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2018年06月27日

人員強化急務、増え続ける児童虐待

 滋賀県の虐待相談に関する統計が発表された。県が発表した「6392件」は、子ども家庭相談センターが児童虐待と認定した件数であり、虐待を受けた子ども数が「6392人」にのぼると考えてよい。県内の18歳未満の人口は約24万人だから、子ども38人に1人の割合で何らの虐待を受けた計算になる。子ども達の体や心に傷を負わせる虐待が身近な家庭でも発生していることを裏付けている。
 虐待を理由に保護したケースが186件あった。虐待が発覚しても親の元での支援を行うのが一般的だが、子どもに危険の恐れがある場合は、親の同意を得て保護したり、児童福祉法に基づいて同意なく保護したりしている。
 最近の事件で胸が締め付けられたのは、東京都目黒区で5歳だった船戸結愛ちゃんが両親に虐待されて亡くなった事件。食事を与えてもらえず、最後は食べものをのみ込む力もなく衰弱死した。見つかったノートには「もうおねがいゆるして」と書かれていた。児童相談所がマークしていたにもかかわらず、惨事を防げなかった。
 なぜ、未然に防ぐことができなかったのかと、虐待事件が起きるたびに、非難の矢面に立たされる児童相談所だが、その奮闘を赤裸々に記録した「ルポ児童虐待」(朝日新書)を読むと、児童相談所の人員強化が不可欠と感じる。
 同書は児童虐待について20年間にわたって取材してきた朝日新聞の大久保真紀記者がまとめた。親から包丁を突き付けられたり、夫婦喧嘩の取っ組み合いの最中に乳児を救い出したり、と世間が知ることのない児童相談所の激務が紹介されている。
 児童相談所は虐待の疑いがあるとの通報を受けると48時間以内に安全を確認するよう求められている。しかし、実際は不在だったり、親が面会を拒否したり、と児童の安否を確認できないケースもある。家庭に子どもを置いておけば命の危険がある場合は一時保護することになる。ただ、一時保護した子どもを親の元に返すには、親に変化してもらうしかない。しかし、子どもを奪われた親は児童相談所を「敵」のように思う。その中で、親との信頼関係を築き、親を指導するのは並大抵の苦労では済まない。
 親から罵倒され、神経をすり減らしながらも、子どもの命を守るために昼夜を問わず駆け回る児童相談所職員の多忙さは、世間ではあまり知られない。48時間ルールのように、子どもの生命に関わる突発的な事態がたびたび発生するにもかかわらず、人員不足は慢性的で、児童福祉司が多忙のあまり家庭を後回しにして「ほとんどうちがネグレクトです」と漏らす場面が印象的だった。
 さて、滋賀県の場合はセンターに勤務する児童福祉司は40人、児童心理司は17人。毎年、徐々に人数を増やしているものの、虐待を受けた児童が年間6392人もいて、それぞれのケースで異なる家庭の課題を抱えていることを考えると、とても人員が足りているとは思えない。人員強化が喫緊の課題。

