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2017年05月26日

忖度せず追及を、加計学園問題

 安倍晋三総理の旧知の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」による獣医学部新設に、総理の意向が働いていたとの疑惑。現段階では真偽不明ではあるものの「総理の意向」との文言が含まれた記録文書の存在が明るみになったことで、官邸の関与が大いに疑われることになっている。そして25日には、文部科学省前事務次官の前川喜平氏が記者会見で記録文書について「確実に存在していた」と強調し、「行政の在り方がゆがめられた」と批判した。
 文科省が「ない」と言っていた記録文書を、前事務次官が「あった」と証言しているのだから、国会での真相究明が求められるが、与党の腰は重く、国会議員は国民ではなく官邸を向いて仕事をしているのかと疑問符を付けたくなる。
 さて、この問題については、安倍政権に距離の近い読売新聞と、安倍批判に執心する朝日新聞の扱いの差が興味深い。
 朝日新聞はここ最近、「加計学園問題 疑問に正面から答えよ」(18日)、「安倍政権 知る権利に応えよ」(22日)、「前次官の証言 国会の場で解明せよ」(26日)と、社説で3回も取り上げ、疑惑の追及を訴えている。一方、読売新聞は連日紙面で加計学園問題を報じているというのに、政権への忖度なのだろうか社説では触れずじまい。
 加計学園の獣医学部新設に総理の意向が働いていたのか、という疑惑は17日の朝日新聞のスクープで真実味を帯びてきた。「官邸の最高レベルが言っている」「総理の意向だ」との記録文書が存在するとの報道だった。この日の朝刊各紙のトップニュースは、前日にNHKがスクープした秋篠宮ご夫妻の長女・眞子様の婚約報道だったが、朝日のみ加計学園問題をトップで扱い、異彩を放った(東京・大阪版)。
 「総理の意向だ」との文書が出てきたら、すぐさま調査に着手するのが筋だが、菅官房長官は即座に「怪文書」と切り捨てた。その後、文科省は「文書は確認できなかった」との調査結果を明らかにし、この問題に蓋をしようとした。
 そんな中、22日の読売新聞が唐突に、前川氏が文科省在職中に売春や援助交際の温床ともなっている「出会い系バー」に通っていたとのスクープ記事を出した。この時点では前川氏が記録文書を持っていることは明るみにはなっていなかった。
 翌23日、前川氏が朝日新聞のインタビューに応じ、記録文書の存在を証言。朝日新聞はこのインタビュー記事を25日に大きく報じた。前川氏が同日、記者会見を行ったことで、きょう26日の朝刊各紙の一面は加計学園問題が飾ることとなった。
 さて、この前川氏は文科省の天下り問題で今年1月事務次官を引責辞任しているが、その処分に対する逆恨みなのか、加計学園問題について告発する準備を進めていたとされる。それを察知した政権側が、前川氏の口を封じるため、もしくは前川氏個人の印象を貶めるため、出会い系バーへ通っていたとのスキャンダルを読売新聞にリークしたとの筋書きを描けそうではないだろうか。
 もしこの筋書きが予想通りなら、政権側が都合の悪い追及から逃れるためにメディアを利用して告発者への個人攻撃を行ったことになり、これは政権の横暴以外の何物でもない。
 文書が存在するのか否か、総理の意向によってルールが歪められたのか否か。与野党問わずに行政府の疑惑を追及するのが立法府、国会議員の役割だ。

