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2018年10月31日

カレーの懐の深さ

 全国読書週間に合わせて長浜市内で始まった「お話給食」の取材のため、先日、南郷里小学校を訪れた。献立は絵本「ひみつのカレーライス」にちなんだポークカレー。教室に漂うスパイスの香りに腹が鳴った。
 長浜市内でカレーを食べる際、小生の選択肢は概ね4つ。定番のカレーライスを提供するチェーン店、キーマカレーを専門に扱うカフェ、ココナッツミルクやバター、スパイスが印象的なインドカレー専門店、そしてレッドカレーやグリーンカレーを楽しめるタイ料理店。決して一括りにはできない多彩な味覚を日本の地方都市でも楽しめるのがカレーの魅力ではないだろうか。
 日本の国民食とも言われる定番のカレーは、インドで生まれ、イギリスが改良し、日本がアレンジしたもの。イギリスは植民地のインドの香辛料をブレンドして「カレー粉」を考案。小麦粉でとろみをつけた点はシチューに似ている。そして、そのイギリス式のカレーが日本に伝わったのは文明開化に沸く明治時代。当時の料理本「西洋料理指南」(明治5年)にもカレーの作り方が紹介されているが、食材に魚介類やカエル、長ネギという記述が残り、今の日本のカレーと少し異なる。
 その後、北海道を中心に国内でカレーの材料であるタマネギやジャガイモ、ニンジンが造られ、国産の安価なカレー粉が普及したことで、大正時代に現代のような日本のカレーライスの原型が出来上がった。最近では日本各地の食材を取り込んだ「ご当地カレー」が人気を博している。
 一方、タイには香辛料やハーブを使ったスープ「ゲーン」があり、香辛料を豊富に使っている点からタイ・カレーと称されるが、インドのカレーとは接点がない。また、キーマカレーはインド発祥のひき肉のカレーを指し、スープ状でないことから、日本では「ドライカレー」とも称される。
 さて、多彩なカレー料理からこの日選んだのはチェーン店。カレーはどの店で食べても「外れ」に出会うことはないが、チェーン店ならではの定番の味と安定感は魅力だ。
 このチェーン店は地元産のシカ肉や長浜農業高校のソーセージを食材にするなどオリジナルメニューを出すことで知られ、今の時期はタテボシガイとマジカのカレーを出していた。
 タテボシガイは琵琶湖固有の二枚貝で佃煮などにして食べられてきた伝統食材。平安貴族の烏帽子に似ていることから、この名が付いたそうだ。マジカはニゴイの別名。小骨が多いことから食用には敬遠されがちだが、骨切りなどの下ごしらえをすれば美味しくいただける。
 小生が挑戦したマジカフライカレーは、県漁連青年会が食材として敬遠されてきたニゴイを広く普及させようと水産加工会社などと協力して開発したもの。淡水魚特有の臭みを特に感じることもなく、小骨も気になることもなかった。「ご当地カレー」の一員となれるのかは未知数だが、琵琶湖の恵みを違和感なく食材のひとつとして受け入れる点が、カレーの多様性というか懐の深さではないだろうか。

