滋賀夕刊新聞社は滋賀県長浜を中心に政治、経済、文化の情報をお届けする新聞です。



酵母の発見に乾杯

 世界最古のワイン醸造の痕跡がジョージア(旧グルジア)の遺跡で発掘された。国際研究チームが遺跡から出土した約8000年前の陶器の壺を科学分析した結果、明らかになったものだ。これまでは約7000年前のイランが最古の発見例だったが、研究員は「もっぱらワイン生産を目的としてユーラシア産の野生ブドウを栽培化した最古の事例だと確信している」と述べている。
 日本では縄文時代の遺跡から果実酒を造ったとみられる痕跡が発見されており、それが最古だと考えられている。また、スサノオがヤマタノオロチを退治する際、「八塩折之酒」で酔わせたエピソードが古事記に登場する。
 今回のジョージアでの発見からも、人類とお酒の長い付き合いをうかがい知れるが、人類がお酒を「嗜好品」として楽しんでいたと勘違いしてはいけないようだ。
 今春、「発酵文化人類学」(発行・木楽舎)を上梓した発酵デザイナー・小倉ヒラク氏は、同書の中で発酵と文明の関係を紐解いている。その一例として、「キリストの血」とも呼ばれるワインを紹介している。ワインはブドウ果汁を発酵させて造るが、元々は嗜好品ではなく、砂漠を生き抜くための安全な飲料として飲まれていたそうだ。根を深く張り地中から水を吸い上げるブドウの木を「天然のポンプ」として、その水分を凝縮させたブドウ果汁を発酵させて腐敗菌の侵入を防ぎ、保存性を高めたわけだ。中東の地で生まれたワインの製法は、西へと落ち延びたキリスト教徒がヨーロッパに持ち込んだ。
 不思議なもので、大豆は麹菌により味噌になり、ブドウはイースト菌(酵母菌)によってワインに、そして牛乳は乳酸菌でヨーグルトへと変化する。小倉氏は有用微生物による発酵によって貴重だった食材の保存性と携帯性を高めた結果、民族が大規模に移動することも可能になったと指摘している。
 さて、あす16日はフランス産ワインの新酒「ボージョレ・ヌーボー」の解禁日だ。フランス南部ブルゴーニュ地方のボージョレ地区で、その年に収穫されたガメイ種と呼ばれるブドウから作る新酒で、「ヌーボー」はフランス語で「新しい」を意味する。この地方では秋の収穫祭で捧げられたと言われている。
 解禁日は毎年11月第3木曜の午前0時と決まっている。日本は時差の関係で、本場のフランスよりも8時間早く楽しむことができる。人類による酵母の発見と発酵技術の活用、そして大地の恵みに感謝して「サンテ!(乾杯)」と、グラスを掲げたい。

2017年11月15日 16:15 |


過去の時評


しが彦根新聞
滋賀夕刊電子版
滋賀夕刊宅配版
滋賀夕刊デジタルトライアル
“新聞広告の資料請求、ご案内はこちらから"
 
長浜市
長浜市議会