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2017年05月24日

海外に身を置いて

 ミュンヘンから北へ列車で1時間の距離にある古都ニュルンベルクは、ワーグナーの歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の舞台としても知られる。その街を拠点に活動するのが長浜市出身のフルート奏者・服部沙由梨さん。日本の音大を卒業後、ドイツに留学したが、留学前には兵庫県まで演奏と語学の勉強に通っていたというから、そのエネルギーに驚かされる。最近ではピアニストの夫パトリック・クブラーさんとユニット「ドス・ダイアモンズ」を結成し、ドイツや日本でコンサートを開いている。現地では日常の演奏活動のほか、小学校のブラスバンド授業の講師や、語学指導など、忙しくも充実した毎日を満喫しているようだ。
 単身、渡独する彼女の勇気に脱帽させられるが、音楽やバレエ、ファッションの世界での活躍を目指し、ヨーロッパを目指す若者は、ここ湖北地域でも少なくない。ただ、どうしても気になるのは日本の若者の内向き志向だ。
 今回の旅でも、ゴールデンウイークにもかかわらず、日本人旅行者の少なさが気になった。20年程前なら、ヨーロッパで出会うアジア人の多くが日本人だった。それが今では韓国人や中華系が主流で、特に韓国の若者には、どこででも出会う。しかも日本人の旅行者は女性ばかりで、男性はいったい何をして過ごしているのかと気をもむ。
 ローテンブルクで出会った富山県出身の30代の女性。仕事を辞めたのを機に4月から4カ月間のヨーロッパ周遊旅行中だった。ミュンヘンで再会し、ビアホールに一緒に出かけた。話を聞くと、初めてのヨーロッパであり、初めての単身旅行という。最初に訪れたフランス・パリではホームシックで夜、泣いたそうだが、今ではすっかりたくましい。相席のドイツ人男性に話しかけ、何を食べているのか、美味しいのか、と情報収集を欠かさない。1カ月も旅行していると簡単な英語も話せるようになったという。そんな彼女は節約のためユースホステルを泊まり歩いているが、そこでも日本人に出会わないと嘆いていた。小生と出かけたビアホールがヨーロッパで初めての日本人との食事ということで、大いに旅の体験談を語ってくれた。彼女はこのあと、オーストリアを経てクロアチア、ギリシャへと地中海沿いに東へ向かった。
 インターネット環境の充実で、ホテルの予約も列車のダイヤ確認も、目的地までのナビゲートもスマホ1台でこと足り、特に不自由もなく海外旅行を楽しめる時代になったというのに、好奇心と冒険心は韓国や中国、台湾、香港などに負けている日本。せめて一度だけでも若いうちに海外へ飛び出して、文化の異なる環境に身に置き、視野を広めてもらいたいと切に願う。

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2017年05月22日

難民受け入れ世界2位

 民主化運動「アラブの春」を端に発したシリアの内戦。シリア政府軍、反政府組織、IS(イスラム国)の三つ巴により、インフラや住宅が破壊され、国民2300万人のうち、海外に逃れた難民は500万人を超えた。「21世紀最大の人道危機」とも呼ばれるこの事態に、周辺国やEU各国がシリア難民を受け入れている。
 人道国家ドイツは世界有数の難民受け入れ国として知られる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると2015年に受け入れた難民の数は180万人で、世界2位だった。トルコ(1位)、パキスタン(3位)、レバノン(4位)など、紛争隣接国と並んで欧州の一国であるドイツが積極的に難民を受け入れるのは、同国の歴史的背景によるところが大きい。
 ナチス・ドイツ時代にユダヤ人などを迫害し、多くの難民を生み出した苦い経験を持つことから、国民の多くが難民問題に積極的に取り組むことを義務と感じているからだ。
 ただ、南ドイツを観光している限りでは難民を受け入れているという感覚はない。過去に中東を旅した際は、シリア難民が路上に座り込み、物乞いしている姿が目についたが、ドイツでは空き家を改修して難民を受け入れているから、路上に放り出されることはないようだ。
 ただ、国民の税金を投じて住居や生活費を準備する手厚い支援や、難民による犯罪などにより、ドイツ国民の難民に対する感情は様々で、移民や難民排斥を公言する極右思想も生まれつつある。
 ミュンヘンにある難民収容施設は高さ4㍍、幅80㍍の壁でドイツ国民の住む住宅地と分断されている。施設建設に反対する住民が「騒音」を理由に掲げたことから、妥協の産物として設置されたものだ。この壁に対して撤去を求める署名活動もあれば、施設そのものの撤去を求める署名も行われ、ドイツ国民の分断を代弁している。
 さて、島国の日本では伝統的に難民の受け入れに消極的だ。30〜40年前には1万人余りのインドシナ難民を受け入れたことはあるものの、近年は先進国の中で最低水準の受け入れで、UNHCRからは常々苦言を受けている。ちなみに、2016年は難民申請1万0901人に対し、難民認定者はたった28人。狭き門である。国連からシリア難民の受け入れを求められても、一番に取り組むべきは周辺国の負担軽減だとして、これまで政府は金銭支援に留めてきた。さすがに国際社会からの圧力に折れ、今年からは約300人規模で受け入れる予定だが、留学生とその家族に限っており、EU諸国と比ぶべくもない。
 さて、現地のドイツ人男性に、この日本の消極的な受け入れ姿勢をどう思うかと尋ねたところ、難民による犯罪を念頭に「日本は正しい。難民を受け入れない方が良い」と回答してくれた。昨年12月、ベルリンのクリスマス市にトラックが突っ込み、約60人が死傷した無差別テロが発生したが、このテロは難民申請者によって引き起こされた。
 極東の日本には「どこ吹く風」の中東の混乱と難民も、欧州民とっては実生活に直結する問題だ。ゆえに人道国家を標榜するドイツでも国民感情は複雑だった。

