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2016年12月28日

筆納めにあたり

 2016年は国際社会の不安定化が目立った。シリア内戦と過激派「IS」(イスラム国)の暗躍により、大量の難民が欧州に押し寄せ、テロが拡散した。結果、移民や難民の排斥を訴える右派政党が躍進し、「自由」や「人権」という西側の民主主義国の価値観に亀裂が走った。その象徴が、イギリスの国民投票でのEU離脱であろう。19、20世紀に大戦を経験した欧州が二度と戦争を起こさないという決意から結成されたのがEUだったが、綻びが生まれた。アメリカでは移民排斥などを訴え「暴言王」と称されたトランプ氏が大統領選を制した。
 イギリスの国民投票、そしてアメリカ大統領選の結果は、民主的手続きによって示された国民の意思であり、背景には米国や欧州など、いわゆる「先進国」での国民の不満の高まりがある。その不満は、失業率の上昇や貧富の格差拡大、そしてテロの続発が直接的原因だが、先進国には世界の富が集中し、きれいな空気、きれいな水、豊富な食糧、安全な住宅に恵まれ、政治への参加も、就職も個人の自由意思が尊重され、いわゆる「後進国」に比べ、圧倒的に文化的生活を享受している。にもかかわらず、インターネットやテレビの情報は、社会への不満、将来の不安であふれかえり、その他の国々からすれば、「それだけ恵まれていて何が不満なのか、何が不安なのか」と批判されかねない。
 先進国の経済成長が鈍化し、少なくない国民が将来に希望を持てなくなっている。そういった国民の不満や不安が排他的、国粋主義的な政治に利用されることは歴史に明らかで、現実に人権に関わる過激な発言をためらわないトランプ氏が大統領選に勝利した。もし、今後、世界がより不安定さを増すとすれば、2016年が大きな節目となったことに違いない。
 さいわい日本は欧米のように国民が分断される気配は今のところないが、将来に対し希望より不安を口にする若者が少なくないのも現実だ。また、欧米の国際社会への相対的な影響力低下を受け、中国の覇権主義の拡大に悩まされることになろう。人民解放軍の空母が太平洋での演習をスタートさせたことでもうかがえるように中国の野心は止めようがなく、いかに中国との正面衝突を避けるのか、アメリカ頼みでない難しい舵取りが迫られる。
 さて、湖北地域に目を向けると最大のニュースは長浜曳山まつりのユネスコ無形文化遺産登録決定だった。曳山まつりの一連の行事が世界の宝と位置づけられたわけだが、市井の人が400年以上にわたってまつりを伝承してきた、その知恵が評価されたと分析すべきだろう。観音文化もそうであるように、人々が日々の生活の延長として大切に守り通してきた文化が、世界的視点では貴重だったりする。
 この年末、新成人の方々を取材した際、「長浜は人がまるこくて、帰ってくるとほっとする」との声があった。この湖北地域に暮らす私たちにとって、若者にこのように言ってもらえるのは嬉しいことではないか。不満や不安を言い募れば際限ないが、平穏無事に1年を締めくくれることに感謝し、今年の筆納めとしたい。

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2016年12月26日

防火意識高めたい

 新潟県糸魚川市で22日に発生した火災は、木造建造物が密集する約4万平方㍍を焼いた。
 最初に出火したのはラーメン店。店主が鍋に火をかけたまま外出したことが原因だった。ラーメン店の火は強風にあおられて次々と飛び火し、「あちこちから火の手が上がって空襲のようだった」と住民が振り返っていた。結局、150棟が焼けた。
 火災が広がったのは木造の建物がくっつくように密集していた都市構造の問題と、強風という自然現象が原因だ。また、道路が狭隘で思うような消火活動を行えなかったことも要因として挙げられよう。
 木造住宅が密集し、消防車が入れないような住宅街は、長浜市内にも存在する。先週、中心市街地の住宅密集地で発生した住宅火災は消防が延焼を防いだが、もし発見・通報が遅れていれば、もし強風が吹いていれば、と考えると、糸魚川市の大火災は他人事ではない。
 火を使う機会の多い冬場だからこそ、防火意識を高め、高齢者のみの世帯に対しては親族や近所が防火に気を配る必要がありそうだ。
 さて、150棟が焼けた糸魚川市の大火災は、住民や消防団員が軽いけがをしただけで、死者が出なかった。住民が声を掛け合って避難したことが最悪の惨事を免れた。火災の延焼を防げなかったことは大きな課題だが、人的被害が最小限に抑えられた点については、今後の大規模火災に対する参考とすべきだろう。

