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天井のない監獄

 アメリカ大使館のエルサレム移転に抗議する大規模デモがパレスチナ自治区のガザであり、イスラエル治安部隊の発砲により、パレスチナ人60人が死亡、約2700人が負傷した。
 抗議デモの参加者はガザ地区とイスラエルを隔てる分離フェンスの緩衝地帯に乗り込んだ。パレスチナ人の投石や火炎瓶に対し、治安部隊は銃撃や催涙弾で応戦した。
 アメリカ大使館がエルサレムに開設されたのが14日。そして1948年のイスラエル建国によりパレスチナ人が故郷を奪われた悲劇を嘆く「ナクバ(大惨事)の日」が15日。パレスチナ人が怒りを爆発させ、抗議デモを行うのは当然のことだった。
 ガザは「天井のない監獄」と言われる。想像してほしい。長浜市の3分の2ほどの面積に、外部と隔離されて約200万人が暮らしていることを。上水道も下水処理システムも満足に機能せず、電気が使えるには1日2、3時間程度。国際社会から入ってくる援助は著しく制限され、医療物資も不足している。失業率は40%にのぼり、生きてゆくのがぎりぎりだ。ぐるりと張り巡らされた分離フェンスに近づくだけでイスラエル側から銃撃を受ける。
 ガザで活動する国境なき医師団のメンバーがそこで暮らす人々の声をレポートしている。4月26日のレポートではガザの分離フェンスで頻繁に行われている抗議デモの参加者の声を伝えている。
 「ガザには希望も未来もありません。ここの人々は貧しく、少しずつ死に向かっています。私自身も、ガザでの生活に絶望しています」と語るのは30歳女性。「デモ行進に向かう時は死ぬ覚悟でした。英雄として死ぬ方が、今のガザの生活よりずっとまし。自宅を出る前に、父にお金を渡しておきました。私の葬式の供え物を買うための費用です。それから、皆にお別れを言いました。帰宅は望まない。そう決心していました」。女性は両足に銃弾を浴びた。
 11歳の男の子は「僕ぐらいの年であんなに(分離フェンスに)近づいた子どもは他にいません。向こう側の景色が見たくて、近寄ったんです。すごくきれいでした。ガザよりもずっと!でもその時に撃たれたんです。撃った人の顔も覚えています。金髪の女の人でした(中略)。まだ子どもなのに、とは思いません。けがの痛みも、悲しいのも我慢できます。僕は、撃たれてけがをした他のガザの人たちと一緒です」と松葉杖をつく。
 抗議デモによって現状が打開できるわけではない。しかし、ガザに住むパレスチナの人々は自由を奪われた監獄の中で未来を見出すことができず、デモに参加した多くが、銃撃の危険を知りながらも「失うものはない」と分離フェンスに向かった。
 かつてナチスによるホロコーストで多くの同胞を失ったユダヤ人。その惨劇の被害者が今、ガザでホロコーストを再現させていることに、人類の業の深さを嘆かずにはいられない。パレスチナの人々が自由になるのはいつになるのだろうか。それまでに何人が犠牲になるのだろうか。15日には生後8カ月の乳児もイスラエル側の発射した催涙弾によって亡くなっている。

2018年05月16日 16:50 |


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