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2018年10月26日

安田さんの帰国

 イスラム主義の武装組織に拘束されていたジャーナリストの安田純平さんが無事帰国した。内戦下のシリアを取材中の2015年6月に誘拐されて以来、3年4カ月ぶりに自由を手に入れた。
 シリアでは複数の武装組織が外国人を誘拐して身代金を要求する「人質ビジネス」を資金源としてきたとされる。安田さん誘拐の件でも日本政府に身代金が要求されたが、政府は拒否し続けてきた。ただ、解放にあたってカタール政府が身代金を払ったという情報もあり、武装組織は目的を達成したため安田さんを解放したと推測される。
 カタール政府は、なぜ日本に協力したのか。実はカタールの最大の貿易相手国は日本で、主力の液化天然ガスの生産・輸出には日本企業が技術協力している。中東の中でも随一の親日国だそうだ。また、カタールはシリア内戦でアサド政権の打倒を目指す武装組織の支援を行っている。その接点がうまく作用し、安田さんの解放が実現したようだ。
 さて、安田さんの帰国に伴って再び「自己責任論」が飛び交っている。自ら危険な紛争地帯に入って拘束されたことを批判する向きだ。
 だが、ジャーナリストが紛争地へ赴くからこそ、現地でどのような惨劇が起こっているのか、世界に発信される。実態をリポートすることで、支援の輪が広がったり、第3国が介入して紛争が終わったりする可能性もある。仮にジャーナリストがいなければ、例えばシリアの場合なら、アサド政権、そして武装組織それぞれが自身に都合の良い情報を発信し、真実が伝わることはないだろう。
 ジャーナリストは紛争地に入る場合、入念な準備を怠ることはないが、それでも拘束されたり、殺害されたりする。もちろん、すべて「自己責任」で現地に赴くわけだ。一方で、政府には邦人保護の責務があり、万一、邦人が拘束されれば救助に当たる必要がある。これは取材だろうが、旅行だろうが関係ない。
 安田さんの帰国により、3年4カ月の過酷な拘束状況が伝えられているが、彼が本来、伝えたかったのはシリアの現状だろう。今、反体制派は「最後の砦」とされるイドリブ県に追い込まれている。同県には約300万人の住民がおり、万一、アサド政権軍が総攻撃を加えれば大量の死者と難民を生む。目下、非武装地帯の設置について政権側と武装組織側との間で調整が進んでいるが、散発的な衝突もあり、総攻撃の可能性は排除できない情勢。

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2018年10月24日

サウジ記者の殺害

 サウジアラビアの反体制派記者ジャマル・カショギ氏がトルコにあるサウジアラビア総領事館で殺害された事件。遺体は発見されていないもの、サウジの最高実力者ムハンマド皇太子の側近らの関与が疑われ、サウジが窮地に立たされている。
 トルコのエルドアン大統領は23日、「凶悪な計画殺人だった」と国会で説明した。サウジ人15人がカショギ氏の亡くなった日にチャーター機などでイスタンブール入りし、その日のうちに出国。事件当日は領事館の監視カメラの映像を記録するハードディスクが抜き取られていたことなどを報告した。
 一方で、サウジ側は「館内で面会した人々と口論になり素手で争った結果、死亡した」と苦しい言い訳に終始している。政府批判を行う記者が当局に拘束されたり、何者かに殺害されたりするのは独裁国家では決して珍しいことではない。ロシアでも政府に批判的な記者が殺害されることがあるし、中国の場合はすぐさま逮捕されることになるだろう。
 カショギ氏の殺害がこれほどのクローズアップされるのは、犯行現場が総領事館だったこと、皇太子の関与が疑われること、アメリカとサウジの蜜月関係の行方が注目されることなど複数あるが、一番はトルコ当局による積極的な捜査と情報発信だろう。
 だが、トルコが報道の自由や人権保護などの民主主義的な視点から積極的な追及を行っているとは考えにくい。エルドアン大統領は2016年のクーデター未遂を機に独裁色を強め、批判勢力を次々と弾圧している。その矛先は政権に批判的な記者にも向いている。サウジのムハンマド皇太子同様に独裁化の傾向が強まっていることは疑いようもない。
 国境なき記者団のホームページによると、サウジで拘束されている記者は13人だが、トルコは27人にのぼる。
 トルコとサウジは中東一帯の覇権を争う因縁の対立を抱え、カタールなどの周辺国や、過激なイスラム主義組織を介して間接的な対立を続けている。トルコとしては今回の事件をできる限り大きくすることで人権意識の高い欧米とサウジの間に隙間風を吹かせたい思惑で、報道の自由や記者の生命を守ろうという考えはない。一方のサウジは政府批判を封じるはずの記者殺害が、対立国に足をすくわれる結果となった。ムハンマド皇太子の関与については、トルコ、アメリカ両大統領があえて触れていない点に、政治的な駆け引きが長引く気配を感じさせる。