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2016年12月21日

テロ、そしてテロ

 なんと凄惨なことだろうか。ドイツ・ベルリンのクリスマス市に19日、トラックが突っ込み、市民12人が死亡した。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。
 今年7月にはフランスのニースで花火大会の観客にトラックが突っ込み、86人が死亡するテロがあった。トラックたった1台での犯行に、多くの人が集まる場所でのテロ対策の難しさを改めて突きつけた。
 ISは有志国連合の攻撃により、イラク、シリアで支配地域を失い続けており、その反攻として欧州でのテロに及んだとみられる。
 欧州では人道上の見地から、シリア難民などイスラム教徒を受け入れているが、もし過激派の構成員が含まれているとなると、大きな脅威となろう。
 それにしても、なぜ、ISの狂信的思想がこうも広まり、次々とテロリストを生みだすのだろうか。破滅的なテロの広がる背景は何なのか、疑問ばかりが湧く。
 トルコでは首都アンカラでロシアの駐トルコ大使が警察官に射殺された。警察官は「アレッポを忘れるな。シリアを忘れるな」と叫んでいたことから、シリア内戦でロシアがアサド政権の後ろ盾になって反政府勢力を攻撃していることへの報復とみられる。
 そもそも一つの国の中で国民が互いに殺し合う異常な事態を、国連が止められないどころか、安保理常任理事国である2つの大国が敵、味方に分かれて支援しているのだから、シリア国民は国連の犠牲者でもある。この国連の機能不全は今に始まったことではないが、余りにも無力過ぎる。
 アメリカ、ロシア、イラン、サウジアラビア、トルコと、それぞれが掲げる正義の旗の下で、数多の国民が犠牲になり、貧困と飢え、そして無教育がテロリストを生み出す土壌になっていることには誰もが気付いているはずだ。
 警備を強化するだけでは、もはやテロを防げないのは明らか。シリアの早期安定こそがテロを退ける特効薬だ。

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2016年12月19日

どんぶり勘定

 細かく計算せずに、大雑把に勘定することを「どんぶり勘定」と呼ぶ。この「どんぶり」は「丼」ではなく、昔、職人などが腹に掛けた袋を指すそうで、職人たちがそこにお金を入れて無造作に出し入れしていたことに由来する。
 とはいえ、職人でも売上と経費を厳密に見極めて収支バランスを取らなければ、赤字で廃業の危機に陥ったりする。民間企業もしかりで、税務署への正しい申告のためにもどんぶり勘定では通らない。
 しかし、無限にお金が湧いて来ると思えば、どんぶり勘定が通るのかもしれない。「1兆、2兆、3兆って、豆腐屋じゃあるまいし」と小池百合子都知事が皮肉っていた2020年の東京五輪の経費のことだ。
 振り返ると、2013年の立候補の際は総額7340億円だった。その後、国立競技場の建設費が当初の1300億円から一時3000億円にまで膨らむなど、五輪経費はうなぎ登り。その見直しを訴えて都知事選で当選した小池都知事の調査により、総額3兆円を超える可能性があると指摘された。そこで、経費の削減などに取り組んだ結果、国際オリンピック委員会コーツ副会長、小池都知事、大会組織委員会の森喜朗会長、丸川珠代五輪担当大臣による4者協議で、「2兆円は切る見込み」となった。これが11月29日の時点。それから3週間ほど経った今月17日、今度は1兆6000億〜1兆8000億円程度になることが明らかになった。恐るべきどんぶり勘定というべきだろうか。政府や自治体が負担するのは、つまり税金投入額は、最大で1兆3400億円となる見込みだ。
 きのう18日、丸川五輪担当大臣が長浜で講演した際、ローマ、ハンブルク、ボストンの3都市が2024年の五輪招致レースから辞退したことを取り上げた。「オリンピックをやることの意義を共有できなくなっている」とし、その原因の一つとして「お金の問題」を挙げた。そして東京五輪以降を「いかにお金をかけないか」がIOCのテーマになっていると説明した。
 フランスのクーベルタン男爵がスポーツを通した心身の向上、文化や国籍などを超えた友情などを説いて再興した近代五輪は、ナチスのヒトラーが国威発揚に利用し、そして近代は欧米の商業利用により肥大化した。
 コストをかけない持続可能な五輪を東京が提案できないようでは、先々の五輪で招致レースから撤退する都市が相次ぐに違いない。そういう視点に立てば自民党内の政争に端を発した小池氏と森氏の対立が愚かしい。

