滋賀夕刊新聞社は滋賀県長浜を中心に政治、経済、文化の情報をお届けする新聞です。



2017年09月29日

トップの権謀術数

 安倍晋三首相による突然の衆議院の解散、小池百合子東京都知事による希望の党の結成、そこへの民進党の事実上の合流。この一連の流れに薄気味悪さを感じるのは小生だけではないはずだ。民主的な議論や手続きを経ることなく、ただトップの独断と専行によって、有権者が選んだ政治家が振り回されていることに。
 安倍首相は森友・加計問題を追及するために野党が召集を申請した臨時国会の冒頭に衆議院を解散させた。その理由について消費税の税収の使い道を有権者に問うと言う。2019年10月に税率を10%の引き上げることで5兆円の税収を得られる。当初は1兆円を介護などの社会保障費に、4兆円を借金返済にあてる計画だったが、安倍首相は唐突に教育無償化を打ち出し、借金返済に充てるうちの2兆円を財源とすることを明らかにした。教育無償化は有権者の共感を得やすい政策だが、財政再建は先送りとなる。現役世代が楽をして、子や孫の世代にツケを残すことになりかねない。この唐突の方針転換に党内で丁寧な議論が行われた形跡はない。
 小池百合子東京都知事が結成した希望の党。自民党を抜けた若狭勝氏と民進党を出た細野豪志氏が政策などをすり合わせていたが、小池氏が唐突に「リセット」して党の方針を決めてしまった。「寛容な改革保守政党」を目指し、目玉は原発ゼロという。
 希望の党への事実の合流を決めたのは民進党の前原誠司代表だ。小池氏との直談判で方針を決めてから、両院議員総会で「もう一度、二大政党をつくるために名を捨てて実を取る」と強調した。「改革保守」を掲げる希望の党への合流は、右も左も揃う民進党の事実上の瓦解を意味する。希望の党に公認を申請しない、もしくは公認を得られない前職は路頭に迷うこととなる。
 この国の政治には強力なリーダーシップは欠かせない。一連の動きをダイナミックな展開と言えば聴こえは良い。しかし、トップの権謀術数に政治家やそれを支える党員が追従し、振り回されている現状を見るにつけ、トップダウンでなくボトムアップこそが民主主義の本質ではなかったのかと、問題提起したくなる。

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2017年09月27日

写真が語る世界

 立命館大学びわこ・くさつキャンパスで、10月1日まで「世界報道写真展2017」が開かれている。主に昨年1年間に撮影された写真を対象とする世界報道写真コンテストの入賞作品を展示。60回目を迎える今年は125の国と地域から5034人のプロカメラマンが計8万0408点を応募し、同展では入賞45人の作品を並べている。
 シリア内戦の惨劇を捉えた写真が心を打つ。アサド政権軍の空爆によって顔から血を流しながら痛みに耐える子どもの姿、がれきの街と化した激戦地アレッポで赤ん坊を大切に抱えて運ぶ男たち、過激派組織イスラム国(IS)から逃れて避難民キャンプで過ごす子どもの姿—。
 少しでも良い暮し、安全な暮しを求めて、海を渡ってヨーロッパを目指すアフリカや中東の人々を捉えた作品は、海に落ちてパニック状態に陥る男性の姿や、船倉で窒息死した家族を前に悲嘆にくれる難民を生々しく伝えている。
 このほか、親ロシア分離独立派によって占拠されたウクライナ東部ドネツク州で平和を脅かされる住民の生活、インターネットや衛星テレビを介して欧米の文化が流れ込むイランの現在、放置された魚網を体に絡めたまま泳ぐアオウミガメなど、今、世界で起きている現実を、物言わぬ写真が語りかけている。
 写真展の大賞はAP通信所属のブルハン・オズビリジ氏が選ばれた。同氏はトルコの首都アンカラで開かれた写真展で、22歳の警察官がロシアの駐トルコ大使を射殺し、手を上げて叫び声をあげる緊迫した瞬間をレンズに捉えた。犯人の警察官はシリア・アレッポ空爆へのロシア関与に抗議して犯行に及び、「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫んだ後、「アレッポを忘れるな。シリアを忘れるな」とトルコ語で続けた。
 ベテランカメラマンのオズビリジ氏は写真展を見に行くという友人に会うために会場に足を運んだ。偶然だった。無差別殺戮の可能性もあったが、同氏は「私に何ができ、何ができないのか、を冷静に判断した。冷静でいることを心掛け、私の仕事を続けた。至って悲惨な出来事であった」と同展にメッセージを寄せている。
 ロシアはアサド政権軍を、トルコは反体制派を支援して対立関係にある一方で、分離独立を目指すクルド人の勢力拡大を懸念して協調の動きも見せる。周辺国それぞれの利害が絡み合い、たった一つの内戦さえ、国連に解決する能力がない。
 5年が経過するシリア内戦の犠牲者は33万人。うち3分の1が民間人。全人口の4分の1にあたる500万人以上が難民として国外に逃れている。

