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愚策ふたたび

 2019年10月の消費税10%への引き上げに合わせて、政府はキャッシュレス決済を利用する消費者にポイントを還元する景気対策を検討している。クレジットカードなどで決済をした消費者に、増税分と同じ2%分をポイントとして付与し、次回以降の買い物で使える仕組み。
 対象となるのは軽減税率が適用される商品も含め、小売店、飲食店、宿泊業など消費者向けのビジネスを展開する中小事業者とするそうだ。
 消費増税に伴う景気の腰折れを防ぐのが狙いだが、もちろん景気対策はただの口実で、キャッシュレス決済を普及拡大させたい経済産業省と財務省の企みと受け止めるべきだろう。
 なぜ、政府はキャッシュレス決済を進めたいのか。実店舗での省力化、脱税防止、支払データの利活用による利便性向上、消費の活性化などを理由に挙げ、「国力強化につながる様々なメリットが期待される」と説明している。
 そんな政府の思いとは裏腹に、日本のキャッシュレス決済の規模は小さい。経産省が今年4月にまとめた「キャッシュレス・ビジョン」によると、キャッシュレス決済の比率は韓国で89%、中国で60%なのに対し、日本は18%にとどまっている。
 韓国が突出しているのは政府によるクレジットカード利用促進策が強力なためだ。クレジットカード利用額の20%の所得控除(上限30万円)を受けられ、クレジットカード利用者を対象に毎月、当選金1億8000万円の宝くじの抽選が行われている。店舗でのクレジットカード決済の取り扱いを義務化していることも大きい。
 一方、日本はATMの利便性が高く現金が容易に入手できるうえ、現金決済でもレジ処理が速い。消費者が現金に安心感を抱き、特に不便を感じていない。
 そこで、政府は消費増税に伴う景気対策に便乗してポイント還元を思いついたようだが、キャッシュレス決済の普及率が18%にとどまっている現状、中小小売店のシステム導入コストなどを考えると、国民に迷惑をかける愚策でしかない。カードを持たない高齢者への配慮も考えていない。立憲民主党の枝野幸男代表が「中小零細の小売業者がそれに対応できるのか。全く暮らしの足元を見ていない、草の根を見ていないことの象徴的な愚策だ」と批判する通りだろう。
 よく似た愚策が3年前に登場して消えたことがあった。消費税の軽減税率が議論されていた際、レジでマイナンバーカードを提示すれば、後日、軽減税率分の現金の還元を受けられるという案だ。財務省がマイナンバーカードを普及させたい総務省と結託して画策したが、消費者の利便性を無視したこの愚策は早々に立ち消えた。今回のポイント還元もお役所の都合で生みだされたものに過ぎず、喜ぶのはカード会社だ。
 日本でキャッシュレス決済を普及させるなら、カード決済システムの導入コストと手数料の引き下げ、売上金入金のスピードアップなどカード会社側の努力が欠かせない。
 軽減税率の導入で、中小の小売店では煩雑な作業を強いられるというのに、そこに追い打ちをかけるような政府の愚策。早々に撤回してもらいたい。

2018年10月19日 18:30 |


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