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2018年08月17日

なぜ月を目指すのか

 「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」とニール・アームストロング氏が語ってから約半世紀が経過した。
 今、米航空宇宙局(NASA)は2020年代の完成を目指し、月軌道上の宇宙ステーションの建設を計画している。月面探査の拠点、火星への中継基地として運用し、ロシアや日本も参加する方針。そして宇宙航空研究開発機構(JAXA)は日本人の月面着陸も目指している。
 日本は国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運ぶ無人補給機「こうのとり」の運用などで高い宇宙開発技術を持つ。こうした技術を生かして宇宙ステーションの運用に協力するわけだが、アポロ計画以来となる月面でのプロジェクトの一翼を日本が担うことは、日本の科学技術開発に大いに寄与するのではないかと期待する。
 49年前の人類初の月面着陸は、東西冷戦下、米国とソ連が国の威信をかけた宇宙開発競争を繰り広げた末に生まれた。ソ連のユーリイ・ガガーリンが世界初の有人宇宙飛行を成功させた後、米国が国民を鼓舞する宇宙計画を模索した結果でもあった。
 世界一の国力を持つ米国が軍事力と産業力を潤沢に投入して成功させたこのアポロ計画は、人類が初めて月面に着陸したという歴史的意義が極めて大きい。加えて、宇宙の軍事利用に拍車をかけることとなった。
 宇宙開発競争はソ連の経済を圧迫し、結果としてソ連崩壊の一因になったと指摘する分析もあるが、この崩壊を機に宇宙開発競争は下火になり、月面への有人機着陸を目指す理由もなくなった。経済性を考えると、莫大な費用に見合う効果が乏しいからだ。
 だが、人類は再び、月面への有人着陸に挑戦することとなった。その目的は月面探査や火星への有人飛行への準備だが、結局は人類の持つ探求心、冒険心がそうさせるのだろう。夜空を見上げた時、大きく浮かぶ月に、そこに到達できる技術があるのなら行ってみたいという憧れ。世界初のエベレスト登頂を目指したイギリスの登山家ジョージ・マロリー氏が「そこにエベレストがあるから」と語ったように。
 計画が順調に進めば2030年代には日本人の月面着陸が実現する。莫大な資金を投入して日本人がわざわざ参加する必要があるのかという指摘も出ようが、宇宙ステーション運用と月面プロジェクトへの参加が、日本の国民、特に子ども達に夢を与えるのであれば、大いに歓迎されるのではないだろうか。

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2018年08月08日

規範意識の鈍麻

 「重大な女性差別的な思考に基づくものといわざるを得ず、強く非難されるべき」「受験生に対する背信行為であると断罪せざるを得ない」—。東京医科大の不正入試問題を調べていた調査委員会が7日公表した報告書には、厳しい言葉が並んだ。
 不正入試問題は、東京医科大が文部科学省の「ブランディング事業」の支援対象校に選定されるべく、文科省科学技術・学術政策局長(当時)に便宜を図るよう依頼し、見返りとして、大学を受験した局長の子息の試験結果に不正に加点して合格させた事件に端を発する。
 大学側が法律事務所に調査委員会の設置と調査を依頼して不正追及に乗り出したところ、少なくとも2006年には医学部医学科の入試で、女子や3浪以上の男子の合格者数を抑える得点操作を繰り返していたことが明らかになった。
 局長の子息や同窓生関係者の子息など利害関係にある受験者への加点は、それぞれの実態に合わせて行われていたが、女子や浪人の得点操作は機械的に行われた。
 例えば18年度の一般入試では2次試験の小論文で次のような操作があった。
 まず、受験生を「現役男子」「1浪男子」「2浪男子」「3浪男子」「4浪男子」「女子」の5つの属性に分類する。そのうえで小論文の点数(100点満点)に0・8の係数を掛ける。この段階ではたとえ100点を取っていても最高点は80点となる。次にそれぞれの属性に応じて加点を行う。「現役男子」「1浪男子」「2浪男子」は20点、「3浪男子」は10点、「4浪男子」「女子」は0点。つまり、仮に100点満点をとったとしても「3浪男子」は90点、「4浪男子」「女子」は80点しか得られないことになる。
 報告書ではこの「悪しき伝統」について、「ただ女性だからという理由だけで不利な得点調整を行うことに関しては、もはや女性差別以外の何物でもない」「受験生に対する背信行為であると断罪せざるを得ない」と批判している。
 さて、この不正がまかり通った背景について、報告書は臼井正彦前理事長と鈴木衞前学長の2人の規範意識の「鈍麻」を挙げている。
 臼井前理事長は自身が入試委員会の委員だった1996年から長年にわたって入試の合否判定に関与している。様々な合格者の調整を行っているうちに、入試は公正・中立であるべきという規範意識を鈍らせた。合格者の調整の背景には同窓生から寄付金を多く集めたいという思いがあり、受験生の親から個人的に謝礼を受け取ることもあった(本人は否定)と指摘した。
 こうした不正が看過されてきたのは理事長と学長に権力が集中し、理事会が「物言えぬ」状態にあったためで、ようはガバナンス体制が作用しなかったからだ。組織の民主的機能が働かず、一部に権力が集中すれば、不正の温床となる。これは何も東京医科大に限った話ではない。

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2018年08月06日

男子のカブクワ愛

 最近、夜な夜な森に出かけている。真夜中の森に1人で入るというのは少し不気味さを感じるもので、幽霊の類を信じてはいないものの、自分の足で踏んだ枯れ枝が折れる音に驚いたりもする。また、風が木々を揺らせて音を立てると、誰かが囁いたり、唸ったりしているように聞こえることもある。それらの音にびくびくしながら懐中電灯の明かりを頼りに森の中をウロウロとさまようのは、もちろん昆虫採集のためだ。狙うのはカブトムシとクワガタムシ。
 男の子にとってカブクワ捕りは夏休み定番のイベントだった。しかし、子どもの頃は、昼間、自転車で移動できる範囲でしか虫捕りに出かけられず、満足した成果を出せなかった。一度だけ深夜までカブクワ捕りに夢中になったことがあったが、事前に家族に伝えなかったことから一緒に出掛けた友人の家族が警察に連絡してしまった。意気揚々と自宅に帰ったらパトカーが停まっていたという思い出がある。母親には怒られたが、父親は何も言わなかった。
 そんな不完全燃焼の虫捕りストレスを大人になった今、ようやく発散できるようになった。幸い自然に恵まれた湖北地域では、どこででもカブクワを捕れる。夜、クヌギの木に黒光りする物体を見つけ、胸を躍らせるその瞬間、童心に戻っているのだろう。
 一方、女性は虫嫌いが多い。インターネットの掲示板では、カブクワに対して「ゴキブリと変わらない」という指摘や、「ゴキブリはみんなに嫌われて、カブトムシは崇拝されているの、不公平だよね」なんて書き込みがあるほどだ。
 平安文学を代表する清少納言は「虫はすずむし、ひぐらし、てふ、まつむし、きりぎりす(コオロギのこと)」などと枕草子に綴った。ミノムシについても「いとあはれなり」と表現した。少なくない現代女性が虫を嫌っていることと比較すると、虫を「あはれ」と感じた平安女性の感性に敬服する。ただ、もし枕草子の作者が男性ならば、カブクワを登場させたのではないだろうか。スズムシなどの鳴き声よりも、カブクワの力強さと黒光りにロマンを感じるのが男子のマッチョ的思考なのだから。

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