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2017年09月25日

新党は旗幟鮮明に

 風雲急を告げる解散・総選挙。関東では小池百合子東京都知事の影響下にある新党が台風の目となり、他党から続々と政治家が集まっている。
 衝撃的だったのは自民党の福田峰之内閣府副大臣の合流。現職の副大臣が離党するなんて「前代未聞」のことだ。とはいえ、この福田氏は神奈川8区を選挙区とし、2005年の初当選以来、いずもれ民進党の江田憲司氏に敗れ続け、これまでの当選3回は比例区での復活だった。ゆえに、新党合流は新党への共感というより、自らの選挙事情ということだ。
 また、「日本のこころ」の中山恭子代表(参院比例)も新党の参加への意向を示しているという。このほか、民進党の松原仁元国家公安委員長も離党し、新党への参加を表明した。
 支持率が低迷し続ける民進党からの合流組は、沈みかけた船から逃げ出したと見ることができるし、自民党からの合流は選挙区の事情だろう。7月の都議選の結果を見ると、自民党の現職議員が震え上がるのも理解できる。だが、いずれも国会議員としての身分を維持するための防衛策であり、有権者はその行動に疑問符をつけているかもしれない。
 そもそもこの新党は自民や民進、共産党などと、どこが違って、どのような政策と理念を掲げるのか、まだ不明だ。自民党に対する姿勢や距離感をどう取るのか、旗幟が鮮明でないまま、政治家が続々と集っている。「政治は数」とは言うものの、右から左まで希望者を拒むことなく受け入れるのであれば、単なる選挙互助会と有権者に見透かされる。
 2012年の衆院選。小沢一郎氏に口説かれた元滋賀県知事の嘉田由紀子氏が党首となって「日本未来の党」を結成した。「国民の生活が第一」「減税日本・反TPP・脱原発を実現する党」「みどりの風」など小さな左派系の政党が合流したが、結成当初から選挙互助会などと揶揄され、現有61議席を9議席へと激減させる大惨敗を喫した。嘉田氏は小沢氏によって排除されて、日本未来の党は約1カ月で姿を消した。
 選挙のたびに野党が離合集散し、「第3極」なる政党の興亡が繰り返され、結果として野党の衰退、自民党の一強につながった。新党が自民一強の国政に新鮮な空気を送り込むことを期待せずにはいられないが、自民党でもない、民進党でもない、第3の受け皿としてどこまで機能するのか。まずは旗幟を鮮明にすべきだろう。

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2017年09月22日

絶妙の23・4度

 朝晩がすっかり寒くなり、夜の合唱は秋の虫が主役に取って代わった。街路樹の葉も少しずつ緑を失って見え、本格的な秋の到来を感じる。
 四季の移ろいを感じられるのも地球が23・4度の傾きを保っているからだと中学校の理科の授業で教わった。地軸が傾いたのは、約46億年前、誕生したばかりの地球に巨大な天体が衝突したことによる、という説が有力だ。この衝突は「ジャイアント・インパクト」などと呼ばれるが、この衝突の際の破片が集まってできたのが月だと考えられている。そして、その月の引力のおかげで、23・4度という傾きが維持されているそうだ。
 地軸の傾きは地球に豊かな季節の変化をもたらす。例えば夏至は北に行くほど昼が長くなり、北緯66・6度以上なら一日中太陽が沈まない。逆に南緯66・6度より南は一日中太陽が昇らない白夜や極夜となる。赤道付近は昼と夜の長さは一年中変わらないため「四季」はないが、大気や海流の影響から雨季や乾季が存在する。
 もしも、地軸が傾いていなかったら、つまり自転軸が公転面に対して垂直だったら、どうだろうか。いつも昼と夜の長さは一定で、太陽の黄道も上下することなく、いつも同じ高さ。きっと季節の変化は少ないだろう。
 逆に、自転軸が公転面に対して横倒しなら、長期間、太陽が沈まない地域、もしくは太陽を見ることがない地域ができ、前者は灼熱、後者は極寒の地となる。ちなみに天王星は98度の傾きのため、ほぼ横倒しの状態。おまけに公転周期が84年もあるから、極地に近い部分は42年ごとに昼と夜が入れ替わる格好となる。
 地球は23・4度という絶妙の傾きが維持されているおかげで、程よい季節変化を楽しむことができると思うと、その奇跡を感じずにはいられない。
 あす23日の「秋分の日」は地球の自転軸が太陽に対して並行になるから、昼と夜の長さがおおよそ同じとなる。以降、昼は夜に比べて短くなり、寒さがいよいよ増すこととなる。

