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獣害、食べて減らす

 しし肉の脂ってこんなにも美味しいものなんだ。臭みもクセもない。先日、取材で訪れた余呉町内の飲食店で試食したジビエ料理に予想を裏切られた。
 猟師によるとジビエの美味しさは獲れた場所、獲り方、直後の処理方法の3つで決まるそうだ。獣たちが食べるのに困らないくらい豊かな自然があること。暴れたりストレスがたまったりする檻や罠での捕獲ではなく銃器による捕獲。血抜きや内臓の処理は素早く適切に。この3つの条件によって味が格段に変わるという。
 シカやイノシシによって農作物が荒らされ、特に山間部では農業意欲を喪失させる程の被害を生み出している。獣害駆除は農業施策のひとつに組み込まれ、長浜市内でも今年度、シカやイノシシなどすでに3000頭・羽が捕獲されている。この捕獲した鳥獣を食肉として流通させることができれば、農村の所得向上にも期待できる。
 狩猟によって捕獲した野生鳥獣の食肉を意味するフランス語「ジビエ」は、ヨーロッパ伝統の食文化を示す言葉だが、日本でも昔から野山の動物を貴重なたんぱく源として食してきた。山間部の年配の方に話を聞くと、子どものころにはウサギや野鳥を捕獲して食卓に並べたそうだ。
 昨今のジビエブームは、駆除した野生動物の命を無駄にすることなく大切に生かし、伝統の食文化を再発見するという点や、農村の所得向上という点から地域挙げての取り組みが欠かせないが、現実は獣肉を食卓に並ばせるまでのネットワークは乏しい。
 シカやイノシシの駆除には役所から報償金が出る。長浜市の場合は、シカがメス2万2000円、オス1万7000円、幼獣1万2000円(いずれも1頭当たり)、イノシシが1万5000円という具合。駆除した鳥獣を血抜きなどの処理を施し、加工所へ運んで解体・食肉加工という手間を考えると、駆除するだけのほうが利益効率が高そうだ。このため、駆除された動物、特にシカの多くは廃棄されている。もったいないことだ。
 捕獲から食肉加工までの連続性の確保、そして流通網の整備とジビエを扱う飲食店の開拓、最終的には消費者をつなぐネットワークの構築が欠かせない。そのためには、消費者がジビエに親しむ機会を増やし、需要を掘り起こすことが大切だ。

2017年12月18日 16:08 |


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