
 安田さんの帰国により、3年4カ月の過酷な拘束状況が伝えられているが、彼が本来、伝えたかったのはシリアの現状だろう。今、反体制派は「最後の砦」とされるイドリブ県に追い込まれている。同県には約300万人の住民がおり、万一、アサド政権軍が総攻撃を加えれば大量の死者と難民を生む。目下、非武装地帯の設置について政権側と武装組織側との間で調整が進んでいるが、散発的な衝突もあり、総攻撃の可能性は排除できない情勢。

2018年10月26日 17:08 |


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