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2017年09月20日

解散の意義知りたい

 安倍晋三首相が来週の28日の臨時国会冒頭にも衆議院を解散させる方針を固めたそうだ。「なぜ、この時期に?」というのが、国民の多くの反応だろう。
 発足間もない前原新執行部の民進党が離党者続出で混迷していることや、小池百合子東京都知事と連携する新党が間もなく立ち上がる政治情勢を勘案すると、野党がモタモタしているうちに解散に打って出たほうが、与党が選挙を有利に戦えるという計算は容易に想像できる。
 ただ、28日開会の臨時国会は森友・家計学園問題を追及する野党の求めに応じて、法律に基づいて安倍首相が召集したもの。にもかかわらず、万一、冒頭に解散するというのであれば、国民は「問題から逃げた」と感じるだろう。
 7月2日の都議選で自民党は惨敗した。その時、安倍首相は「安倍政権の緩みがあったとの厳しい批判がある」「反省すべき点は反省し、謙虚に、丁寧にやるべきことはしっかりと前に進めていかなければならない」などと語っていたが、あの弁はいったい何だったのか。
 安倍首相は先輩に学んだのかもしれない。過去の首相も国会冒頭で解散した例を持つ。例えば、1966年に佐藤栄作政権は「黒い霧事件」で政治不信が高まる中、その払拭を狙って解散。自民党が過半数を獲得し、信任を得た。1986年の中曽根康弘政権は「死んだふり解散」。解散するそぶりを見せないまま臨時国会を召集し、いきなり解散。準備が整っていなかった野党は惨敗した。
 野党も準備不足を嘆いていられない。与党のトップである首相が解散権を持つ以上、日ごろから選挙への準備を怠ってはならないし、何より選挙をしなければ議席を増やすことも、政権を奪取することもできない。
 朝日新聞の天声人語(18日)が、1984年のロス五輪の柔道決勝でエジプト選手が山下康裕選手の痛めた右足を攻めなかったフェアプレー精神を取り上げたうえで、民進党が「弱っている時」を選んで攻めようとする首相に「しらけてしまう」と指摘している。一方で、産経新聞の産経抄(19日)は「野党の弱みも攻められないようなお人よしには、首相が務まるとは思えない」と返している。
 今度の選挙は自民党による自民党のための選挙、いや安倍首相による安倍首相のための選挙と言えるのかもしれない。しかし、党利党略の解散・総選挙も、国民は民主主義のコストとして受け入れるしかない。
 安倍首相には解散の意義を丁寧に説明することが求められると同時に、我々有権者も解散を機に、憲法改正や消費増税など各党の政策を吟味したい。

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2017年09月13日

20年の任務完了へ

 1997年に始まった約20年の孤独な任務がいよいよ完了を迎える。米航空宇宙局(NASA)の土星探査機「カッシーニ」は日本時間の15日夜、土星の大気圏に突入し、燃え尽きる。
 土星の輪や衛星を発見した天文学者・カッシーニ(1625〜1712年)にちなんで名付けられた探査機は1997年10月に米フロリダ州から打ち上げられた。金星や地球の近くを飛行して引力を利用する「スイングバイ」により燃料を節約しながら木星を目指し、約7年かけて土星の周回軌道へ突入した。未知の衛星を発見したり、土星の巨大嵐を観測したりと土星のデータを送り続けてきた。
 衛星エンケラドスの観測では、氷に覆われた衛星から水蒸気や氷が宇宙空間に噴出していることが分かり、生命の存在の可能性も明らかになった。
 また、分離した小型探査機「ホイヘンス」は土星最大の衛星タイタンに着陸し、液体のメタン、エタンで出来た海などを発見した。
 13年間にわたる土星観測を終える前、12日にはタイタンに最接近した。これまで100回以上接近しているが、今回が最後ということもあり、研究チームは「別れのキス」と呼んだ。最終任務となる15日夜は燃え尽きるぎりぎりまで大気を観測し、データを地球に向けて送信する。
 あと10日ほどで秋分日。以降、昼より夜のほうが長くなり、涼しさも増す。虫の音を聞きながら天体観測をするのも秋の夜長の過ごし方かもしれない。今の時期、土星は日没後すぐに南の空の低い位置で観測できる。0等星なので肉眼で簡単に見つけられる。また、土星が大きく傾いて見えるので輪が観測しやすい。大口径の望遠鏡でなくても観測できそうだ。

