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70兆分の1の存在

 世界には同じ顔をした人が3人いるという真偽不明の話はオカルトに過ぎないが、DNAまで一緒となると、生物学的にはありえないようだ。
 先日、今春で退任する長浜バイオ大学の三輪正直学長による最終講義に参加したが、その講義で人間一人一人が非常にユニークな存在であるという話が印象に残った。
 人間の細胞の核の中には人間の「個性」を決定付ける染色体があり、それは23対46本からなる。受精の際には1対のうちどちらか1本、つまり父方から計23本、母方から計23本が選ばれて組み合わされる。
 その組み合わせを計算すると、父方の23対から1本ずつを選ぶ組み合わせは、2の23乗で838万8608通り。母方も同じように838万8608通り。そして父方、母方の両方の組み合わせを掛け合わせると70兆3687億4417万7664通りとなる。
 つまり、「あなた」は約70兆分の1の確率で誕生しているという説明だった。
 三輪学長は日ごろから学生に対して、自身が70兆もの組み合わせの中から選ばれたユニークな存在であることを自覚し、その強みを生かすよう呼びかけてきたそうだ。
 このほか、三輪学長の講義で印象に残ったのが「遺伝病」だった。遺伝病は「遺伝する病気」を指すのではなく、遺伝子や染色体が発症に強く関係している病気を指す。三輪学長によると、たとえ健康であっても誰もが遺伝病の原因となる劣性遺伝子を代々受け継いでいる「保因者」であると指摘し、皆が保因者であることを認識する必要性を訴えた。そのうえで、偏見や差別をなくすために、これらバイオサイエンスの知識が欠かせないと話していた。
 生物学的見地からのこれらの解説は、小生にとって良い勉強の機会となった。もちろん、遺伝子で個性のすべてが決まるわけではない。その個性が持つ強みや魅力を発芽、開花させるのはこの世に生を受けてからの環境や歩み、そして努力によることは言うまでもない。それぞれが生物学的にユニークな存在であることを認識することは、互いの違いや個性を認め合う寛容な社会を目指すうえでのひとつの強みとなるのではないだろうか。

2017年03月15日 16:43 |


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