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2018年10月19日

愚策ふたたび

 2019年10月の消費税10%への引き上げに合わせて、政府はキャッシュレス決済を利用する消費者にポイントを還元する景気対策を検討している。クレジットカードなどで決済をした消費者に、増税分と同じ2%分をポイントとして付与し、次回以降の買い物で使える仕組み。
 対象となるのは軽減税率が適用される商品も含め、小売店、飲食店、宿泊業など消費者向けのビジネスを展開する中小事業者とするそうだ。
 消費増税に伴う景気の腰折れを防ぐのが狙いだが、もちろん景気対策はただの口実で、キャッシュレス決済を普及拡大させたい経済産業省と財務省の企みと受け止めるべきだろう。
 なぜ、政府はキャッシュレス決済を進めたいのか。実店舗での省力化、脱税防止、支払データの利活用による利便性向上、消費の活性化などを理由に挙げ、「国力強化につながる様々なメリットが期待される」と説明している。
 そんな政府の思いとは裏腹に、日本のキャッシュレス決済の規模は小さい。経産省が今年4月にまとめた「キャッシュレス・ビジョン」によると、キャッシュレス決済の比率は韓国で89%、中国で60%なのに対し、日本は18%にとどまっている。
 韓国が突出しているのは政府によるクレジットカード利用促進策が強力なためだ。クレジットカード利用額の20%の所得控除(上限30万円)を受けられ、クレジットカード利用者を対象に毎月、当選金1億8000万円の宝くじの抽選が行われている。店舗でのクレジットカード決済の取り扱いを義務化していることも大きい。
 一方、日本はATMの利便性が高く現金が容易に入手できるうえ、現金決済でもレジ処理が速い。消費者が現金に安心感を抱き、特に不便を感じていない。
 そこで、政府は消費増税に伴う景気対策に便乗してポイント還元を思いついたようだが、キャッシュレス決済の普及率が18%にとどまっている現状、中小小売店のシステム導入コストなどを考えると、国民に迷惑をかける愚策でしかない。カードを持たない高齢者への配慮も考えていない。立憲民主党の枝野幸男代表が「中小零細の小売業者がそれに対応できるのか。全く暮らしの足元を見ていない、草の根を見ていないことの象徴的な愚策だ」と批判する通りだろう。
 よく似た愚策が3年前に登場して消えたことがあった。消費税の軽減税率が議論されていた際、レジでマイナンバーカードを提示すれば、後日、軽減税率分の現金の還元を受けられるという案だ。財務省がマイナンバーカードを普及させたい総務省と結託して画策したが、消費者の利便性を無視したこの愚策は早々に立ち消えた。今回のポイント還元もお役所の都合で生みだされたものに過ぎず、喜ぶのはカード会社だ。
 日本でキャッシュレス決済を普及させるなら、カード決済システムの導入コストと手数料の引き下げ、売上金入金のスピードアップなどカード会社側の努力が欠かせない。
 軽減税率の導入で、中小の小売店では煩雑な作業を強いられるというのに、そこに追い打ちをかけるような政府の愚策。早々に撤回してもらいたい。

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2018年10月10日

「スポーツ」の起源

 1964年に東京五輪の開会式が行われたことにちなんで、「体育の日」は長らく10月10日とされてきたが、2000年以降は、祝日を月曜日に移す「ハッピーマンデー制」の適用によって、10月の第2月曜となっている。これでは「体育の日」のルーツを知ることができないが、連休は歓迎されている。
 その体育の日も2020年東京五輪に合わせて「スポーツの日」に改称され、おまけに同年に限り、五輪の開会式が予定されている7月24日(金曜)に移す。さらには前日の7月23日(木曜)を「海の日」(本来は7月の第3月曜)として強引に4連休に作るそうで、もはや祝日はその起源にお構いなく、その時々の都合で問答無用に変更されるものとなってしまった。
 さて、「eスポーツ」と呼ばれる競技が注目を集めているそうだ。「エレクトロニック・スポーツ」の略で、コンピューターゲームによる対戦をスポーツ競技としてとらえたものだ。五輪種目になる気配は今のところないが、2022年杭州アジア競技大会の正式種目に採用され、海外では各種大会が開かれている。
 辞書でスポーツを引くと「余暇活動・競技・体力づくりとして行う身体運動。陸上競技・水泳・各種球技・スキー・スケート・登山などの総称」などとある。辞書にある通り、スポーツは身体運動を伴うものという先入観を持つ小生にとっては、コンピューターゲームをスポーツと呼ぶことに、もやもやした気持ちを抱く。ただ、カーレースなどを「モータースポーツ」と称したり、「健康マージャン」を高齢者のスポーツ大会の種目としていることを考えると、スポーツの定義は意外に広いのかもしれない。
 スポーツの語源を紐解くとラテン語の「deportare」に由来する。「日々の生活から離れること」などと直訳され、転じて「気晴らしをする、楽しむ、遊ぶ」という意味で使用された。この語源に忠実であれば、ゲームに興じて気晴らしやストレス解消するのもスポーツではあるが、「スポーツの日」に部屋に籠ってテレビゲームなんていう姿を想像すると、やはり、もやもやは残る。