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2018年06月25日

三日月県政、2期目へ

 県知事選は大方の予想通り三日月大造氏が近藤学氏を大差で破り、再選を果たした。三日月氏は有効投票45万4345票のうち37万7132票を獲得し、得票率は83%にのぼる。一方で県民の関心は低く、投票率は過去ワースト2の40・62%。有権者の6割が棄権した。
 低投票率の原因は、国政で対立する与野党が共産を除いてこぞって現職の三日月氏を担いだことだろう。4年前は民主党衆院議員からの転身を目指した三日月氏と、自民、共産の独自候補による三つ巴の戦いだった。良くも悪くも県と国に風を起こした嘉田由紀子県政後を占う選挙として、大いに注目を集めた。
 しかし、今回は国民民主党の県議で組織する地域政党「チームしが」に加え、自民、公明が三日月氏の支持を表明した時点で、選挙のすう勢は決定していた。共産の推薦を受ける近藤学氏が「野党と市民の共闘」を訴えたところで、県民を二分するような争点を作り出せない限り、勝ち目はなかった。
 三日月氏は4年前の知事選後、「ノーサイド」を宣言。以来この4年間「八方美人」的な政治外交で味方を増やしたうえ、目に見えるような失点もなかった。県議会で過半数を占める自民、公明としても独自候補を擁立できない以上は、現職知事という勝ち馬に乗った方が得策であることは論を待たない。
 三日月氏は選挙戦で「健康しが」と銘打った公約を掲げたが、その中身を紐解くと、数値目標のない抽象的な政策が総花的に羅列してある。当選が確実されていた現職知事としては、踏み込んだ数値目標を掲げることは自分の首を絞めかねない。ただ、総花的な公約にどれほどの予算を割けるのかは未知数だ。
 県が今年2月に発表した今後の財政収支の見通しは、このまま対策を打たなかったら2026年までに939億円の財源不足に陥る。さらに国体プール整備を含めれば不足額は拡大する。また、少子高齢化により滋賀県も人口減少に突入し、限られた税収で福祉政策を維持せねばならない。自治体経営が今後も厳しさを増す中、滋賀国体の施設整備に450億円以上もの巨額を投資することに、どこまで県民の理解を得られているのだろうか。施設整備の裏側で福祉や教育の予算が縮小されるようなことがあってはならない。
 三日月氏は47歳の現役世代。与党だらけとなった県議会の手練手管に絡めとられることなく、県民の声に寄り添った、かつ若い感性をにじませるような2期目を期待したい。

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2018年06月22日

がん患者へのやじ

 衆議院厚生労働委員会で、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の審議のため、がん患者が参考人として発言しているさなか、自民党の穴見陽一衆院議員が「いいかげんにしろ」とやじを飛ばし、後に謝罪することとなった。
 参考人は日本肺がん患者連絡会代表を務める長谷川一男さん。2010年、39歳で肺がんを発症し、現在ステージ4。15年にNPO法人「肺がん患者の会ワンステップ」を立ち上げた。代表を務める連絡会は全国11の肺がん患者会で構成し、患者の声を医療関係者や行政などに伝えて現状の改善を目指している。長谷川さんの活動に対しては世界肺癌学会が表彰している。
 長谷川さんは抗がん剤治療や右肺の摘出など数々の治療と手術を乗り越え、発症から8年目を迎えているが、国立がん研究センターによると、肺がんのステージ4は5年後の生存率が5%を割り込む。
 長谷川さんには喫煙歴はない。だが、長谷川さんによると肺がん患者の多くが受動喫煙に対して好き嫌いでなく、恐怖の感情を抱き、たばこの煙にがん再発の恐怖を感じているという。そして、がん患者は飲食店で受動喫煙するケースが最も多いと指摘している。
 この国の受動喫煙対策をどのように進めるのか、今回の法改正で十分なのか、全国の肺がん患者の声を代弁する長谷川さんの声にしっかりと耳を傾けることが、国会議員の使命であろう。
 穴見議員はファミリーレストランを展開する「ジョイフル」の代表取締役。この改正案により、大手チェーンの飲食店は受動喫煙防止の規制の対象となる。
 やじが問題視されたのを受け、穴見議員は「参考人の方はもとより、関係の皆さまに不快な思いを与えたとすれば、心からの反省とともに深くおわび申し上げる」とし、発言の経緯について「参考人の発言を妨害するような意図はまったくなく、喫煙者を必要以上に差別すべきではないという思いでつぶやいた」と釈明している。しかし、余命いくばくもない長谷川さんが少しでも受動喫煙に対する規制を前進させようと、どのような思いで委員会の場に立っているのかを察すれば、「いいかげんにしろ」などというやじが飛び出すわけがない。
 今回のやじは、自民党の穴見議員がクローズアップされたわけだが、国会審議を見る限り、与野党問わず、やじが多い。もちろん安倍政権の長期化と、離合集散を繰り返す野党のふがいなさとは無縁ではない。穴見議員のやじは、国会の弛緩の一例と国民はみている。