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2017年09月11日

ライバルがいてこそ

 彦根市出身の桐生祥秀選手(21)=東洋大4年=が9日に福井県営陸上競技場で行われた日本学生対校選手権100㍍決勝で9秒98の日本新記録を叩き出し、日本人初となる9秒台を達成した。
 桐生選手は洛南高3年の2013年に10秒01を記録し、話題を集めた。その後、米国で9秒87をマークしたものの、追い風参考記録のため、公認記録での9秒台には届いていなかった。
 4年半近く9秒台への壁を破れず足踏み状態が続き、その間、ライバルが次々と台頭した。今年7月の日本陸上競技選手権では、サニブラウン・ハキーム選手、多田修平選手、ケンブリッジ飛鳥選手に次ぐ4位となり、世界陸上選手権では100㍍の代表落ちという辛酸を舐めることとなった。
 日本人初となる9秒台への期待を一身に背負い続けてきた桐生選手の精神的プレッシャーは凡人の想像を絶することだろう。大会で10秒0台の好タイムであっても9秒台を期待する観衆からため息が漏れることもあったそうだ。
 そんな重圧を跳ね除けての偉業達成は、桐生選手の肉体と精神の強靭さに加え、ケンブリッジ選手やサニブラウン選手らライバルの存在も欠かせなかったのではないだろうか。
 9秒台をマークした歴代選手は桐生選手で126人。その多くがアメリカやジャマイカなど北中米に集中し、歴代1位は誰もが知るウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)の9秒58。アジア勢はたったの4人だ。
 今後、桐生選手がコンスタントに9秒台をマークできるかが注目されるが、同時にライバルが奮起し、日本の短距離界が盛り上ることを期待したい。3年後に迫った東京五輪。陸上男子100㍍決勝のスタートラインに桐生選手だけでなく複数の日本人が立っていることも夢ではない。

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2017年09月08日

メンデルの法則

 植物学者でもあったオーストリアの修道師がエンドウ豆の交配実験から導き出した遺伝の法則を、修道師の名前をとって「メンデルの遺伝の法則」と呼ぶ。
 メンデルは実験で、黄色と緑色のエンドウ豆を交配させたところ、すべて黄色のエンドウ豆が出来た。しかし、次の世代は3対1の割合で黄色と緑色のエンドウ豆が出来た。この実験からメンデルは遺伝特徴を顕在化させる優性遺伝子、潜在化してしまう劣性遺伝子があることを仮定した。
 一般に優性遺伝子を英語の大文字、劣性遺伝子を小文字で表す。対となる染色体を「AA」と「aa」と仮定して交配させた場合、子は「Aa」「aA」のとなり、いずれも優性遺伝子「A」の特徴が顕在化する。さらに、子の世代同士を掛け合わせると孫世代は「AA」「Aa」「aA」「aa」の4パターンが出現し、4分の1の割合で「a」という親世代の特徴が顕在化するわけだ。
 遺伝学会で長年、懸案となっていたのは「優性遺伝子」「劣性遺伝子」との表現だ。これはメンデルの遺伝学の訳語として使ってきたが、優性遺伝子が劣性遺伝子に比べて優れているとか、またその逆に劣性遺伝子が優性遺伝子に劣っているわけではない。単に遺伝特徴が顕在化するか、潜在化するかの違いだ。
 しかし、その語感から誤解する人が少なくなく、例えば「劣性遺伝病」などと診断されれば、マイナスイメージを感じてしまう。
 この問題については、今春で退任した長浜バイオ大の三輪正直前学長が3月の最終講義の際にも、言い直す必要があると提言していたところだが、日本遺伝学会は先日、優性を「顕性」、劣性を「潜性」と言い換えることを明らかにし、新たな用語集を出版することになった。この実態に則した言い換えに、遺伝学界の長年のもやもやも晴れるだろうし、誤解を解くことにつながる。
 ちなみに人間の血液型もメンデルの法則に従って遺伝する。A型の遺伝子型は「AA」と「AO」、B型は「BB」と「BO」、O型は「OO」、AB型は「AB」のみ。以上から「A」「B」が「顕性」(優性)、「O」が「潜性」(劣性)であることが分かる。両親のどちらかがAB型ならO型の子が生まれることはない。また、両親がともにA型ならB型やAB型の子は生まれないし、両親がO型なら子も必ずO型となる。これらの法則に合わない場合は…、血液検査のミスなどが考えられる。