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2017年05月19日

ビール大国ドイツ

 キリンビールの調査によると、ドイツ国民1人当たりのビール消費量は年間104㍑、大びん(633㍉㍑)換算で165本にのぼる。これは日本人の2・5倍にあたり、世界でも3番目の消費量だ。
 そんなドイツには1270軒ものビール醸造所があるといわれている。それぞれの村や町に鐘楼があるように、それぞれに醸造所があり、住民が地元産ビールを楽しんでいる。
 ゆえにドイツの旅はビアホール巡りも魅力で、賑やかなビアホールを見つけたら是非のぞきたい。大きな木のテーブルを囲んで、市民や観光客が相席でビールと料理を満喫している。
 ビールの種類は定番の「ヘレス」、小麦麦芽が主原料でコクのある「ヴァイスビア」、アルコール度の高い黒ビール「ドゥンケル」など様々。店員さんにお願いすると1㍑ジョッキを笑顔で持って来てくれる。ビールの相棒はソーセージをはじめ、キャベツの酢漬け「ザワークラウト」、そして「ブレーツェル」と呼ばれる塩を振ったパンが定番だろうか。音楽の生演奏や店内の喧騒も、おつまみとなる。
 ビール発祥地には諸説あるが、北ヨーロッパでは古代ゲルマン人が紀元前1800年頃にはすでにビールを作り、同800年ごろのビールジョッキもドイツ国内で発見されている。
 そんな歴史を持つ同国では、「ビール純粋令」と呼ばれる法律がある。ビールの原料を麦芽、ホップ、水、酵母に限定しているものだ。この法律が誕生したのは1516年。当時、一部で粗悪なビールが流通していたことからバイエルン王ヴィルヘルム4世らによって公布された。昨年はちょうど公布500年の記念の年で、同国では様々なフェスティバルが行われていた。
 たった4つの原料しか使っていないのに、分量や組み合わせ、醸造方法を変えることによって、見た目も味も、喉越しも異なる多種多様なビールを生み出し、その数は何と5000種類。毎日、違う種類を飲んでも10年以上かかってしまう。
 そんなドイツで驚いたのがミュンヘン空港内にある醸造所「エアブロイ」。世界広しと言えど、空港内に醸造所があるのはミュンヘンだけではないだろうか。ビアホールを併設しているので、出発ぎりぎりまで、名残りを惜しむようにビールの魅力を満喫できる。

