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キャッシュレス社会

 先週末、東京に出かけたが、地下鉄を乗り継いでいて感じたのが、切符を買って乗っている人がほとんどいないことだ。定期カードやICカードを改札の端末にタッチして入場している。切符の吸い込み口のない改札も少なくない。何より切符販売機の数が少ない。
 そう考えながら振り返ると、小生は東京2日間で一度も現金を使わなかった。ホテルや飲食店はクレジットカード、地下鉄乗車やコンビニでの買い物はICカードの「ICOCA」。わざわざ財布を持ち歩く必要はなかったわけだが、現金しか使えない店があるかもしれないから、財布は手放せない。
 同じ時期、友人は上海に出かけた。中国は急速にキャッシュレス化が進み、現在ではその便利さからスマートフォンでの決済が主流だ。その決済には「QRコード」を使う。店での支払いの際は、店が提示するQRコードを自身のスマホで読み取るか、もしくはスマホのQRコードを店側が端末で読み取ると、自身が契約している銀行口座から代金が引き落とされる仕組み。
 面白いのはQRコードによる汎用性の高さだ。例えば露店での買い物。店には紙に印刷したQRコードが掲げられている。客はそのQRコードをスマホで読み取ることで支払いを済ませる。露店としては、電子決済のための端末を置く必要もなければ、盗難や偽札の危険もない。何より小銭をやりとりする煩雑さがない。
 極めつけは物乞い。QRコードを印刷した紙を置いている。寄付したい人はスマホでそれを読み取ればいいのだ。風刺画のような光景だが、キャッシュレス先進国の中国では珍しくはないそうだ。
 インド政府は今春、国民情報と銀行口座を連動させた電子決済サービスをスタートさせた。買い物の際に国民番号を伝え、専用の機械に指紋をかざすと代金が銀行口座から引き落とされる仕組みで、スマホやカードがなくても支払いができるのが特徴だ。現金に慣れ親しんだ国民には抵抗があるようで普及には時間を要するだろうが、便利なサービスゆえに浸透しない理由はない。スウェーデンをはじめヨーロッパでもキャッシュレス化が進み、現金を持たない若者も少なくない。
 しかし、日本はというと、スーパーやコンビニなどは電子マネーやオンライン決済が可能だが、小さな店ではクレジットカードも使えず、スマホとカードだけで生活するのは難しい。
 社会学者の古市憲寿氏も今週の週刊新潮の連載で上海を訪れた際の出来事を振り返っている。上海の現代美術館で入場券を現金で買おうとしたところ「まるで原始人を見るような目で『オンラインで決済してもらうか、電子マネーじゃないと困るよ』と言われた」とレポートし、翻って日本の後進国ぶりを嘆いていた。
 現金決済が原始的手法になりつつある世界の潮流にあって、日本のガラパゴス化は際立っているのかもしれない。ポイントカードで財布をパンパンに膨らませているのも日本人ぐらいだろう。

2017年07月12日 15:56 |


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