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中世の街に迷い込む

 南ドイツの観光は中世の面影が残る街巡りが楽しい。ビュルツブルクからオーストリア国境付近のフュッセンに至る約350㌔のルートは日本旅行者に「ロマンティック街道」として親しまれ、古い街並みを残した町を結んでいる。これは日本の中山道のような街道が残っているわけではなく、歴史的景観を残す町を結んだ観光ルートに過ぎない。
 朝8時、フランクフルト中央駅でバスに乗り、街道の起点であるビュルツブルクを経て、街道随一の観光地、「中世の宝石箱」とも呼ばれるローテンブルクに到着したのは正午すぎ。城壁に囲まれた旧市街は石畳の入り組んだ路地、木組みの住宅など歴史的街並みが徹底的に維持され、中世に迷い込んだかのような錯覚を起こす。宿泊したホテル「帝国の料理長」も中世の貴族の邸宅を改装した建物で、併設のレストランでは季節の食材を使った郷土料理を楽しめた。
 日本人旅行者が夢に描く中世ヨーロッパのメルヘンチックな風景を凝縮させたこの旧市街には当然、厳しい景観規制がある。建築様式や建物の高さはもちろん、窓やバルコニーのデザインまで子細な決まりがある。また、この街に魅力のひとつに個性豊かで可愛らしい店の看板があり、看板を見て歩くだけでも楽しいが、これにも厳しい規制がある。事前にスケッチを当局に提出し、デザインや色彩の審査を受けたうえで、初めて設置できるそうだ。何より住民自身が花壇の手入れや周辺道路の掃除などで美化に努めていることが、この博物館を思わせるような街並みを維持している。
 旧市街は第二次大戦で40%が破壊された。しかし、その破壊の痕跡がうかがえない程に忠実に中世の街並みが再現されているのも、市民や行政の意識の高さを代弁している。
 このような景観を大切にする心に触れると、日本の無秩序な街並み、巨大看板、林立する電柱、街灯などに、その意識の低さを嘆かずにはいられない。特に看板などは、風景との調和や景観への配慮よりも、いかに目立つのかという商業優先の経済効果だけを狙ったものだ。これは国民の景観に対する意識が醸成されていないだけでなく、規制すべき側に立つ政治家や当局の無理解による。京都や高山のように古い街並みを観光資源とする自治体でなくとも、もう少しまともな景観規制を行ったほうが良いだろう。
 南ドイツではローテンブルクに限らず小さな街でも景観を大切にしていた。街を眺めているだけでも心地良く、結果的に観光としての経済効果を生み出しているように思えた。

2017年05月17日 16:12 |


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