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食育白書から

 政府が29日に閣議決定した2017年度の「食育白書」では、1人で食事をする「孤食」の割合が増加していることをレポートし、誰かと共に食卓を囲む大切さを説いている。
 20歳以上の1786人を対象にした調査によると、1日のすべての食事を1人で取る頻度について、「ほとんど毎日」が11・0%、「週に4〜5日」が4・3%となった。つまり、15・3%が週の半分以上を孤食で済ませ、6年前に比べて約5ポイント上昇している。独り暮らしの高齢者が増加していたり、夫婦だけの少人数世帯でも時間が合わなかったり、昨今の社会情勢が背景にある。
 現実的には学業や仕事のため家族のもとを離れて単身で暮らす人は、どうしても孤食になりがちだ。だが、「孤食」はいけないことなのだろうか。農林水産省の「食育に関する意識調査」によると、孤食がほとんどなく、ほぼ毎日誰かと食事を共にしている人は、孤食が週2日以上の人と比べると、ほぼ毎日主食・主菜・副菜を3つ揃えて食べると回答した割合が多く、食事のバランスが良い傾向にある。さらに、朝食の頻度や、生活習慣病に気をつけた食生活の実践状況も、食事を共にする頻度が高い人のほうが良好な傾向にあるという結果が導き出されている。つまり、複数で食卓を囲んだ方が、自ずと品数が多くなり、健康的な食生活になりやすいということだろう。
 さて、「食育」という言葉は現代人の食生活が乱れているからこそ注目されているワードではあるが、初めて登場したのは明治時代のことだった。医食同源を提唱した軍医の石塚左玄は1898年(明治31)発行の「食物養生法」で食事が人に及ぼす影響を強調し、体育、智育、才育の基本となるものとして「食育」の重要性に言及した。1903年(明治36)に小説「食道楽」を著した村井弦斉も「小児には徳育よりも智育よりも体育よりも食育が先き」と食育の大切さを説いている。
 明治期は文明開化により肉食が普及した。福沢諭吉は1870年(明治3)の「肉食之説」で、牛肉や牛乳が身体の養生に有効だと説き、肉食を啓蒙。さらに1882年(明治15)に「肉食せざるべからず」を著し、欧米人の精神と体力が日本人に勝っていることを指摘し、肉食の利点を力説した。
 学校給食が始まったのも明治期だった。1889年(明治22)、山形県鶴岡町の私立小学校で貧困児童を対象に無料で学校給食を実施。その後、貧困児童向けの給食が徐々に広がった。
 当時の食育は欧米列強に対抗しうる強靭な国家を築くために、日本人の体力と精神の向上を目指した食生活の転換に不可欠なワードだったと分析できる。方や、今の時代は飽食と食生活の乱れ、そして孤立した住環境を背景として注目されている。孤食に限らず、朝食の欠食や、家族でばらばらのメニューを食べる「個食」など、食育の観点から改善すべき食生活の課題は山積している。

2018年05月30日 17:16 |


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