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「誠信交隣」を現代に

 高月町雨森ゆかりの儒学者で、対馬藩で「外交官」として活躍した雨森芳洲の関連資料を含む「朝鮮通信使の記録」がユネスコの「世界の記憶」に登録された。
 朝鮮通信使は秀吉の朝鮮出兵によって悪化した両国の関係を回復させるため、江戸幕府の要請に応じて200年間で12回、朝鮮から日本へ派遣された。対馬などを経由した後、大阪から江戸まで陸路を往復。鎖国により海外情報が乏しかった日本にとって、通信使の往来は異文化に触れる数少ない機会で、道中、各地で大歓迎された。
 ユネスコには日韓の市民団体が共同で申請したが、その過程では意見の対立もあったという。日本側は朝鮮との平和・友好に奔走し通信使の来日を実現させた対馬藩の初代藩主・宗義智の肖像画の登録を目指したが、韓国側は義智が朝鮮出兵に加わった人物だとして、拒絶。結局、日本側が取り下げることで、日韓の共同申請にこぎ着けたそうだ。日本側はその際、芳洲の「誠信交隣」に立ち返り、「相手を理解し、違いを尊重すべし」との精神を実践。侵略者の資料を共同申請しては国民の理解を得られないとの韓国側の事情に理解を示した。
 さて、今回の「世界の記憶」で日韓政府が火花を散らしたのが「従軍慰安婦」の登録申請だった。結局、先送りされたことで、日本政府は胸を撫で下ろしたが、韓国政府は「遺憾の意」を表明。同国メディアは日本政府の「妨害」があったとして批判している。
 2015年、中国が申請した「南京大虐殺文書」が登録され、中国政府の一方的な歴史観が「世界の記憶」として記録されることになった。これを受け、日本政府はユネスコの審査の密室性と欠陥を指摘し続けてきた。今回はその指摘が奏功して、当事者間で意見の食い違う「従軍慰安婦」の登録が見送られることとなった。
 ユネスコの、特に「世界の記憶」の政治利用は今に始まったわけではないが、国家や国民の対立感情を煽るような登録に、いったいどれほどの価値があるというのだろうか。
 隣国でありながら、過去の歴史の認識をめぐる対立が絶えない日韓。今、こうして両国の市民団体の共同申請により実現した「世界の記憶」登録を機に、改めて「誠信交隣」が紡いだ朝鮮通信使の歴史に注目し、隣国との友好を深められればと願う。

2017年11月01日 17:26 |


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