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2018年06月20日

生け垣の防災機能

 一、緑豊かな町を生け垣で守りましょう。
 二、お隣と会話のできる塀にしましょう。
 三、歩行者の安全を考えた塀にしましょう。
 四、子供の命を守る塀にしましょう。
 五、町並みの美しさを考えて塀をつくりましょう。
 「へいづくり憲章」を掲げる東京都国分寺市の高木町自治会は、1978年の宮城沖地震でブロック塀が倒壊し子どもが犠牲になった惨事を契機に、町内のブロック塀を見直して生け垣を推奨する防災の取り組みを始めた。
 阪神・淡路大震災では1472カ所でブロック塀が倒壊し、緊急車両の通行や救助活動の妨げとなった。2016年の熊本地震でもブロック塀が倒壊し、死者が発生している。
 そして、18日の大阪府北部を震源とする地震でも、ブロック塀が倒れ、登校中の小学4年生の女児と、子ども達の登校の見守り活動に向かう途中だった80歳の男性が亡くなった。
 女児を下敷きにしたブロック塀は建築基準法に適合していなかった可能性が高いことから、各教育委員会が子ども達の通学路や教育施設のブロック塀について緊急調査を行っている。長浜市教委も19日、各小中学校に対して通学路と学校施設周辺のブロック塀の点検を指示し、21日までに報告するよう求めた。また、保育園や幼稚園、認定子ども園にも園舎周辺のブロック塀を点検するよう指示を出した。
 ブロック塀は大きな地震が発生するたびにその危険性が指摘されているが、今回の地震では、建物の被害が少なかった影響で、ブロック塀の倒壊に特に注目が集まっている。
 さて、高木町自治会のある国分寺市では緑化推進と防災対策を目的に、市民が生け垣を整備する場合、延長1㍍あたり最大8000円を助成する補助金制度を設けている。長浜市を含む県内の自治体も同様の補助制度を設けているが、防災ではなく緑化の視点からのアプローチとなっている。
 生け垣は目隠しや風よけ、人や動物の侵入を防ぐことを目的に設けられるものだが、近年は地震に対する強さも注目されている。ブロック塀のように崩れる心配はなく、仮に倒れたとしても大事に至る可能性は低い。建築基準を満たさないブロック塀の総点検もさることながら、生け垣の防災機能に注目することも地震から得る教訓ではないだろうか。

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2018年06月18日

地震への備え

 きょう午前7時58分、大阪を震源とするマグニチュード6・1の地震が発生した。茨木市や高槻市で震度6弱を記録し、滋賀県内では大津市南郷で震度5弱。長浜市内では西浅井町大浦で震度4、八幡東町、公園町、宮部町、内保町、湖北町速水、木之本町木之本、余呉町中之郷で震度3を記録した。
 大阪府内では家屋の倒壊や火災が発生。倒れてきた本棚の下敷きになって85歳の男性が亡くなるなど、死者も複数人出ているようだ。早急な救助活動が求められる。
 幸い、長浜市内では建物倒壊などの被害は報告されていないが、電車での通学する生徒・学生のいる高校や大学は一部で休校となった。福井県内では高浜町で震度4、おおい町で震度3の揺れがあったが、関電などによると、原発に異常はないという。
 関西圏の新幹線やJR在来線はほとんどが運転を停止。敦賀から京都・大阪・姫路、その先の播州赤穂や上郡まで運転を見合わせることとなった。多くの通勤・通学客が電車の中に缶詰となり、駅でも多くの利用者が足止めされることとなった。高速道路も通行止めとなり、関西の交通網は麻痺した。大阪へ電車で通勤途中だった親族からは「電車に乗っていても感じる揺れだった」と報告があった。電車の一部が駅のホームに差し掛かっていたので、そこから車外へと降りられたが、駅で足止めとのこと。また、きょう取材する予定だった相手からは電車の中に缶詰というので、キャンセルの連絡があった。
 さて、地震が発生するたびに考えさせられるのが日ごろの備え。大地震の発生の際は水道やガス、電気などライフラインが停止する。支援物資が到着するまでの間(3日程度)に必要な物はあらかじめ備えておきたい。また、家具の下敷きにならないよう、家具はしっかり固定したい。ケガをした場合の手当に必要なアイテムや、常備薬のほか、ウェットティッシュやトイレットペーパーなど多目的に使える衛生用品もあると便利だ。ラジオや懐中電灯なども欠かせない。
 そして最も大切なのは近所とのコミュニケーションだろう。大地震が発生した場合、消防や警察には救助依頼が殺到し、手が回らない状態となる。阪神・淡路大震災で建物の下敷きから救い出したのも、東日本大震災で襲い来る大津波に一緒に逃げようと声をかけたのもご近所さんだった。日ごろの付き合いを大切にし、どこに誰が住んでいるのか、把握していたい。隣人同士、互いに助けあう関係にあるのだから。