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2017年05月17日

中世の街に迷い込む

 南ドイツの観光は中世の面影が残る街巡りが楽しい。ビュルツブルクからオーストリア国境付近のフュッセンに至る約350㌔のルートは日本旅行者に「ロマンティック街道」として親しまれ、古い街並みを残した町を結んでいる。これは日本の中山道のような街道が残っているわけではなく、歴史的景観を残す町を結んだ観光ルートに過ぎない。
 朝8時、フランクフルト中央駅でバスに乗り、街道の起点であるビュルツブルクを経て、街道随一の観光地、「中世の宝石箱」とも呼ばれるローテンブルクに到着したのは正午すぎ。城壁に囲まれた旧市街は石畳の入り組んだ路地、木組みの住宅など歴史的街並みが徹底的に維持され、中世に迷い込んだかのような錯覚を起こす。宿泊したホテル「帝国の料理長」も中世の貴族の邸宅を改装した建物で、併設のレストランでは季節の食材を使った郷土料理を楽しめた。
 日本人旅行者が夢に描く中世ヨーロッパのメルヘンチックな風景を凝縮させたこの旧市街には当然、厳しい景観規制がある。建築様式や建物の高さはもちろん、窓やバルコニーのデザインまで子細な決まりがある。また、この街に魅力のひとつに個性豊かで可愛らしい店の看板があり、看板を見て歩くだけでも楽しいが、これにも厳しい規制がある。事前にスケッチを当局に提出し、デザインや色彩の審査を受けたうえで、初めて設置できるそうだ。何より住民自身が花壇の手入れや周辺道路の掃除などで美化に努めていることが、この博物館を思わせるような街並みを維持している。
 旧市街は第二次大戦で40%が破壊された。しかし、その破壊の痕跡がうかがえない程に忠実に中世の街並みが再現されているのも、市民や行政の意識の高さを代弁している。
 このような景観を大切にする心に触れると、日本の無秩序な街並み、巨大看板、林立する電柱、街灯などに、その意識の低さを嘆かずにはいられない。特に看板などは、風景との調和や景観への配慮よりも、いかに目立つのかという商業優先の経済効果だけを狙ったものだ。これは国民の景観に対する意識が醸成されていないだけでなく、規制すべき側に立つ政治家や当局の無理解による。京都や高山のように古い街並みを観光資源とする自治体でなくとも、もう少しまともな景観規制を行ったほうが良いだろう。
 南ドイツではローテンブルクに限らず小さな街でも景観を大切にしていた。街を眺めているだけでも心地良く、結果的に観光としての経済効果を生み出しているように思えた。

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2017年05月15日

南ドイツを訪ねて

 ゴールデンウイークを利用して南ドイツに出掛けた。ドイツ南部の中心都市ミュンヘンを拠点に、おとぎ話に出てきそうなメルヘンチックな街ローテンブルク、世界最大のクリスマス市で知られるニュルンベルク、ディズニーランドのシンデレラ城のモデルとされるノイシュヴァンシュタイン城、そして隣国オーストリアにあるモーツァルトの故郷ザルツブルクを訪ねた。現地滞在6日間のタイトなスケジュールながら、バスや電車を乗り継いで駆け足で巡った。旅行者の視点で何回かに分けてレポートしたい。
 ドイツの国民性は日本人に似ていて勤勉で真面目。時間厳守も他国には見られない日本に似た特徴だ。勤勉と言っても日本人のように働き過ぎることはなく、休日を大切にし、長期休暇をつくっては旅行に出掛けるのが一般的のようだ。
 勤勉、真面目で時間厳守という国民性から、旅行者には快適だ。海外では遅刻が当たり前の列車は定刻通り。レストランや宿泊施設での接客は丁寧で笑顔を絶やさない。万事が心地よく動き、日本国内の感覚そのままで旅行できた。
 うらやましいのは仕事に残業はなく、定時を過ぎれば職場を後にしてプライベートな時間を楽しんでいることだ。もちろん仕事が残っていても関係ない。仕事とプライベートの分別も厳格なのだ。
 平日の夕方、ミュンヘンのビアホールでドイツ人の家族と相席となった。ビール醸造所に勤める夫妻と小学生の男の子、そしてシステムエンジニアの祖父の3世代4人が食事を楽しんでいた。仕事終わりにこうして家族でレストランに出掛けるのは珍しくなく、やはり定時に仕事を終えて家族との時間を楽しむそうだ。
 「カンパイ」と日本語でジョッキを掲げてくれた祖父は日本の大手電機メーカーと取引があり、日本にも何度か訪れたことがあるそうだ。そこで、ドイツと日本の仕事に対する姿勢の違いについて説明してくれた。そのエンジニアの指摘するところでは、日本企業は会議が多く、遅くまで仕事をすることが美徳と考えていて非効率だという。とにかく定時に仕事を終わらせて、仕事以外の時間を過ごすべきだと教えてくれた。「仕事だけが人生ではないのだから」と。そんなドイツ人は年間30日の有給休暇があり、4週間の長期休暇も珍しくないそうだ。ゆえにのんびりと海外旅行に出掛けられる。日本人にとってはうらやましい限りの話だった。