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2016年12月16日

どう守る?在来線

 すったもんだした北陸新幹線の敦賀以西ルートは小浜—京都—大阪に決まった。1973年に決定した北陸新幹線整備計画にも小浜市付近の経由が明記されていたことから、結局、当初から想定していたルートで落ち着いた。
 県知事や米原、近江八幡市長らが熱心に誘致を訴えた米原ルートは実現しなかったが、長浜市など北陸本線沿線の住民はほっとしているかもしれない。並行在来線としてJRから経営分離される可能性がなくなったからだ。
 一方で、課題は湖西線だろう。北陸新幹線が全線開業すれば、JRは湖西線を並行在来線に位置づけ、経営分離するとみられる。
 長浜市の近江塩津、永原から、高島市内の近江今津や近江高島、大津市内の近江舞子、おごと温泉などを経て、京都市の山科までを結び、計21駅がある。沿線の通勤・通学路となっているほか、大阪と北陸を結ぶ特急や、西日本と日本海側を結ぶ貨物列車などが経由している。
 これをJRが経営分離した場合、地元自治体が出資する第3セクターによる鉄道運営が余儀なくされるが、黒字はとうてい見込めず、自治体に負担が重くのしかかることとなろう。
 この湖西線をいかにして守るのかが、県や沿線自治体、そして地元選出の国会議員の手腕にかかっている。JRからの経営分離については地元自治体の同意が必要なことから、「経営分離はありえない」との指摘もあるが、前例を見る限り、経営分離は避けられない。万一、JRが直営を続けても赤字の補填を何らかの形で自治体に求められる可能性があろう。
 県と沿線自治体である大津、高島、長浜の各市が結束して、在来線を守る工夫が求められる。米原ルート誘致は地元の気運の盛り上がりに欠けたが、在来線の維持のためにそれこそ県を挙げて取り組むべきだ。
 ただ、北陸新幹線が全線開業するのは30年後の2046年。このまま人口減少が加速し地方の過疎化が進めば、北陸新幹線の開業を待たずに湖西や湖北のJR運行が見直される危険性もあるのではないか。

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2016年12月14日

自由訪問はいつの日か

 ロシアのプーチン大統領があす15日来日し、安倍首相と会談する。懸案の北方領土問題について「私の世代でこの問題に終止符を打つ。この決意で首脳会談に臨みたい」と強調する安倍首相だが、ロシア側が4島を手放すメリットは限りなく小さく、プーチン大統領も「領土問題は存在しない」と、返還に応じる姿勢は示していない。
 北方領土は「択捉」「国後」「色丹」の3島と、複数の島からなる「歯舞群島」を指す。読み方は順に「えとろふ」「くなしり」「しこたん」「はぼまい」で、いずれもアイヌ語を語源としている。たとえば択捉は「岬のあるところ」という意味だ。
 第2次大戦末期、日本の敗戦が決定的になるとソ連が日ソ中立条約を破って対日参戦。日本がポツダム宣言を受諾した後の1945年8月28日から9月5日までの間に北方4島を占領した。当時、4島には日本人約1万7000人が住んでいたが、ソ連人は1人もいなかった。にもかかわらず、翌年、ソ連は4島を自国領に編入し、1948年までにすべての日本人を強制退去させた。「ソ連兵が土足で家に入ってきた」「島から漁船で逃げ出した」とは元島民の声だ。
 ロシアは北方領土を第2次大戦の戦利品と位置づけている。住民の移住が進み、定住人口は日本人が追い出された時と同じ1万7000人にのぼる。また、国後島と択捉島には地対艦ミサイルを配備しており、軍事拠点としてもある程度、重視していることがうかがえる。
 日本側は経済協力をちらつかせながら、北方領土の問題の解決と平和条約の締結をロシア側から引き出したいところだが、相手はあのプーチン大統領。ウクライナからクリミア半島を切り取り、シリアではアサド政権の後ろ盾となって西側諸国を翻弄している。愛国主義を鼓舞して国民の支持を集め、「ロシア国境には果てがない」と言ってのける独裁者である。
 今回の会談で4島返還の道筋がつけられるとは思わないが、北方領土訪問のあり方に何らかの進展が欲しいところだ。目下、日本政府は日本人の北方領土への訪問を認めていない。これは、日本人がロシアのビザで入域することは、ロシアの支配を認めることになるという方便による。ロシア側も日本との外交摩擦を避けるため、原則としてビザを発給していない。過去には上陸した日本人がメディアから批判的に報じられたことがあった。
 しかし、占領から70年が経過し、4島返還が限りなく難しい現状を考えると、ビザの有無を問わずに日本人が自由に北方領土を訪れることができる現実的な制度が欲しいところだ。これには日露の緊密な連携が欠かせず、両首脳の未来志向の会談による成果をわずかながらでも期待せずにはいられない。

