滋賀夕刊新聞社は滋賀県長浜を中心に政治、経済、文化の情報をお届けする新聞です。



企業倫理の欠如

 人生の晴れの舞台でもある成人式の当日になって、着物の販売やレンタル、着付けを手がける横浜市内の業者が営業を取り止め、数百人が予約通りに着物を着られない事態となった。業者「はれのひ」は昨年から資金繰りが悪化しており、今年に入ってからは社長と連絡が取れない状態になっていた。何十万円も支払って購入した着物が届かなかったり、預けておいた着物が行方不明になったりと、着付け会場では新成人の悲鳴が上がった。
 企業である以上、経営が傾けば倒産することもあるが、従業員への指示や顧客への説明もないまま、社長が行方をくらますのは、企業人としての倫理が欠如していると言わざるを得ない。事業継続が困難と判断した時点で告知していれば、成人式当日になって「晴れ着が届かない」と、新成人の悲鳴が上がることもなかった。店舗によっては新成人を困らせる訳にいかないと本社と連絡が取れないまま、従業員が独自に着付けを行った。
 被害者の多くは何十万という契約金をすでに支払っているが、その金銭被害に加え、一生に一度の晴れの日を台無しにされたという精神的苦痛はいかほどであろうか。
 昨年もよく似た事件があった。ゴールデンウイークを2カ月後に控えた3月、格安の海外ツアーを取り扱っている東京都の旅行会社「てるみくらぶ」が突然、営業を停止した。旅行当日になって顧客に「発券済みの航空券は利用できるかどうか現時点で確認できておりません」「滞在先のホテルにてトラブルが生じないことを確認できておりません」との突然のメールが届き、ツアーに申し込んでいた旅行者は飛行機に乗れなかったり、予約していたホテルに宿泊できなかったりと、散々な目に遭った。
 同社は経営が傾き自転車操業とも受け取れるツアーを企画していた。経営者は資金ショートを予測できていたにもかかわらず、ぎりぎりまでツアー客を募ったあげく、旅行者や予約客を放ったらかして破産した。結局、経営者は虚偽の決算書で銀行からの融資を騙し取ったとして逮捕された。
 はれのひ、てるみくらぶに共通するのは、資金繰りの悪化により事業継続が難しいことが分かっていたのに、事業資金を確保するために客に入金を急かしていた点だろう。結果として被害者を増やすこととなった。
 成人式の1年以上も前から晴れ着の予約を受け付けている和装業界にとって、消費者に不安を抱かせる今回の事件は他人事ではない。結局、こういった消費者の不安を解消し、信用を勝ち取れるのは長年の信頼であったり、地域密着性であろう。

2018年01月10日 09:48 |


過去の時評


しが彦根新聞
滋賀夕刊電子版
滋賀夕刊宅配版
滋賀夕刊デジタルトライアル
“新聞広告の資料請求、ご案内はこちらから"
 
長浜市
長浜市議会