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2017年05月12日

受動喫煙対策の行方

 厚生労働省が目指す飲食店での受動喫煙対策は、自民党によって後退しそうな気配だ。
 厚生労働省は東京五輪をめどに、飲食店などでの喫煙を原則禁止とする健康増進法改正を目指している。改正案では小中高校、医療機関は敷地内のすべてを禁煙とし、大学、官公庁などは屋内禁煙。飲食店、ホテル、駅などは禁煙とし、喫煙室の設置を認める。一方で、床面積30平方㍍以下の小規模のバーやスナックなどは、妊婦や未成年者の利用が想定しにくいとして規制の対象外としている。
 一方、最近明らかになった自民党案は、飲食店の場合、一定面積以下であれば業態に関係なく、「喫煙」や「分煙」を表示すれば、喫煙を認めるもの。「一定面積」がどれほどの面積を指すのかは明らかになっていないが、厚生労働省案の「30平方㍍」を上回ることが想定され、受動喫煙対策が後退することを意味している。
 「世界最低レベル」と酷評される日本の受動喫煙対策は、東京五輪を機に世界標準に近づくと期待されたが、厚生労働省案と自民党案の溝をどう埋めるのか、安倍政権の覚悟が問われている。
 そんな中、小池百合子東京都知事が公共施設や飲食店の屋内を原則禁煙とする条例を検討していることを明らかにした。7月の都議選に向け、小池都知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」の公約に盛り込む方針だ。
 過去には舛添要一都知事が東京五輪を見据えた禁煙条例の制定を訴えたが、自民党都議連の猛反発を受けて霧散したことがある。もし、今度の都議選で禁煙条例の制定の是非が争われるのならば、これほど分かり易い争点はなく、国内の受動喫煙対策に大きな影響を及ぼすことになる。
 自民党案がまとまったこのタイミングで禁煙条例の制定を持ち出す点に、小池都知事のしたたかな選挙戦略がうかがえるが、望まない受動喫煙を防ぐために条例や法律でどこまで規制すべきなのか、有権者に問う良い機会となるのではないだろうか。