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2017年09月06日

民進党の不安定感

 民進党の不安定感を心配するお人好しは、もはや少数派かもしれない。
 新しく党代表に前原誠司氏を選んだ民進党は5日の執行部人事をめぐって混乱した。前原氏は人事の目玉として山尾志桜里氏を党幹事長に内定していたにもかかわらず、周囲の反対に押し切られて断念。結局、有力候補として名の挙がっていた大島敦氏が幹事長に就任することで党内は落ち着いた。
 民主党と維新の党の合流により民進党が誕生したのは2016年3月のことだった。政権交代可能な2大政党制の一翼を担う野党への脱皮を試みたわけだが、党内部の結束力には疑問符がつく。結党からわずか1年半だが、党代表は岡田克也氏、蓮舫氏に続き、前原氏で早くも3人目。政権与党の自民党が安倍晋三氏を総裁として安定しているのと比べると、民進党の不安定さが際立つ。
 7月の東京都議選。小池百合子都知事率いる「都民ファーストの会」の躍進と自民党の敗北は、国民が自民党に対抗しうる受け皿を求めていることを如実に示したが、民進党は離脱者が相次いだ影響で当選はたった5議席という大惨敗だった。共産党都議団の約4分の1しかない。民進党が有権者の期待に応えられていないことは明白だ。
 「人事のことでご心配をおかけしていることに、まずおわび申し上げたい」—。都議選の惨敗を受けて蓮舫氏が辞任、そして新しい執行部の発足とともに党勢回復へ気勢を上げるべき5日の両院議員総会で、前原氏から最初に発せられた言葉は謝罪だった。
 前原氏は代表就任の翌日に山尾氏を幹事長とすることを内示したが、当選2回の山尾氏の手腕を疑問視する声が党内で上がったことで撤回へと追い詰められた。幹事長というのは党の要である。それを内定後に撤回するのだから、民進党の不安定感には目も当てられない。
 とはいえ、政権交代を誘う野党が不在なままでは政権与党に驕りが出る。それは加計学園問題でも明らかだ。国民の支持を得られない民進党が今後も党勢を回復させる気概も覚悟もないのなら、いっそ解体して地域政党「都民ファーストの会」などと連携した新たな野党を立ち上げるべきではないか。

