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獺祭

 お酒好きなら誰もが知る日本酒の逸品「獺祭」は、字のとおりカワウソのまつりと書く。中国ではカワウソが川で捕まえた魚を岩の上や岸に並べて食べる習性を祭祀に例えて「獺祭」と呼んだそうだ。晩唐期の詩人・李商隠は作品を短冊に書いて書斎に並べたことから、自らを「獺祭魚」と号した。正岡子規も李商隠への憧れから「獺祭書屋主人」と称し、子規の命日(9月19日)は「獺祭忌」とも呼ばれる。
 大津市の天神川沿いに立つ松尾芭蕉の句碑には「獺の祭見て来よ瀬田の奥」と刻まれている。芭蕉がこの句を詠んだのは1690年のこと。当時、琵琶湖や瀬田川に数多くのカワウソが生息していたことがうかがえる句でもある。
 しかし、そのカワウソは毛皮目当ての乱獲によって激減した。彦根藩士・藤居重啓が1815年にまとめた「湖中産物図證」には酒樽を使った罠でカワウソを捕獲していたことが記されている。乱獲から逃れたカワウソも水質悪化や護岸工事によって姿を消した。日本で野生のカワウソが最後に確認されたのは高知県の1979年だった。環境省は2012年、ニホンカワウソの絶滅を宣言した。
 その野生のカワウソが38年ぶりに国内で発見された。琉球大学の伊沢雅子教授が17日、今年2月に長崎県の対馬で撮影したカワウソの動画を発表した。約20年間、ツシマヤマネコなどの生物調査を行っていたところ、無人カメラにカワウソが映っているのを確認した。環境省が現地で採取したふんなどからDNA型を調べた結果、カワウソのものと断定し、少なくとも2体以上が生息しているそうだ。
 さて、これらのカワウソがニホンカワウソの生き残りなのか、それとも韓国の離島に生息するユーラシアカワウソが流れ着いたものなのかは今後の調査が待たれるところだが、豊かな自然が残る対馬でニホンカワウソが人目を忍んでひっそりと生き残っていたのであって欲しいと願う。そして、できるなれば、カワウソの祭祀がどんなものなのか、見てみたい。

2017年08月18日 17:32 |


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