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2017年05月10日

改憲 各紙のトーン

 安倍首相は3日の憲法記念日を前後して、憲法改正への意欲を改めて示した。「私の世代で自衛隊が違憲だと言われる状況を変えねばならない」と強調し、戦争放棄などを規定した憲法9条の1、2項を維持しつつ、自衛隊の根拠規定を追加する案を示している。時期も2020年の東京五輪を目標に掲げている。
 この首相の意欲に対し、新聞各紙が社説でそれぞれ見解を示している。
 改憲に理解を示すのは読売と産経。読売は「一度も改正されていないため、内外の情勢が大きく変化する中で、様々な歪みや乖離が生じているのは確かである」と改憲の必要性を説き、「国の最高法規を、新たな時代の多様な課題にきちんと対応できる内容に着実に見直す。与野党には、その重要な作業に誠実かつ真摯に取り組む責任がある」とした。
 産経も「現憲法の最大の欠陥は、国と国民を守る軍に関する規定がないことにある。9条を理由とした自衛隊違憲論がなお存在する」として、「期限を定めて改正に取り組む姿勢を支持する」と賛成した。「弾道ミサイルが飛来する時代に国民を守る妨げとなっているのが『専守防衛』の考え方だ。これを見直すことができる改正内容とすることも重要である」と訴えている。
 一方、朝日は「現憲法のどこに具体的で差し迫った不具合があるのか。改憲を語るなら、そこから地道に積み上げるのが本筋だ」と疑問視したうえで、「目下の憲法の危機の根底には、戦後日本の歩みを否定する思想がある。特異な歴史観には到底同調できないし、それに基づく危険な改憲への道は阻まなければならない」と、改憲勢力の背景に「特異な歴史観」があると指摘した。
 中日も「自衛隊の存在を認める条文を加えることに意欲を示したが、戦争放棄と戦力不保持の理念を空文化する改正なら、許してはならない」とし、「憲法は主権者たる国民が権力を律するためにある。改正は、必要性を指摘する声が国民から澎湃と湧き上がることが前提のはずだ」と釘を刺した。
 毎日は「改憲実現に向けた意思を改めて明確にし、国会や国民の活発な議論を促す狙いなのだろう」と分析。「自衛隊の位置付けが戦力不保持の規定とどう整理されるか、はっきりしない」などと問題点を列挙したうえで、「9条は国のかたちを定める核心部分だ。扱いは丁寧であるべきだ」と諭した。
 以上が5紙の論評だ。国民主権、平和主義、基本的人権を3原則とする憲法はすでに70歳を迎えた。この70年間まったく変わることがなかったのは、改憲に対する嫌悪感が政治家や国民の間で大きかったからだ。それは改憲が平和主義の象徴である9条改正に直結するためで、過去には議論さえ許されない雰囲気だった。
 だが、憲法学者が違憲とする自衛隊は国際的には軍隊そのもので、その軍事力は世界有数だ。戦争放棄をうたった9条の1項、2項を維持したまま、自衛隊を「合憲」とする第3項を設けることは、前向きに議論すべき選択肢であろう。
 今の日本が置かれた国際情勢をどのように分析し、9条にどう向き合うのか。最終的な改憲の判断は政治家ではなく、われわれ国民投票に委ねられている。

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2017年05月08日

2つの大統領選

 注目のフランス大統領選の決選投票が7日行われ、EUとの関係重視を訴える無所属のマクロン氏(39)が得票の6割以上を集め、EU離脱を主張した極右「国民戦線」のルペン氏(48)を破って初当選した。EUでは移民の受け入れ停止や自国第一を掲げる極右政党が、移民流入に不安を抱える国民感情を背景に支持を伸ばしているが、自由や平等、博愛を国是とするフランスはルペン氏を退け、史上最年少の大統領に舵取りを託した。
 イギリス国民投票でのEU離脱、アメリカのトランプ政権の発足など、世界に広がる自国第一主義に歯止めをかける象徴的な選挙となったものの、投票者の4割近くがルペン氏に投票した事実は、フランス国内でも移民受け入れやEUに対する不満が決して小さくないことを示している。
 さて、新しい大統領に選ばれたマクロン氏は政府機関職員、投資銀行勤務を経て、オランド政権で経済相に就任。大規模な構造改革を進め、経済活動の自由化を促した。しかし、フランス政界を担ってきた中道左派「社会党」や中道右派「共和党」が国民の期待に応えていないとして、左派でも右派でもない中道の「前進」を立ち上げ、政治運動に取り組んできた。既存政治に閉塞感を抱く国民の期待を集めて大統領選に勝利したわけだが、この若い大統領が進める新しい国づくりがEUの結束を高めることに期待せずにはいられない。
 さて、もう一つの注目すべき選挙は9日投票の韓国大統領選。最大野党で左派「共に民主党」の文在寅氏(64)が独走し、同じく中道左派「国民の党」の安哲秀氏(55)が追う。朝鮮半島情勢が緊迫する中にあって、文氏が北朝鮮への融和的な政策を掲げていることから、与党の保守系「自由韓国党」の洪準杓氏(62)が厳しく批判して追い上げているが、文氏との差を埋めるには到っていない。
 トップを走る文氏は「最終的かつ不可逆的」とした2015年の日韓合意に対して「無効であり、再交渉を求める」との姿勢だ。当然、日本政府は再交渉を受け入れる訳にはいかないが、文氏も日本に譲歩すれば求心力が失われることから、日韓関係が再び冷え込む可能性がある。
 朴槿恵前大統領の逮捕によって国民は与党に愛想を付かしているわけだが、北朝鮮情勢が緊迫する中で、左派系の候補同士でトップ争いをしている大統領選は、この国の複雑な政治力学を示している。

