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サウジ記者の殺害

 サウジアラビアの反体制派記者ジャマル・カショギ氏がトルコにあるサウジアラビア総領事館で殺害された事件。遺体は発見されていないもの、サウジの最高実力者ムハンマド皇太子の側近らの関与が疑われ、サウジが窮地に立たされている。
 トルコのエルドアン大統領は23日、「凶悪な計画殺人だった」と国会で説明した。サウジ人15人がカショギ氏の亡くなった日にチャーター機などでイスタンブール入りし、その日のうちに出国。事件当日は領事館の監視カメラの映像を記録するハードディスクが抜き取られていたことなどを報告した。
 一方で、サウジ側は「館内で面会した人々と口論になり素手で争った結果、死亡した」と苦しい言い訳に終始している。政府批判を行う記者が当局に拘束されたり、何者かに殺害されたりするのは独裁国家では決して珍しいことではない。ロシアでも政府に批判的な記者が殺害されることがあるし、中国の場合はすぐさま逮捕されることになるだろう。
 カショギ氏の殺害がこれほどのクローズアップされるのは、犯行現場が総領事館だったこと、皇太子の関与が疑われること、アメリカとサウジの蜜月関係の行方が注目されることなど複数あるが、一番はトルコ当局による積極的な捜査と情報発信だろう。
 だが、トルコが報道の自由や人権保護などの民主主義的な視点から積極的な追及を行っているとは考えにくい。エルドアン大統領は2016年のクーデター未遂を機に独裁色を強め、批判勢力を次々と弾圧している。その矛先は政権に批判的な記者にも向いている。サウジのムハンマド皇太子同様に独裁化の傾向が強まっていることは疑いようもない。
 国境なき記者団のホームページによると、サウジで拘束されている記者は13人だが、トルコは27人にのぼる。
 トルコとサウジは中東一帯の覇権を争う因縁の対立を抱え、カタールなどの周辺国や、過激なイスラム主義組織を介して間接的な対立を続けている。トルコとしては今回の事件をできる限り大きくすることで人権意識の高い欧米とサウジの間に隙間風を吹かせたい思惑で、報道の自由や記者の生命を守ろうという考えはない。一方のサウジは政府批判を封じるはずの記者殺害が、対立国に足をすくわれる結果となった。ムハンマド皇太子の関与については、トルコ、アメリカ両大統領があえて触れていない点に、政治的な駆け引きが長引く気配を感じさせる。

2018年10月24日 16:53 |


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