滋賀夕刊新聞社は滋賀県長浜を中心に政治、経済、文化の情報をお届けする新聞です。



世界の壁

 アメリカのトランプ大統領が7日、シリアのアサド政権が化学兵器による攻撃を行った対抗措置として、アサド政権の空軍基地を巡航ミサイルで破壊した。オバマ前大統領が化学兵器使用を「越えてはならない一線」とアサド政権に警告しながら、武力行使に踏み切らなかったのとは対照的だ。
 今回の攻撃についてトランプ大統領は議会や同盟国に説明しないまま、単独で判断した。国連安保理が拒否権を持つ常任理事国の都合で機能不全に陥っている現実を見ると、効果的な解決策を見い出せずに内戦を長引かせる安保理よりも、トランプ大統領の独断の方がよほど人道的かもしれない。もちろん、アサド政権の後ろ盾となっているロシアやイランは猛反発している。
 それにしても不幸なのはシリア国民である。政府軍、反政府軍のミサイルが降り注ぎ、過激派ISが暗躍する。新聞の国際面はシリアの悲惨なニュースで溢れている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、シリアから国外に逃れた難民が3月末で500万人を超えた。これは総人口の4分の1にあたる。うち、296万人がトルコ、101万人がレバノン、65万人がヨルダンへと、いずれも隣国で難民の登録を受けている。
 しかし、周辺国でも難民の受け入れは限界に達し、トルコでは難民の流入を防ぐべくシリア国境に全長910㌔の壁を建設している。戦火を逃れた先に立ちはだかるその壁を見た難民の絶望は語るまでもない。
 イスラエルに話題のホテルがある。「世界最悪の眺め」というのが売り文句だ。パレスチナ自治区のベツレヘムにあるそのホテルからは、イスラエル政府がユダヤ人入植地とパレスチナ人居住エリアを隔てるために建設した分離壁を眺められる。分離壁の建設名目は無差別テロの防止だが、壁そのものがパレスチナ人の生活も分断していることから世界中の批判を浴びている。
 アメリカも不法移民防止のためにメキシコ国境に壁の建設を計画している。欧州ではアフリカや中東からの難民抑制のために国境管理を強化している。
 ただ、内戦で住む場所を失ったり、仕事がなくて困窮したりして、自国を捨てざるを得ない難民や移民を前にして壁を築くことは、対処療法でしかない。結局のところは世界の貧困や内戦の解決が求められる。しかし、世界の安定をリードすべき国連の常任理事国、つまりアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の5カ国の指導者の顔ぶれを見ると、多くが独裁的、排他的。国連が指導力を発揮できず、難民、移民を減らせない原因だ。

2017年04月10日 15:48 |


過去の時評


しが彦根新聞
滋賀夕刊電子版
滋賀夕刊宅配版
滋賀夕刊デジタルトライアル
“新聞広告の資料請求、ご案内はこちらから"
 
長浜市
長浜市議会