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一期一会と記憶力

 先日、ふらりと立ち寄ったフランス料理店。顔を出すのは半年ぶり3回目というのに、シェフもスタッフも「お久しぶりです」と声を掛けてくれた。「以前は5月にお見えでしたね」と。やはり接客業だけあってお客さんの顔を良く覚えているのだなと感心した。
 接客の心得には「一期一会」があるという。人と人との出会いは二度とは無いかもしれない、一生に一度の出会いであると心得て、亭主、客ともに誠意を尽くす心構えを説いた茶道の教えに由来し、店は客との出会いを大切に、客に無二の時間を過ごしてもらおうと、接客に専念する。ただ、これは何も接客業だけに言えることではなく、日常的な出会いや、大切な人とのお付き合いにも通じるところがあるだろう。
 小生も仕事でもプライベートでも多くの方に出会う機会に恵まれている。前出のフランス料理店には、最近知り合ったばかりの男性と出掛けた。インターネット上の気軽なやり取りから生まれた縁により、食事に繰り出すことになった。普段、まったく接点を持つことがない者同士の会話というのも、これまた無責任で刹那的、面白いものがある。ただ、二度と会う機会がないかもしれないので、一期一会を心している。
 さて、接客業のお客さんに対する記憶力だが、小生が最も驚いたのが、イタリア・ヴェネツィアの駅近くの庶民的な安宿での経験。10年ほど前に予約なしでふらっと宿泊し、レセプションやスタッフの気さくな対応、ロケーションが良かったのが印象に残って、その5年後くらいだろうか、再びヴェネツィアを訪れる機会があったことから、再び予約なしで顔を出した。「空き部屋ありますか?」と尋ねたところ、レセプションの男性が「5年ほど前にも来てくれましたよね」と話すではないか。パスポートを見せるどころか、名前も告げていないというのに。接客に長けた人の中には一度、顔を見たら忘れないという特殊能力の持ち主がいると聞くが、それにしても世界中から観光客が訪れるヴェネツィアにあって日本人なんてどれもよく似た顔であろうにと、そのレセプションの男性の記憶力に敬服したものだった。
 その点、小生は人の顔を覚えるのが得意とは言えず、出先で話しかけられて応答に戸惑うこともしばしば。先日もカフェで「新聞屋さんですよね」と声を掛けられたものの、誰なのかを思い出せず、「ヒントをください」と、何とも失礼な返事をしてしまった。何か良い方法がないものかと、いつも思案している。

2017年12月15日 16:37 |


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