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難民受け入れ世界2位

 民主化運動「アラブの春」を端に発したシリアの内戦。シリア政府軍、反政府組織、IS(イスラム国)の三つ巴により、インフラや住宅が破壊され、国民2300万人のうち、海外に逃れた難民は500万人を超えた。「21世紀最大の人道危機」とも呼ばれるこの事態に、周辺国やEU各国がシリア難民を受け入れている。
 人道国家ドイツは世界有数の難民受け入れ国として知られる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると2015年に受け入れた難民の数は180万人で、世界2位だった。トルコ(1位)、パキスタン(3位)、レバノン(4位)など、紛争隣接国と並んで欧州の一国であるドイツが積極的に難民を受け入れるのは、同国の歴史的背景によるところが大きい。
 ナチス・ドイツ時代にユダヤ人などを迫害し、多くの難民を生み出した苦い経験を持つことから、国民の多くが難民問題に積極的に取り組むことを義務と感じているからだ。
 ただ、南ドイツを観光している限りでは難民を受け入れているという感覚はない。過去に中東を旅した際は、シリア難民が路上に座り込み、物乞いしている姿が目についたが、ドイツでは空き家を改修して難民を受け入れているから、路上に放り出されることはないようだ。
 ただ、国民の税金を投じて住居や生活費を準備する手厚い支援や、難民による犯罪などにより、ドイツ国民の難民に対する感情は様々で、移民や難民排斥を公言する極右思想も生まれつつある。
 ミュンヘンにある難民収容施設は高さ4㍍、幅80㍍の壁でドイツ国民の住む住宅地と分断されている。施設建設に反対する住民が「騒音」を理由に掲げたことから、妥協の産物として設置されたものだ。この壁に対して撤去を求める署名活動もあれば、施設そのものの撤去を求める署名も行われ、ドイツ国民の分断を代弁している。
 さて、島国の日本では伝統的に難民の受け入れに消極的だ。30〜40年前には1万人余りのインドシナ難民を受け入れたことはあるものの、近年は先進国の中で最低水準の受け入れで、UNHCRからは常々苦言を受けている。ちなみに、2016年は難民申請1万0901人に対し、難民認定者はたった28人。狭き門である。国連からシリア難民の受け入れを求められても、一番に取り組むべきは周辺国の負担軽減だとして、これまで政府は金銭支援に留めてきた。さすがに国際社会からの圧力に折れ、今年からは約300人規模で受け入れる予定だが、留学生とその家族に限っており、EU諸国と比ぶべくもない。
 さて、現地のドイツ人男性に、この日本の消極的な受け入れ姿勢をどう思うかと尋ねたところ、難民による犯罪を念頭に「日本は正しい。難民を受け入れない方が良い」と回答してくれた。昨年12月、ベルリンのクリスマス市にトラックが突っ込み、約60人が死傷した無差別テロが発生したが、このテロは難民申請者によって引き起こされた。
 極東の日本には「どこ吹く風」の中東の混乱と難民も、欧州民とっては実生活に直結する問題だ。ゆえに人道国家を標榜するドイツでも国民感情は複雑だった。

2017年05月22日 15:53 |


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