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見えない戦争

 経済産業省所管の独立行政法人・情報処理推進機構は4月1日、産業サイバーセキュリティセンターを発足させた。
 米国の原発の制御システムがウイルスに感染して停止したり、ロンドン五輪で開会式会場の電力システムが攻撃を受けたりと、海外ではサイバー攻撃で重要インフラ・産業基盤が被害を受ける事件が発生している。3年後に五輪を控える日本でもサイバー攻撃の危険性が高まっていることから、センターでは社会を守る人材をインフラ主要企業から募り、海外の最新事例を参考にしながら情報技術に優れた人材を育成する方針だ。
 では、コンピューターとネットワークによって管理されている社会インフラがサイバー攻撃に脅かされると、どのような事態に至るのだろうか。
 20XX年の冬、東京で突如原因不明の大規模な停電が発生。輸送管理システムの誤作動で地下鉄、私鉄、JRのすべてがストップし、帰宅困難者は800万人。街中の信号機は誤作動で大渋滞を引き起こし、携帯電話やインターネット網も麻痺。工場やオフィス、銀行のシステムは復旧の見通しが立たず、経済損失は数兆円。日本国中がパニック状態に陥り、国家機能が完全に無力化したのを見計らって在日米軍基地に中国からミサイルが打ち込まれた—。
 長浜市出身の国際ジャーナリスト山田敏弘氏の著書「ZERO DAY 米中露サイバー戦争が世界を破壊する」(文藝春秋発行)は、冒頭、以上のフィクションを紹介したうえで、「このようなサイバー攻撃は不可能でない」と指摘している。
 サイバー攻撃というとハッカーが官公庁のホームページを改ざんしたり、システムに障害をもたらしたり、大企業から顧客の個人情報を抜き出したり、というニュースが思い出されるが、同書によると現実には破壊的攻撃が行われるようだ。
 2009年、イランの核燃料施設で、ウラン濃縮用遠心分離機1000〜2000個が制御不能になって大破した。これは「スタックスネット」と呼ばれるデジタル兵器によって制御装置が乗っ取られたことが原因で、アメリカ国家安全保障局の関与が強く疑われていると、サイバー攻撃の一例を紹介している。
 山田氏は著書で、「空き巣が留守宅に侵入して物を盗むように、ハッカーが他国の機密情報を盗む。戦場でミサイルが飛び交うように、デジタル兵器もサーバー領域で飛び交っている」と語っている。
 この「見えない戦争」には超大国アメリカのほか、中国、ロシアなども参戦している。日米安保によって世界最強の軍事力に守られている日本だが、サイバー攻撃の前には「丸腰」に等しい状態で、早急な対策を講じなければ、日本に敵意を抱く国家によって種々の妨害、破壊工作を受けることになる。

2017年05月01日 15:57 |


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