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後妻業という仕事

 69歳の「小夜子」が結婚相談所を通じて知り合った高齢男性と、結婚と死別を繰り返し、遺産を手中に収める小説「後妻業」。大竹しのぶさん主演で「後妻業の女」として映画化され、注目を集めた。後妻になって遺産をかすめとることを「仕事」である「業」と形容する視点は新鮮だが、色仕掛けで資産家の高齢者を食い物にする女の存在はフィクションではない。
 小説の著者・黒川博行さんは結婚相談所などの取材を通して「資産狙いの再婚は間違いなくある」と断言している。黒川さん自身、この小説を書くきっかけとなったのが知人の姉妹からの相談による。姉妹の父は妻との死別後、91歳で結婚相談所に登録。そこで知り合った78歳の女性と交際することになるが、間もなくして死亡した。すると、女性は公正証書遺言をたてに遺産の独り占めを遺族に主張。姉妹が慌てて確認すると1億円もの預金通帳や有価証券が入った金庫は空っぽに。後の調査で、その女性の周辺では過去10年で4人の元夫が死亡していたことが判明したという。
 きのう7日、京都地裁に死刑判決を言い渡された筧千佐子被告(70)は「後妻業の女」そのものだろう。結婚相談所を介して知り合った高齢男性と交際し、青酸カリを飲ませて毒殺を繰り返していた。同時並行で複数の男性と交際し、「いつまでも変わらぬ愛を貫きます」などとメールで囁き、全財産を筧被告に譲るとの公正証書遺言が作成された後は、「用なし」と言わんばかりに殺害していた。
 黒川氏の小説をなぞるような筧被告の犯行に、「後妻業」という言葉が広く知れ渡ることとなったが、黒川氏は結婚相談所に登録する高齢男性に対し「なんぼでもひっかかります。女がその気になれば入れ食い状態」と雑誌のインタビューで指摘していた。
 人生の最期を寂しい1人ではなく、誰かしらのパートナーと一緒に歩みたいとの思いは否定できない。ゆえに、高齢者を対象にした結婚相談・お見合いサービスも盛んだ。殺されるのは論外として、人生の最期を一緒に過ごし、心に潤いを与えてくれるというのなら、たとえカネ目当てと分かっていても当事者は幸せかもしれない。どうせ、あの世におカネを持っては行けないのだから。

2017年11月08日 16:40 |


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