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中東戦争の火種

 20日、米国にトランプ大統領が就任する。「米国第一主義」の経済・通商政策を掲げる同氏を米国民が選挙で選んだわけだが、米国が自国だけに有利な政策を次々と打ち出すことで、貿易相手国が一方的に不利となるようであれば、相手国も報復的な保護主義を取らざるを得ない。そうなれば、主要国で保護主義の連鎖が広がり、国境を超えたグローバルな経済活動が萎むことになりかねず、従来の自由貿易のルールが根底から覆ることになるかもしれない。
 日本も対米黒字削減や農業市場の開放など厳しい要求を突き付けられる恐れがあり、日本の政府・企業はその変化に対応することが求められる。
 経済に加えて、心配なのは中東政策ではないだろうか。中東は今、シリアやイラクでのISの暗躍が課題となっているが、両国の内戦に加え、イエメンでの紛争も、イスラム教スンニ派の大国・サウジアラビアと、シーア派の盟主・イランの代理戦争となっている。
 そこに新たな火種となるは、トランプ氏がイスラエルのエルサレムに米国大使館を置くことを表明していることだ。イスラエルは1967年の第3次中東戦争でエルサレム全域をヨルダンから奪取。国際社会はエルサレムを「首都」とするイスラエルの主張を認めず、各国は主要都市のテルアビブに大使館を置いている。アメリカの歴代政権も中東の外交・安全保障上の問題から、エルサレムに大使館を置くことを見送ってきた。しかし、トランプ氏はイスラエルの首都はエルサレムであると公言し、大使館移転を表明している。
 万一、実行に移せば、周辺国の反発は避けられず、特に中東戦争とその後のイスラエルによる入植政策によって住む場所を失ったパレスチナ難民の怒りは頂点に達しよう。2000年にイスラエル首相がエルサレムにある「神殿の丘」を訪問した際には、パレスチナ難民による大規模な蜂起が発生している。
 隣国ヨルダンは、そのパレスチナ難民と子孫が国内人口の過半数を占める。目下、親イスラエルの政権が敷かれているが、パレスチナ難民の蜂起によってこの政権が倒れるようなことがあれば、中東戦争の悪夢が再来することとなる。
 中東戦争が日本経済に及ぼす打撃は記すまでもないが、このほかトランプ氏の台湾政策の如何によっては極東の安全保障にも緊張が生まれる。米国がオバマ政権の下、「世界の警察」を辞めて8年間で、国際社会は不安定になった。米国第一主義を掲げるトランプ氏の就任で、その不安定化に拍車がかかることは避けられそうにない。

2017年01月18日 16:40 |


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