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写真が語る世界

 立命館大学びわこ・くさつキャンパスで、10月1日まで「世界報道写真展2017」が開かれている。主に昨年1年間に撮影された写真を対象とする世界報道写真コンテストの入賞作品を展示。60回目を迎える今年は125の国と地域から5034人のプロカメラマンが計8万0408点を応募し、同展では入賞45人の作品を並べている。
 シリア内戦の惨劇を捉えた写真が心を打つ。アサド政権軍の空爆によって顔から血を流しながら痛みに耐える子どもの姿、がれきの街と化した激戦地アレッポで赤ん坊を大切に抱えて運ぶ男たち、過激派組織イスラム国(IS)から逃れて避難民キャンプで過ごす子どもの姿—。
 少しでも良い暮し、安全な暮しを求めて、海を渡ってヨーロッパを目指すアフリカや中東の人々を捉えた作品は、海に落ちてパニック状態に陥る男性の姿や、船倉で窒息死した家族を前に悲嘆にくれる難民を生々しく伝えている。
 このほか、親ロシア分離独立派によって占拠されたウクライナ東部ドネツク州で平和を脅かされる住民の生活、インターネットや衛星テレビを介して欧米の文化が流れ込むイランの現在、放置された魚網を体に絡めたまま泳ぐアオウミガメなど、今、世界で起きている現実を、物言わぬ写真が語りかけている。
 写真展の大賞はAP通信所属のブルハン・オズビリジ氏が選ばれた。同氏はトルコの首都アンカラで開かれた写真展で、22歳の警察官がロシアの駐トルコ大使を射殺し、手を上げて叫び声をあげる緊迫した瞬間をレンズに捉えた。犯人の警察官はシリア・アレッポ空爆へのロシア関与に抗議して犯行に及び、「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫んだ後、「アレッポを忘れるな。シリアを忘れるな」とトルコ語で続けた。
 ベテランカメラマンのオズビリジ氏は写真展を見に行くという友人に会うために会場に足を運んだ。偶然だった。無差別殺戮の可能性もあったが、同氏は「私に何ができ、何ができないのか、を冷静に判断した。冷静でいることを心掛け、私の仕事を続けた。至って悲惨な出来事であった」と同展にメッセージを寄せている。
 ロシアはアサド政権軍を、トルコは反体制派を支援して対立関係にある一方で、分離独立を目指すクルド人の勢力拡大を懸念して協調の動きも見せる。周辺国それぞれの利害が絡み合い、たった一つの内戦さえ、国連に解決する能力がない。
 5年が経過するシリア内戦の犠牲者は33万人。うち3分の1が民間人。全人口の4分の1にあたる500万人以上が難民として国外に逃れている。

2017年09月27日 16:45 |


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