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2016年12月12日

自衛隊のPKO

 南スーダンで行われている自衛隊の国連平和維持活動(PKO)はきょう12日から安全保障関連法に基づく新任務が解禁となった。いわゆる「駆けつけ警護」と「共同防護」だ。
 駆けつけ警護は、自衛隊の近くで活動する国連やNGO職員らが武装勢力などに襲撃された場合、求めに応じて駆けつけ、その保護にあたる行動を指す。共同防護は宿営地が襲われた場合に他国軍の部隊と一緒に防衛することだ。
 赴任地である南スーダンのジュバでは、7月に政府軍と反政府勢力の大規模戦闘が発生。現在も民族対立を背景にした紛争が多発しており、駆けつけ警護や共同防護によって、自衛隊が人を殺める可能性は否定できない。
 この安全保障関連法については野党が憲法9条に反するとして、「戦争法」とのレッテルを貼って、盛んに廃止を訴えている。
 ただし、安全保障関連法は駆けつけ警護や共同防護ができるようになっただけであり、自衛隊の任務は南スーダンの国づくりのための施設整備活動であることには何ら変わりない。
 国連には1994年のルワンダ紛争の苦い経験がある。50万人から100万人が虐殺される中、各国の平和維持軍は撤退し、国連PKOも傍観するしかなかった。「内政不干渉」の方針の下、住民を見殺しにしたわけだ。その反省から今は「住民の保護」がPKOの主要任務となっている。保護すべき住民がいるということは、住民を襲う武装勢力がいるわけで、事態が緊迫すれば戦闘は避けられない。
 住民保護という人道主義のために、自衛隊はPKOとしてどこまで交戦できるか。現場の自衛隊は苦しい選択を余儀なくされることになる。
 少なくない憲法学者が「違憲」と指摘する自衛隊のあり方を憲法でしっかりと定義し、同時に日本の安全保障、国際貢献はどうあるべきか、議論されるべきであろう。もちろん、戦力の不保持や交戦権の放棄をうたった憲法9条の法解釈を捻じ曲げて運用している、あやふやな状態からの脱却も模索すべきである。時の政権によって解釈が変わるような憲法の条文を放置することこそ、立憲主義からの逸脱ではないか。自衛隊がPKOに参加している現実を、政治家や国民がどこまで直視しているのだろうか。

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2016年12月09日

キリン、絶滅の危機

  国際自然保護連合が8日、絶滅危惧種を掲載した「レッドリスト」にキリンを加えた。キリンの生息数は1985年の15万5000頭から2015年には9万7000頭にまで減少したという。生息地のアフリカで密猟が相次いだり、開発によって自然環境が破壊されたり、ソマリアやスーダン、エチオピアなどの紛争地で食糧として狩られたりと、原因は複合的だ。
 一方、アフリカ南部では観光客向けの自然動物保護区を設けて管理を徹底して生息数を増やしており、自然動物保護区を当事国だけでなく世界各国が協力して守ってゆくことが野生動物の保護につながる。
 最新のレッドリストには8万5000種類が掲載され、うち2万4000種が絶滅危惧種となっている。これは哺乳類の約5分の1、鳥類の8分の1、両生類の4分の1にあたるという。キリンのほか、カバ、ゴリラ、チンパンジー、ライオンといった日本の動物園で子どもたちに人気の動物も絶滅危惧種に指定されている。
 また、日本の環境省が絶滅危惧種に指定するのはイリオモテヤマネコやツキノワグマ、オオワシなど。最近では、クロマグロやニホンウナギの指定が、日本の食文化の危機という視点から、ニュースになった。
 さて、冒頭のキリンが初めて日本にやってきたのは1907年のこと。ドイツの動物園からオス、メス各1頭を購入し、上野動物園に来た。キリンは英語で「ジラフ」と呼ぶが、当時の園長が国に予算を付けてもらうため中国の霊獣「麒麟」と偽って申請したことから、日本で「キリン」との名前が付いたという俗説がある。
 そのキリンを見たさに上野動物園には来園者が殺到。以来、100年以上にわたって日本の子どもたちを喜ばせてきたキリンが絶滅危惧種に指定されることに、改めて野生動物の保護の気運を高めたい。

