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SOSに気付きたい

 岩手県北上市で1歳9カ月の男児が十分な食事を与えられずに死亡し、25歳の父親が5日、保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された。男児が死亡したのは4月8日。遊びから帰宅した父親が男児の様子がおかしいとして消防に通報していた。
 司法解剖の結果、男児の体重は約8㌔。死亡前の数日間は食事を与えてもらえず、低栄養や全身機能障害により命を落とした。ようは餓死である。
 父親と男児は2人暮らし。母親とは数カ月前から別居していたという。男児が通っていた保育所によると、登園時に男児の衣服が尿や便で汚れていたり、園で着替えさせて帰宅させても翌日同じ服で登園させるなど、ネグレクト(育児放棄)の傾向は明らかだった。保育園から相談を受けた市やは緊急性のある状況とは考えずに、児童相談所も男児の一時保護はしなかった。
 シングルの子育てがいかに過酷なのかは育児経験のある大人なら誰でも知る。家族、親族、地域社会の協力や理解、そして行政機関の支援が欠かせない。25歳の父親がどういう心境で育児を放棄したのかは今後の捜査が待たれるところだが、この豊かなはずの日本で、親の愛情も食べ物も与えられずに命を落とす幼児がいる不幸に、社会と心の貧困を感じずにはいられない。男児がどれほど腹を空かせ、どれほど親を恋しがったことか。
 長崎市内の団地で5月29日、高齢の男性3人が転落死した。警察は事件や事故、自殺の可能性を含め捜査しているが、5日、長崎県警は3人が同じ団地の12階に住む無職の兄弟(70、74、77歳)と判明したと発表した。うち、2人は障害を抱え、長兄は転落死した29日に市内の障害者施設を退所したばかりだった。
 言い争う声などはなかったといい、自殺の可能性も指摘されるところだが、もし、兄弟3人がこれからの将来を悲観して団地から飛び降り自殺を図ったとしたら、障害を抱える高齢者を守り切れなかった社会に責任なしとは言えない。
 この2つのニュースは、弱者のSOSが地域社会や支援機関に届かない、もしくは届いても対処しきれていないという今の社会をあらわしている。行政など支援機関だけの問題ではなく、私たち1人1人の心の姿勢の問題だろう。

2018年06月06日 16:11 |


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