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2018年06月11日

新潟県知事選

 新潟県知事選は10日投開票され、前海上保安庁次長・花角英世氏(60)が前県議・池田千賀子氏(57)ら2人を破り、初当選した。
 花角氏が54万6670票、池田氏が50万9568票と約4万票差だった。投票率は58・25%で、前回より5・20ポイント上昇した。
 選挙は事実上、国政与野党の代理戦争となっていた。自民、公明が花角氏を支持したのに対し、立憲民主、国民民主、共産、自由、社民は池田氏を推薦した。
 野党の党首や幹部が続々と新潟入りして森友・加計学園問題を追及。安倍政権を批判して、官僚出身の花角氏を「官邸の言いなり」と指摘していた。一方の花角氏は自民、公明の「推薦」ではなく「支持」にとどめて政党色を薄め、「県民党」との姿勢を貫いた。
 また、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に慎重姿勢を見せていた米山隆一前知事の辞職に伴う選挙だったことから、原発再稼働が争点の一つになるとみられていたが、再稼働を推進する自民党が支持する花角氏も再稼働に慎重な姿勢を示したことで、争点化を回避。再稼働反対票を取り込むことに成功した。
 かつて「保守王国」と呼ばれた新潟では、2年前の参院選と知事選、昨年の衆院選で自民党系候補の多くが敗れた。いずれも野党共闘が奏功した結果だった。今回は花角氏の戦術が野党勢力に打ち勝ったという見方もできるが、自民、公明が黒子に徹することでの勝利は、安倍政権の地方での求心力低下を示すものであろう。
 一方の滋賀県知事選(24日投開票)。国政与野党が揃って現職の三日月大造候補を支持し、対立する近藤学候補を推すのは共産のみ。「非共産対共産」という構図に、県民の関心はいまいち。三日月候補が現職ゆえに総花的な政策を訴えるのに対し、近藤候補が滋賀国体への巨費投入の見直しを訴えて一点突破を図るのかと思いきや、安倍政権批判や憲法改正反対、原発再稼働反対なども取り上げている。
 両候補の噛み合う争点が乏しく、投票意欲を削ぐことになりはしまいか大いに心配している。

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2018年06月08日

進化の歩み、伝える先生

 梅雨を迎えた。週末には長浜でも彦根でもイベントが目白押しだが、天気はいまいち。でも、生物や植物にとっては生命力を蓄える輝かしい季節となった。
 3歳の次男は今、カエル捕りに夢中になっている。自宅近くの水田脇の小さな水路にはトノサマガエルかダルマガエルなのか見分けは付かないが、無数のカエルが今を謳歌している。次男はまだ網を上手に使えず、カエルに軽々と逃げられてしまうが、悔しがることもなく「カエルさんは速いなー」「すごいなー」と感心しきり。子どもの生き物を見つめる視点の深さや広さにこちらも感心してしまう。
 日ごろ、カエルをじっくり観察する機会はないが、改めてカエルの生態について調べると、その生命のアイデアに驚かされる。
 カエルは、卵から孵るとオタマジャクシとして水中で生活し、エラ呼吸を行う。その後、足が生え、手が生え、尻尾が縮み、カエルの姿となって陸上で肺呼吸するのは、誰もが知る両生類の特徴だ。
 その点、人間は生まれてから死ぬまで姿も体の機能も変わらない。せいぜい、毛が生えたり、抜けたりという程度。
 約38億年前に海水の中で誕生したとされる生命は少しずつ進化を遂げ、水中で大いに繁殖した。水中に溶け込んだわずかな酸素をエラで漉して取り込んだ。その後、消化器官を使って酸素を取り込む生物が誕生し、消化器官が膨らんで肺へと進化した。空気中の酸素を吸えるようになると、生物は陸へと上がった。両生類の誕生だ。そして、両生類から爬虫類、哺乳類へと肺が受け継がれ、今の生態系が誕生した。
 カエルの幼生であるオタマジャクシは今、水田ですくすくと育っている。その水田も6月中旬くらいから水が抜かれる。魚類は落水に合わせて水路に逃れない限り全滅してしまうが、オタマジャクシは水位の変化に合わせて身体をコントロールし、カエルへと変態を遂げる。
 水田ではなく常時、水のある池や川のオタマジャクシは慌ててカエルに変態することはない。水田生活を謳歌するオタマジャクシだけが、水田という環境に変態のタイミングを合わせるそうだ。環境によって変態をコントロールすることで生存チャンスを飛躍的に拡大させ、自然の淘汰から逃れてきた。
 生命の進化の歩みをたった1、2カ月ほどで体現してくれるカエルは、子ども達にとって身近な生物の先生なのかもしれない。