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依存症対策が急務、カジノ法成立機に

 カジノを中心とする統合型リゾート(IR)の整備を可能とする「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」が6日衆議院を通過した。自民、日本維新の会などは賛成、公明は自主投票、民進は退席、共産は反対した。
 この法案の基本理念は「国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現し、地域経済の振興に寄与する」ことにある。そして、この法案の中身を見ると、IRを推進するための道筋を示した「プログラム法」に過ぎないことが分かる。成立後、すぐにカジノ施設ができるわけではなく、法律施行後1年以内をめどに、カジノ施設に関する詳細なルールを定めた実施法の整備を政府に義務付けている。
 ゆえに日本のカジノがどのような姿になるのかは現時点では未定。法案可決後に、政府が運営の規則、ゲームの基準、入場対象者の制限、ギャンブル依存症への対策などを法律で決める。「ギャンブル依存症対策が不十分」などという指摘もあるが、この指摘はこれから定める実施法案の立案過程で検証すればよいことで、今回のプログラム法案に対する指摘としては的外れだ。ギャンブル依存症対策を指摘するのであれば、既存のパチンコ、パチスロへの対策が急務であることは論を待たない。
 民間団体「ギャンブル依存症問題を考える会」は6日、IR推進を機に依存症対策の充実を求めて、IR法案を進める議員連盟に要望書を出した。要望書は、既存の公営ギャンブル(競馬、競艇など)、パチンコやスロットなどのギャンブル依存症対策が不十分だと指摘している。
 日本はパチンコ店が「遊技」との名目で、日常生活圏内に存在する世界に例を見ないギャンブル大国だ。厚生労働省の調査によると推計で536万人に依存症が疑われているという。多重債務による自己破産、家庭崩壊など依存症が引き起こす悲劇は珍しくない。
 しかし、依存症患者への対策は遅れている。滋賀県内では県立精神保健福祉センター(草津市)や各地域の保健所が相談を受け付けているのみ。依存症の治療機関はない。このため、依存症患者は自助グループに参加して仲間と励まし合いながら依存症からの脱却を目指すことになる。しかし、自助グループの活動は大津市の市民活動センターで毎週火曜日に開かれているのみ。県北部にはない。目下、長浜市内で自助グループを立ち上げようとの気運が生まれているが、当事者らはどこに頼ってよいのか分からない状態だ。
 カジノ法案成立を機に依存症対策に目が向けられることを期待したい。

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2016年12月05日

ゲノム編集の技術

 生物の遺伝子を操作できる「ゲノム編集」という新技術がある。その技術を使えば、生物の持つ機能を自在にプログラミングできるそうだ。
 3日付けの朝日新聞によると、目下、水産研究・教育機構や三重大のグループがゲノム編集技術を用いて、生殖できないブルーギルを作り出し、駆除につなげるプロジェクトに取り組んでいる。
 卵を作るための遺伝子をゲノム編集によって破壊し、メスが不妊化する遺伝子変異を持つオスを作り出す。このオスと野生のメスが交配して生まれたメスは卵を産めないという。不妊のメスが自然界のオスとどれだけ交配しても卵を産めないわけだ。ゲノム編集したオスを繰り返して放流することで、琵琶湖の規模でも数十年でブルーギルを根絶できるという。グループは3年後をメドに人工池で実験を始める計画だ。
 農業分野では、ゲノム編集とは異なるが、遺伝子組み換え技術により、農薬や病気に強い穀物が生産され、トウモロコシや大豆は日本に輸入されている。加工食品などに含まれており、すでに我々は遺伝子操作の恩恵を受けている。
 しかし、何かしら漠然とした恐ろしさを感じる。生命のアイデンティティーでもある生殖を人為的にコントロールすることへの罪悪感だろうか、それとも遺伝子を改編した生物を自然界に放つことへの不安だろうか。きっとその両方だ。
 仮にこの技術が確立されたところで、琵琶湖のブルーギルは果たして根絶されるのだろうか。生命の神秘とも思える奇跡によって子孫を残し続けるかもしれないし、小生は生命をコントロールできるという人間の慢心を打ち負かして、生き残って欲しいと願う。これは科学に対する批判的立場からではなく、生命への讃歌の思いを込めて、である。

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