滋賀夕刊新聞社は滋賀県長浜を中心に政治、経済、文化の情報をお届けする新聞です。



人員強化急務、増え続ける児童虐待

 滋賀県の虐待相談に関する統計が発表された。県が発表した「6392件」は、子ども家庭相談センターが児童虐待と認定した件数であり、虐待を受けた子ども数が「6392人」にのぼると考えてよい。県内の18歳未満の人口は約24万人だから、子ども38人に1人の割合で何らの虐待を受けた計算になる。子ども達の体や心に傷を負わせる虐待が身近な家庭でも発生していることを裏付けている。
 虐待を理由に保護したケースが186件あった。虐待が発覚しても親の元での支援を行うのが一般的だが、子どもに危険の恐れがある場合は、親の同意を得て保護したり、児童福祉法に基づいて同意なく保護したりしている。
 最近の事件で胸が締め付けられたのは、東京都目黒区で5歳だった船戸結愛ちゃんが両親に虐待されて亡くなった事件。食事を与えてもらえず、最後は食べものをのみ込む力もなく衰弱死した。見つかったノートには「もうおねがいゆるして」と書かれていた。児童相談所がマークしていたにもかかわらず、惨事を防げなかった。
 なぜ、未然に防ぐことができなかったのかと、虐待事件が起きるたびに、非難の矢面に立たされる児童相談所だが、その奮闘を赤裸々に記録した「ルポ児童虐待」(朝日新書)を読むと、児童相談所の人員強化が不可欠と感じる。
 同書は児童虐待について20年間にわたって取材してきた朝日新聞の大久保真紀記者がまとめた。親から包丁を突き付けられたり、夫婦喧嘩の取っ組み合いの最中に乳児を救い出したり、と世間が知ることのない児童相談所の激務が紹介されている。
 児童相談所は虐待の疑いがあるとの通報を受けると48時間以内に安全を確認するよう求められている。しかし、実際は不在だったり、親が面会を拒否したり、と児童の安否を確認できないケースもある。家庭に子どもを置いておけば命の危険がある場合は一時保護することになる。ただ、一時保護した子どもを親の元に返すには、親に変化してもらうしかない。しかし、子どもを奪われた親は児童相談所を「敵」のように思う。その中で、親との信頼関係を築き、親を指導するのは並大抵の苦労では済まない。
 親から罵倒され、神経をすり減らしながらも、子どもの命を守るために昼夜を問わず駆け回る児童相談所職員の多忙さは、世間ではあまり知られない。48時間ルールのように、子どもの生命に関わる突発的な事態がたびたび発生するにもかかわらず、人員不足は慢性的で、児童福祉司が多忙のあまり家庭を後回しにして「ほとんどうちがネグレクトです」と漏らす場面が印象的だった。
 さて、滋賀県の場合はセンターに勤務する児童福祉司は40人、児童心理司は17人。毎年、徐々に人数を増やしているものの、虐待を受けた児童が年間6392人もいて、それぞれのケースで異なる家庭の課題を抱えていることを考えると、とても人員が足りているとは思えない。人員強化が喫緊の課題。

2018年06月27日 16:30 |


過去の時評


しが彦根新聞
滋賀夕刊電子版
滋賀夕刊宅配版
滋賀夕刊デジタルトライアル
“新聞広告の資料請求、ご案内はこちらから"
 
長浜市
長浜市議会