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2017年08月18日

獺祭

 お酒好きなら誰もが知る日本酒の逸品「獺祭」は、字のとおりカワウソのまつりと書く。中国ではカワウソが川で捕まえた魚を岩の上や岸に並べて食べる習性を祭祀に例えて「獺祭」と呼んだそうだ。晩唐期の詩人・李商隠は作品を短冊に書いて書斎に並べたことから、自らを「獺祭魚」と号した。正岡子規も李商隠への憧れから「獺祭書屋主人」と称し、子規の命日(9月19日)は「獺祭忌」とも呼ばれる。
 大津市の天神川沿いに立つ松尾芭蕉の句碑には「獺の祭見て来よ瀬田の奥」と刻まれている。芭蕉がこの句を詠んだのは1690年のこと。当時、琵琶湖や瀬田川に数多くのカワウソが生息していたことがうかがえる句でもある。
 しかし、そのカワウソは毛皮目当ての乱獲によって激減した。彦根藩士・藤居重啓が1815年にまとめた「湖中産物図證」には酒樽を使った罠でカワウソを捕獲していたことが記されている。乱獲から逃れたカワウソも水質悪化や護岸工事によって姿を消した。日本で野生のカワウソが最後に確認されたのは高知県の1979年だった。環境省は2012年、ニホンカワウソの絶滅を宣言した。
 その野生のカワウソが38年ぶりに国内で発見された。琉球大学の伊沢雅子教授が17日、今年2月に長崎県の対馬で撮影したカワウソの動画を発表した。約20年間、ツシマヤマネコなどの生物調査を行っていたところ、無人カメラにカワウソが映っているのを確認した。環境省が現地で採取したふんなどからDNA型を調べた結果、カワウソのものと断定し、少なくとも2体以上が生息しているそうだ。
 さて、これらのカワウソがニホンカワウソの生き残りなのか、それとも韓国の離島に生息するユーラシアカワウソが流れ着いたものなのかは今後の調査が待たれるところだが、豊かな自然が残る対馬でニホンカワウソが人目を忍んでひっそりと生き残っていたのであって欲しいと願う。そして、できるなれば、カワウソの祭祀がどんなものなのか、見てみたい。

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2017年08月04日

湖北の里親不足

 育児放棄や虐待、親との死別、経済的困窮などの理由で、親と一緒に暮らせない子どもは国内に約4万6000人いる。その子どもたちの受け入れ先は乳児院や児童養護施設などの施設が8割を占め、里親は2割に満たない。
 しかし、施設で子どもたちが集団生活を送るよりも、家庭的な環境での生活の方が子どもの自己肯定感を育み、その家庭生活の経験が将来家庭を築くうえでのモデルになるとされている。ゆえに、子どもの健康な心身の成長には家庭に近い環境で暮らすことが大切とされている。
 このため、欧米では施設養護ではなく里親による養護が主流だ。例えば女優のアンジェリーナ・ジョリーさんは映画の撮影でカンボジアを訪れた際に人道問題に関心を抱き、これまでにカンボジア、エチオピア、ベトナムの子どもを養子として引き取っている。
 昨年、児童福祉法が改正され、すべての子どもを養子縁組や里親などで受け入れる「家庭養護」を原則とすることが決まった。そして、厚生労働省は7月31日、就学前の子どもの75%以上、就学後の子どもの50%以上を里親に担ってもらうという新たな目標を公表した。これまで2割に満たなかった里親での養護を大幅に増やそうという児童養護政策の大転換であり、ようやくグローバルスタンダードに近づきつつあると感じる。
 ただ、日本特有の課題は産みの親の親権が強すぎることだ。虐待や育児放棄をする無責任な親でさえ、我が子を第三者に取られまいと里親を拒否し、施設養護を希望することもある。欧米では子どもが親元に帰る見込みが無い場合は早めに次の家庭を探すというに。
 以前、里親を取材した際、乳幼児期の両親不在が子に与える悪影響を心配し、施設ではなく里親のもとでの養護を訴えていた。「乳児こそ母親の元に戻れないなら、それに替わる特定の里母が必要だ」と。
 さて、今回の厚労省の方針を実現するには、子どもを受け入れる里親の確保が欠かせない。滋賀県内では287人の子どもが施設や里親の元で暮らしている。県は各中学校区単位で1人以上の里親家庭の確保を目指しているが、ここ湖北地域は里親が常に不足し、長浜市内は13区中6区でゼロ、米原市内は7区中5区でゼロ。
 行政機関が目標を立てたところで、地域の大人がこの問題に無関心であれば、救えるはずの子どもが救われない。関心を抱いている方は彦根子ども家庭相談センター☎(0749・24・3741)へ。

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2017年08月02日

増やしたい 、女性研究者

 総務省の科学技術研究調査(2016年3月発表)によると、日本には女性研究者が約13万8400人いるそうだ。研究者全体に占める割合は15・3%で、過去最多を更新した。だが、この割合は決して多いとは言えない。
 海外の主要国と比較すると、ロシア(40・3%)、アメリカ(34・3%)、ドイツ(28・0%)には大きく水を開けられ、家父長制的な文化が残る韓国(18・9%)をも下回っている。
 なぜ、女性研究者が少ないのだろうか。男女共同参画白書(2013年)では「家庭と仕事の両立が困難」「育児期間後の復帰が困難」「職場環境」「育児・介護に対する配慮不足」が原因として挙げられている。これらの原因は女性研究者の育成に限らず、女性の活躍を阻む時代遅れの社会構造であろう。
 手本となるロールモデルの少なさも女性の研究者志向を阻害している。一昔前、「女が学問をして何になる」と女性の大学進学率は低かった。専業主婦として家事、育児に専念して「家を守る」ことが美徳とされた。ゆえに研究者として第一線で活躍している年配の女性は限定的だ。
 男女の大学進学率に大差が無くなった今、「リケジョ(理系女子)」なる言葉が登場しているように、研究者を目指す女性は増えつつある。「世界中のがん患者を救いたい」とがん細胞の研究に取り組む長浜バイオ大大学院博士課程3年生の山下幸子さんもその一人。高校生の頃から日本の死亡原因の1位であるがんの治療に役立つ仕事をしたいと研究者を目指してきた。
 身近な大学に研究者を目指す若き女性がいることを嬉しく思う。そんな優秀な女子大学院生を支援するため、静岡県から兵庫県までの2府12県をエリアとする国際ソロプチミストアメリカ日本中央リジョンは奨学金制度を設けている。山下さんはその高い志と研究成果が評価され、今年、奨学金を受けた。7年前には近藤真千子さん(現・長浜バイオ大助手)が選ばれている。女性奉仕団体による独自の支援が研究者を目指す女性の呼び水となることを願うとともに、組織を動かす立場にある男性にも女性が社会で活躍しやすい環境づくりと意識改革を求めたいところ。

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