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2018年10月03日

第4次安倍改造内閣

 第4次安倍改造内閣が2日発足した。麻生太郎副総理兼財務相、河野太郎外相、世耕弘成経済産業相らを留任させて、経済と外交の路線維持を図ったほか、総裁選で安倍首相を支持した派閥に配慮して12人を初入閣させた。総裁選で対立した石破派から山下貴司氏を法相に起用。女性閣僚は片山さつき・地方創生担当相のみだった。
 安倍首相は「実務型の人材を結集した」と説明するが、派閥の声に配慮して石破派からも起用した今回の改造は派閥均衡型と分析できるのではないか。初入閣12人の手腕は未知数ながら、内閣や党の重要ポストは安定感のある布陣。安倍首相がまずは派閥を含め党内をしっかり固めて悲願の憲法改正の道筋を付けたいという意欲があからさまに見えるが、今回の人事を各紙朝刊は社説でどう論じたのだろうか。
 朝日は総裁選で支持した派閥にポストで報いたと指摘し、「こんな内向きの人事では、政治や行政への信頼を取り戻し、難しい政策課題に取り組む足場を固めることなどできはしまい」と厳しい。女性閣僚が1人という点に、安倍政権が掲げる「女性活躍」が「看板倒れ」であると指摘し、金銭授受疑惑で2年前に閣僚を辞任した甘利明・元経済再生相を党の選対委員長として「復権」させたことも批判している。
 毎日も初入閣が12人にのぼることに、「安倍晋三首相の3選を支持した各派閥の意向を尊重した結果だ」とした。また、片山地方創生担当相について「貧困家庭の子どもを中傷するようなツイートをして物議を醸したことがある。参院外交防衛委員長のときには審議に遅刻して謝罪した」と人選を疑う。そのうえで、「長期的課題を担える布陣なのか」と疑問を呈した。
 読売は「要所に実力者を配した上で、入閣経験のない議員を積極的に登用した。安定感の確保と、党の活性化に腐心した布陣である」と好意的に評価した。そのうえで、「長期政権ゆえの緩みや驕りが目立つ中、内閣全体が緊張感を保ち、優先順位を付けて政策を遂行することが重要である」とし、「その努力を怠れば、内閣は直ちに失速することを、首相は肝に銘じるべきだ」と注文を付けた。
 産経は麻生財務相や河野外相らの留任を「妥当」としたうえで、財務省が決裁文書改ざんなどの不祥事を重ねたにもかかわらず留任となった麻生財務相、そして金銭授受疑惑で閣僚を辞任した過去のある甘利氏に対して「けじめ」や「説明責任」が求められるとした。そのうえで、「さらに必要なのが国民からの信頼を高める努力だ」と指摘し、今後、安倍政権が前のめりになる憲法改正などについて「国民に丁寧に説明し、対話を重ね、率直に協力を求める。謙虚な政治の姿をみたい」と国民目線の政治を求めた。
 日経は「政権の骨格である側近グループを留め置く一方、自民党の各派閥の要望を大幅に取り入れ、党内力学に目配りした布陣」と分析。ただし、「自民党総裁選の論功行賞、入閣待望組の滞貨一掃」という指摘を「そう的外れではない」とした。また、「有権者がみているのは、日ごろの暮らし向きを良くしてくれるかどうかだ。留任閣僚は財務、経済産業、経済再生といった経済分野が多い。改造内閣の声価を定めるのは結局は、この面々である」と、経済紙らしい締めくくり。
 朝日、毎日が安倍政権に批判的で、読売、産経が好意的というのは既定路線であり、この日の社説も脱線はない。日経は経済政策の成否が内閣の評価を決めるとして論評を避けた、というところだろう。

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