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2017年09月04日

手詰まりの北朝鮮対策

 ナチスドイツがベルリン条約を破棄して再軍備をしたとき、第1次世界大戦後の厭戦思想に包まれたヨーロッパ諸国は、これを黙認した。オーストリアが併合されても黙認した。ヒトラーがチェコスロバキアの要衝ズデーテン地方の併合を求めた際にも、平和主義を口実にドイツと英仏伊の4カ国はチェコスロバキアの意向を無視して、併合を認めた。
 ヨーロッパをリードする英仏は第2次世界大戦の勃発を恐れて宥和政策に徹し続けた。増長したヒトラーはポーランドにも侵攻した。あらかじめソ連と不可侵条約を結び、ポーランドの土地を分け合った。ここに来てようやく英仏が重い腰を上げたが、パリにハーケンクロイツの旗がひらめき、ロンドンは大規模な空襲で甚大な被害を受けた。
 歴史に「if」はないが、もし、英仏をはじめとする国際社会がヒトラーに対して早い段階で圧力を掛けていれば、ナチスドイツの暴走を最小限に食い止められたかもしれない。
 北朝鮮は3日、地下の核実験場で大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載する水爆の実験に成功したと発表した。7月には2回にわたってICBMの発射実験を行っており、アメリカを脅かす核兵器の開発がいよいよ最終段階に入ったことを国際社会に印象付けさせた。
 国際社会による経済制裁はどこ吹く風か、北朝鮮は敵国であるアメリカからの自衛手段として核兵器開発を最優先し、特に金正恩体制となってからはお目付け役的存在の中国を無視する形で前のめり。核開発能力は向上する一方だ。
 中国は中国で、北朝鮮の核開発に反発しながらも、経済制裁の強化には及び腰だ。最も有効な経済制裁は北朝鮮の生命線である石油の禁輸だ。北朝鮮は瞬く間に干上がり、正恩体制に大打撃を与えることだろ。しかし、正恩体制の揺らぎは大量の難民発生や朝鮮半島でのアメリカの影響力の拡大が懸念される。中国の利益には繋がらないから、石油の禁輸は見送っている。
 北朝鮮に宥和的なもう一つの国はロシア。こちらは米国との駆け引きに北朝鮮を利用している。内戦の解消を口実にシリアに軍事介入し、中東で影響力を拡大させたのと同じ思考。国際社会が北朝鮮への経済制裁を強化すればロシアはその分、北朝鮮への輸出を増やし、影響力を高める。現に、北朝鮮への石油輸出量は中国と肩を並べている。
 国連安保理で拒否権を持つ中露の常任理事国2カ国が北朝鮮に宥和的であるがゆえに安保理には期待できない。
 最も平和的解決である米朝の話し合いは、核兵器の開発をストップさせたいアメリカと、在韓米軍の縮小・撤去を求める北朝鮮との間で取引が成立する気配はない。
 乱暴な手段、つまり米軍によるピンポイントの軍事攻撃も指摘されるところだが、韓国や日本が報復攻撃を受けて全面戦争につながる恐れもある。
 いよいよ手詰まりとなっている北朝鮮の核開発への対応。ヒトラーの暴走を許したように、周辺国が自国の利益を天秤にかけて問題を放置すれば、暴発した際の被害は計り知れない。

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2017年09月01日

どこ行く財政再建

 政府に寄せられた2018年度予算の概算要求額が100兆円の大台を超える見通しとなった。概算要求は、各省庁が来年度1年間の政策を実施するのに必要な経費をまとめ、予算を所管する財務省に送付することで、ようは見積もり書の提出である。8月31日が締切日となっている。
 一般会計の要求額は101兆円程度で、4年連続で100兆円を突破した。財務省はこれから査定を行い3兆円程度を絞り込む方針だ。
 最も大きなウェイトを占めるが厚生労働省で、社会保障費の増加を背景に17年度当初比2・4%増の31兆4298億円。続いて多いのが借金の元利支払いにあたる国債費23兆8214億円。防衛省はイージス艦搭載の改良型迎撃ミサイル取得などを盛り込み過去最大の5兆2551億円(17年度当初比2・5%増)となった。
 予算要求額からは日本が直面する課題がうかがえる。厚生労働省の要求総額の増大は、近年の少子高齢化社会の進展が原因。高齢者の介護や医療、年金に加え、少子化対策のための各種施策への出費が増えている。
 国債費が歳出の4分の1程度を占めていることも、1000兆円を超す借金を抱える日本の赤字財政を代弁している。ちなみに国債費23・8兆円のうち、9・2兆円は利払いに消える。
 4年連続の増加となった国防費は、中国の覇権主義や北朝鮮の核開発、ミサイル発射など、極東の安全保障の揺らぎが原因とみることができる。
 さて、100兆円を超える予算要求が出されるからには、それに釣り合う税収があると信じたいが、2016年度の税収は55兆4686億円に過ぎない。税収の倍近い出費を各省庁が求めている実態に、財政再建の本気度を問いたくなる。
 政府は2020年までに基礎的財政収支「プライマリーバランス(PB)」を黒字化させると公約を掲げていたが、7月の経済財政諮問会議で示された試算では8兆円程度の赤字なると見込んだ。PBは借金に頼らずに政策経費をまかなえているかを示す指標。政府は経済成長による税収増と消費増税での黒字化実現を目指しているが、それは財布の紐をしっかり締めることが前提のはず。
 しかし、安倍政権の支持率が低下している今、今後1年3カ月以内に行われる総選挙を想定すると、政府が歳出を抑制するとは考えにくい。選挙前は政権与党への支持を期待して財布の紐を緩ませがちだからだ。結局、増税を繰り返しても、財政再建は先送りとなる。

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