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2018年06月06日

SOSに気付きたい

 岩手県北上市で1歳9カ月の男児が十分な食事を与えられずに死亡し、25歳の父親が5日、保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された。男児が死亡したのは4月8日。遊びから帰宅した父親が男児の様子がおかしいとして消防に通報していた。
 司法解剖の結果、男児の体重は約8㌔。死亡前の数日間は食事を与えてもらえず、低栄養や全身機能障害により命を落とした。ようは餓死である。
 父親と男児は2人暮らし。母親とは数カ月前から別居していたという。男児が通っていた保育所によると、登園時に男児の衣服が尿や便で汚れていたり、園で着替えさせて帰宅させても翌日同じ服で登園させるなど、ネグレクト(育児放棄)の傾向は明らかだった。保育園から相談を受けた市やは緊急性のある状況とは考えずに、児童相談所も男児の一時保護はしなかった。
 シングルの子育てがいかに過酷なのかは育児経験のある大人なら誰でも知る。家族、親族、地域社会の協力や理解、そして行政機関の支援が欠かせない。25歳の父親がどういう心境で育児を放棄したのかは今後の捜査が待たれるところだが、この豊かなはずの日本で、親の愛情も食べ物も与えられずに命を落とす幼児がいる不幸に、社会と心の貧困を感じずにはいられない。男児がどれほど腹を空かせ、どれほど親を恋しがったことか。
 長崎市内の団地で5月29日、高齢の男性3人が転落死した。警察は事件や事故、自殺の可能性を含め捜査しているが、5日、長崎県警は3人が同じ団地の12階に住む無職の兄弟(70、74、77歳)と判明したと発表した。うち、2人は障害を抱え、長兄は転落死した29日に市内の障害者施設を退所したばかりだった。
 言い争う声などはなかったといい、自殺の可能性も指摘されるところだが、もし、兄弟3人がこれからの将来を悲観して団地から飛び降り自殺を図ったとしたら、障害を抱える高齢者を守り切れなかった社会に責任なしとは言えない。
 この2つのニュースは、弱者のSOSが地域社会や支援機関に届かない、もしくは届いても対処しきれていないという今の社会をあらわしている。行政など支援機関だけの問題ではなく、私たち1人1人の心の姿勢の問題だろう。

