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テロと社会の分断

 ロンドン中心部で3日発生したテロにより7人が死亡、約50人が負傷した。イスラム過激思想に感化された男らが市民や観光客で賑わうロンドン橋の歩道を車で暴走し、その後、ナイフで飲食店などの客を刺した。過激派組織IS(イスラム国)が犯行声明を出している。
 イギリスでは5月にも人気アーティストのコンサート会場で自爆テロが発生し、22人が犠牲となっていたことから、ロンドン橋周辺でも警備が強化されていた。
 今、ISは拠点であるシリアとイラクで追いつめられている。イラクでは米国の支援を受けたイラク軍により拠点都市モスルが陥落の寸前であり、シリアでは本拠地ラッカが包囲されている。風前の灯であるISが華々しい戦果をアピールするには、欧州での無差別テロが格好の宣伝材料となる。
 欧州での無差別テロには社会の分断という目的もある。テロによって既存の住民がイスラム系住民への排斥感情を高めれば、イスラム系住民は心の拠り所としてイスラム原理主義体制を追求するのではないか、との考えだ。社会の分断が成功しつつあるのは、欧州で移民排斥を公言する右派政党が台頭していることからもうかがえる。そして、排斥思想が広まれば広まるほど、教育や仕事に恵まれず、不満を溜め込んでいる若者が過激思想に感化されるかもしれない。社会の分断が、さらなるテロの呼び水となる可能性を秘めている。
 さて、今回のテロは不特定多数の人が集まり、警備には限界のある「ソフトターゲット」を、車両を凶器として狙った手口だった。昨年7月の仏ニースのテロではトラックが群集に突っ込み86人が死亡、12月にはベルリンのクリスマスマーケットにもトラックが突っ込み12人が犠牲となった。
 銃や爆発物など入手困難な凶器ではなく、車両やナイフは誰でも手に入れられる。しかも、多額の資金や綿密な計画も必要ない。単独もしくは少人数で実行できる。ゆえに犯行を防ぐのは容易ではない。
 中東でISが追いつめられる中、当面は欧州で無差別テロが続くだろう。しかし、テロ事件が発生したからといって、イスラム教系住民に偏見を持ち、知らず知らずに排斥感情を抱けば、テロリストの思うつぼであり、社会の分断と悪循環を生みかねない。

2017年06月05日 16:10 |


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