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2017年05月01日

見えない戦争

 経済産業省所管の独立行政法人・情報処理推進機構は4月1日、産業サイバーセキュリティセンターを発足させた。
 米国の原発の制御システムがウイルスに感染して停止したり、ロンドン五輪で開会式会場の電力システムが攻撃を受けたりと、海外ではサイバー攻撃で重要インフラ・産業基盤が被害を受ける事件が発生している。3年後に五輪を控える日本でもサイバー攻撃の危険性が高まっていることから、センターでは社会を守る人材をインフラ主要企業から募り、海外の最新事例を参考にしながら情報技術に優れた人材を育成する方針だ。
 では、コンピューターとネットワークによって管理されている社会インフラがサイバー攻撃に脅かされると、どのような事態に至るのだろうか。
 20XX年の冬、東京で突如原因不明の大規模な停電が発生。輸送管理システムの誤作動で地下鉄、私鉄、JRのすべてがストップし、帰宅困難者は800万人。街中の信号機は誤作動で大渋滞を引き起こし、携帯電話やインターネット網も麻痺。工場やオフィス、銀行のシステムは復旧の見通しが立たず、経済損失は数兆円。日本国中がパニック状態に陥り、国家機能が完全に無力化したのを見計らって在日米軍基地に中国からミサイルが打ち込まれた—。
 長浜市出身の国際ジャーナリスト山田敏弘氏の著書「ZERO DAY 米中露サイバー戦争が世界を破壊する」(文藝春秋発行)は、冒頭、以上のフィクションを紹介したうえで、「このようなサイバー攻撃は不可能でない」と指摘している。
 サイバー攻撃というとハッカーが官公庁のホームページを改ざんしたり、システムに障害をもたらしたり、大企業から顧客の個人情報を抜き出したり、というニュースが思い出されるが、同書によると現実には破壊的攻撃が行われるようだ。
 2009年、イランの核燃料施設で、ウラン濃縮用遠心分離機1000〜2000個が制御不能になって大破した。これは「スタックスネット」と呼ばれるデジタル兵器によって制御装置が乗っ取られたことが原因で、アメリカ国家安全保障局の関与が強く疑われていると、サイバー攻撃の一例を紹介している。
 山田氏は著書で、「空き巣が留守宅に侵入して物を盗むように、ハッカーが他国の機密情報を盗む。戦場でミサイルが飛び交うように、デジタル兵器もサーバー領域で飛び交っている」と語っている。
 この「見えない戦争」には超大国アメリカのほか、中国、ロシアなども参戦している。日米安保によって世界最強の軍事力に守られている日本だが、サイバー攻撃の前には「丸腰」に等しい状態で、早急な対策を講じなければ、日本に敵意を抱く国家によって種々の妨害、破壊工作を受けることになる。

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