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2018年06月04日

ゲーム依存症

 世界保健機関(WHO)はゲーム依存症を新たに「ゲーム障害」として疾病分類の中に定義づけるという。
 ゲーム依存症について統一的な定義は今のところ存在しないが、WHOでは▽ゲームをする衝動が止められない▽日常生活よりゲームを優先する▽問題が起きてもゲームを続ける▽家族や社会、学習、仕事などに問題が生じる—などを挙げている。ゲームに熱中するあまり、学業や仕事、日常生活がおろそかになる状態を指すと思って良いだろう。
 今はスマートフォンで手軽にゲームを楽しめるため、時間や場所を選ばずにゲームに興じることができる。また、少なくないゲームが無料で始められる。読者の皆さんの周囲でもスマホでゲームに興じる人が多いのではないだろうか。例えば、電車に乗っていても学生から社会人まで年齢を問わずにゲームで遊んでいる人を目にする。
 老若男女がスマホでゲームに興じるという一昔前では考えられないような光景が、もはや当たり前になっていることを、実は心配に思っている。ゲームにばかりに興じているとしたら、例えば誰かとの出会いや会話であったり、読書であったり、五感で四季を感じる瞬間であったり、大切な機会や時間を素通りしてしまっている気がするからだ。
 そして、最も心配なのは子どもの心身への影響である。体も、脳も、そして心も大きく成長する時期にある子どもがゲームに熱中することは、彼ら彼女らの将来のためにどれ程の糧になろうというのか。全国学力・学習状況調査でもスマホの使用時間と平均正答率との関係がはっきりと出ている。
 ゲーム依存症にならないためには、ゲームをする場所や時間、使う金額などをあらかじめルールとして決めておき、ゲーム以外にも熱中できる楽しみや趣味を見つけることなどが考えられよう。
 WHOは今月中にもゲーム障害を疾病に位置付ける方針だ。自身や子どもが、ゲームが気になって学業や仕事に手が付かなくなっているならば、依存症の危険信号かもしれないし、1日に何時間もゲームに興じているようであれば、今一度、付き合い方を見直した方が良いだろう。

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2018年06月01日

ツバメと人、誘う湖北

 小欄のツバメに関する記事をインターネットで読んだという札幌市内の男性(75)からメールを頂いた。
 男性はキタキツネやエゾシカも出没する山林に近い郊外に住み、多くの野鳥にも出会えるそうだ。「バードテーブル」と呼ばれる給餌台にエサを置くと、シジュウカラ、ゴジュウカラ、スズメ、ヤマガラ、ヒヨドリ、アカゲラが毎日やって来るという。
 「今、我が家の軒下の巣箱ではスズメが子育て中。ピーピーとかぼそくても元気のいい雛の声がしています。無事に巣立つのを楽しみにしています」とレポートしている。
 5月21日の小欄では「天敵を避けるために人の暮らしに密着してきたツバメにとって、人そのものが子育ての脅威になりつつある」と、ツバメが減少しているその一因を紹介した。男性は「札幌にはツバメはやってきません」としながらも、「自然の摂理の中で生息する野鳥を大切に見守りたい。そんな心のゆとりを私たちは持ちたいものです」と感想を綴っている。
 日に日に強くなる太陽の光を浴びて、生命が花開くこの時期。木々の緑はいよいよ深くなり、田んぼではオタマジャクシが元気に泳ぎ、夜は水路で蛍が飛び交っている。湖北地域の豊かな自然と生命の力強さを感じずにはいられない季節となった。
 そんな湖北地域で昨日から1泊2日の日程で千葉県船橋市の中学生が農家民泊を楽しんでいる。豊かな自然環境の中で農作業などを体験し、農家と交流する。その教育効果に学校関係者が注目し、「農村修学旅行」は今や人気のプログラムとなっている。
 県内の農村修学旅行の先進地は日野町だ。一般社団法人「近江日野交流ネットワーク」が宿泊や体験を受け入れる農家などを取りまとめ、「三方よし!近江日野田舎体験」と題して修学旅行生や一般の家族を受け入れている。9年前から農家民泊の取り組みを進め、これまでに2万4000人を受け入れてきた。
 テレビやスマホを通して「バーチャル」な情報ばかりに触れ、ともすれば「頭でっかち」な人間が増えているのではと危惧する今の社会において、体験や人との交流を通して五感を刺激する農家民泊が注目されるのは、当然なのかもしれない。
 日野町の農家民泊のうち、リピーターは7割を占めるそうだ。湖北地域での船橋市の中学生の農家民宿は3度目で、「離村式」では涙を見せる生徒もいるという。豊かな自然と受け入れ家庭の温かさはツバメだけでなく、都市部の人の心も誘うのだろうか。

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