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規範意識の鈍麻

 「重大な女性差別的な思考に基づくものといわざるを得ず、強く非難されるべき」「受験生に対する背信行為であると断罪せざるを得ない」—。東京医科大の不正入試問題を調べていた調査委員会が7日公表した報告書には、厳しい言葉が並んだ。
 不正入試問題は、東京医科大が文部科学省の「ブランディング事業」の支援対象校に選定されるべく、文科省科学技術・学術政策局長(当時)に便宜を図るよう依頼し、見返りとして、大学を受験した局長の子息の試験結果に不正に加点して合格させた事件に端を発する。
 大学側が法律事務所に調査委員会の設置と調査を依頼して不正追及に乗り出したところ、少なくとも2006年には医学部医学科の入試で、女子や3浪以上の男子の合格者数を抑える得点操作を繰り返していたことが明らかになった。
 局長の子息や同窓生関係者の子息など利害関係にある受験者への加点は、それぞれの実態に合わせて行われていたが、女子や浪人の得点操作は機械的に行われた。
 例えば18年度の一般入試では2次試験の小論文で次のような操作があった。
 まず、受験生を「現役男子」「1浪男子」「2浪男子」「3浪男子」「4浪男子」「女子」の5つの属性に分類する。そのうえで小論文の点数(100点満点)に0・8の係数を掛ける。この段階ではたとえ100点を取っていても最高点は80点となる。次にそれぞれの属性に応じて加点を行う。「現役男子」「1浪男子」「2浪男子」は20点、「3浪男子」は10点、「4浪男子」「女子」は0点。つまり、仮に100点満点をとったとしても「3浪男子」は90点、「4浪男子」「女子」は80点しか得られないことになる。
 報告書ではこの「悪しき伝統」について、「ただ女性だからという理由だけで不利な得点調整を行うことに関しては、もはや女性差別以外の何物でもない」「受験生に対する背信行為であると断罪せざるを得ない」と批判している。
 さて、この不正がまかり通った背景について、報告書は臼井正彦前理事長と鈴木衞前学長の2人の規範意識の「鈍麻」を挙げている。
 臼井前理事長は自身が入試委員会の委員だった1996年から長年にわたって入試の合否判定に関与している。様々な合格者の調整を行っているうちに、入試は公正・中立であるべきという規範意識を鈍らせた。合格者の調整の背景には同窓生から寄付金を多く集めたいという思いがあり、受験生の親から個人的に謝礼を受け取ることもあった(本人は否定)と指摘した。
 こうした不正が看過されてきたのは理事長と学長に権力が集中し、理事会が「物言えぬ」状態にあったためで、ようはガバナンス体制が作用しなかったからだ。組織の民主的機能が働かず、一部に権力が集中すれば、不正の温床となる。これは何も東京医科大に限った話ではない。

2018年08月08日 16:32 |


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