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近江八幡市長選

 15日投開票された近江八幡市長選は、新人の小西理氏が2万1047票を獲得し、現職で3期目を目指した冨士谷英正氏(1万1647票)をダブルスコアとなる大差で破り、初当選を果たした。
 小西氏は2001年、現職の衆院議員だった実兄の死去に伴う補欠選挙で自民党から初当選し、衆院議員を2期務めた。小泉政権下の郵政選挙で郵政民営化に反対したため、無所属での立候補を余儀なくされ、敗れた経歴を持つ。以降、国政選挙へ無所属で2度立候補したものの敗れ、政治の表舞台からは遠ざかっていた。
 冨士谷氏は旧近江八幡市議1期、県議4期、旧近江八幡市長を1期務めた後、旧近江八幡市と旧安土町の合併に伴う2010年の新しい近江八幡市長選で初当選し、現在2期目。県市長会の会長を務めるなど、湖国政界の重鎮の一人でもある。
 今回の市長選では冨士谷氏を自民、公明が推薦し、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長など自民党中央の要職も応援に入った。一方の小西氏は共産党の支援や、嘉田由紀子元知事、武村正義元蔵相の応援も受けたが、スタッフ不足から個人演説会も満足に開けないなど、組織力では冨士谷氏に大きく水をあけられていた。
 そんな冨士谷氏が敗れた原因は、事業費約95億円にのぼる新庁舎建設計画に対する市民の反発に尽きるだろう。昨年、小西氏が代表を務める「市民が考える庁舎の会」は建設の是非を住民投票で決着させようと、有権者の12%、8118人の署名を添えて住民投票条例の制定を求める直接請求を行ったが、市議会に否決された。市側は着々と工事の準備を進め、市長選を間近に控えた今年2月に起工式を行った。
 選挙期間中、小西氏は工事を中断して業者との契約を破棄し、コンパクトな庁舎計画にすると公約を掲げた。冨士谷氏は「新庁舎建設は10年以上に及ぶ合意形成を経て議会で議決された事業」として計画に理解を求めていたが、冨士谷氏の言う「合意形成」に市民が納得していたのかは、選挙結果が明らかにしている。
 この選挙結果にデジャヴを覚えた読者もいるのではないだろうか。3選を目指した国松善次知事(当時)が、新人の嘉田由紀子氏に敗れた2006年の知事選。新幹線栗東新駅を巡って県民の意見が割れる中、知事選告示直前に起工式を強行したことで、県民の反発を招き、3選確実視されていた国松氏が新駅凍結を訴えた嘉田氏に敗れるという大波乱だった。自民、公明、民主などが相乗りで現職の国松氏を推す中、嘉田氏を先頭に立って応援していたのが、党の方針に反した自民党県議の冨士谷氏だった。今回、同じような構図で有権者の信を失ったのは皮肉なめぐり合わせと言えないでもない。
 さて、小西氏の行政手腕はまったくの未知数。おまけに、議会与党は共産党など一部に限られる。公約通りに工事を中断すれば、違約金の発生などが想定される。とはいえ、これだけの大差で民意が明らかになった以上、計画の見直しは進めねばならない。業者や議会とのタフな交渉は避けられないが、小西氏を新市長に選んだ有権者も波乱が待つ新市政への覚悟が必要となる。

2018年04月16日 16:04 |


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