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男子のカブクワ愛

 最近、夜な夜な森に出かけている。真夜中の森に1人で入るというのは少し不気味さを感じるもので、幽霊の類を信じてはいないものの、自分の足で踏んだ枯れ枝が折れる音に驚いたりもする。また、風が木々を揺らせて音を立てると、誰かが囁いたり、唸ったりしているように聞こえることもある。それらの音にびくびくしながら懐中電灯の明かりを頼りに森の中をウロウロとさまようのは、もちろん昆虫採集のためだ。狙うのはカブトムシとクワガタムシ。
 男の子にとってカブクワ捕りは夏休み定番のイベントだった。しかし、子どもの頃は、昼間、自転車で移動できる範囲でしか虫捕りに出かけられず、満足した成果を出せなかった。一度だけ深夜までカブクワ捕りに夢中になったことがあったが、事前に家族に伝えなかったことから一緒に出掛けた友人の家族が警察に連絡してしまった。意気揚々と自宅に帰ったらパトカーが停まっていたという思い出がある。母親には怒られたが、父親は何も言わなかった。
 そんな不完全燃焼の虫捕りストレスを大人になった今、ようやく発散できるようになった。幸い自然に恵まれた湖北地域では、どこででもカブクワを捕れる。夜、クヌギの木に黒光りする物体を見つけ、胸を躍らせるその瞬間、童心に戻っているのだろう。
 一方、女性は虫嫌いが多い。インターネットの掲示板では、カブクワに対して「ゴキブリと変わらない」という指摘や、「ゴキブリはみんなに嫌われて、カブトムシは崇拝されているの、不公平だよね」なんて書き込みがあるほどだ。
 平安文学を代表する清少納言は「虫はすずむし、ひぐらし、てふ、まつむし、きりぎりす(コオロギのこと)」などと枕草子に綴った。ミノムシについても「いとあはれなり」と表現した。少なくない現代女性が虫を嫌っていることと比較すると、虫を「あはれ」と感じた平安女性の感性に敬服する。ただ、もし枕草子の作者が男性ならば、カブクワを登場させたのではないだろうか。スズムシなどの鳴き声よりも、カブクワの力強さと黒光りにロマンを感じるのが男子のマッチョ的思考なのだから。

2018年08月06日 16:21 |


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