滋賀夕刊新聞社は滋賀県長浜を中心に政治、経済、文化の情報をお届けする新聞です。



定年後の生き方

 文芸春秋10月号の特集は「定年後の常識が変わった」と題し、定年後の時間をどうすれば楽しく有意義に過ごせるのか、識者や著名人の意見を満載している。
 そんな中、目を引いたのは「カレーハウスCoCo壱番屋」創業者・宗次徳二氏の「ボランティアは経営より面白い」と題したインタビュー原稿。
 同氏は20代でカレー屋を創業し、妻と二人三脚で全国チェーンに育て上げた。1000店舗達成のめどがついた2002年、会長職を退き、翌年、NPO法人「イエロー・エンジェル」を設立。「暮らしの中にクラシック」をモットーにクラシック音楽の普及に努め、2007年には私財28億円を投じて名古屋市内に「宗次ホール」を建設した。座席は310席と小規模だが、最高水準の音響設備を備え、客席とステージとの距離も近く、宗次氏曰く「全席が特別席」。
 また、宗次氏は音楽活動の予算が乏しい学校に楽器をプレゼントしており、これまでに1500点、累計で5億円分の楽器をプレゼントしてきたという。
 目下、生活拠点をホールの上にある自室に移し、そこで寝泊りしている。朝は午前4時55分に起きて、5時には事務所でデスクワークに取り掛かる。その後、ホール前の通りの清掃活動。「本当に気持ちの良い汗をかけますよ。本気でやる掃除は、座禅以上に精神を高める効果がある」と解説している。夜はリサイタルがある際は午後11時くらいまで事務所に詰めるという。
 なぜ、クラシック音楽のためにこれほど尽くせるのだろうか。同氏は「私自身が貧しい生活を送っていた学生時代、つらさを忘れさせてくれたのが音楽だったからです」と話している。
 発売4カ月で20万部のベストセラーとなった「定年後」(中公新書)の著者・楠木新氏は「経済的に十分余裕のある定年退職者でも、何をしていいのかわからず戸惑っている人が実に多い。定年後に働かなくて済む余裕があるからこそ困っている。自分の心安らぐ居場所がないのです」と指摘する。
 金銭的余裕の有り無しにかかわらず、定年退職後の居場所をどう確保するのか。とてつもなく長い自由時間を持て余すことなくいかに有効に使うのか。宗次氏のようにボランティアに打ち込んだり、農業に取り組んだり、人材不足の福祉施設で働いたり、特集を読むと選択肢はたくさんあるようだ。

2017年10月18日 16:03 |


過去の時評


しが彦根新聞
滋賀夕刊電子版
滋賀夕刊宅配版
滋賀夕刊デジタルトライアル
“新聞広告の資料請求、ご案内はこちらから"
 
長浜市
長浜市議会