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手賀沼せっけん運動

 1977年に琵琶湖で発生した大規模な赤潮をきっかけに、主婦層を中心に広がった「せっけん運動」。合成洗剤に含まれる「リン」が琵琶湖の富栄養化を引き起こしているとして、天然油脂を主原料にしたせっけんの利用を呼びかける県民の蜂起だった。
 赤潮が発生する前から、赤ちゃんのおむつかぶれや主婦の湿疹などの原因が合成洗剤にあるのでは女性らが勉強会を開き、石けん利用の気運が高まっていた。
 そこで、大規模赤潮が発生した翌年、主婦層が中心となって「せっけん会議」を設立。県民に石けんの利用を呼びかけると同時に、行政や企業にリンを含む合成洗剤の禁止を訴えた。
 その結果、リンを含む合成洗剤の販売・使用・贈答の禁止や、工場排水の規制を盛り込んだ「琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」(びわこ条例)が成立することとなった。
 このせっけん運動は琵琶湖と同じ水質汚濁の問題を抱える地域に広がった。
 千葉県北部に位置する手賀沼でのせっけん運動は1980年に始まった。生活排水、産業排水が流れ込み、当事、「沼の汚れは全国ワースト1」と言われるほど水質汚濁が深刻だった。
 そこで、沼周辺の3市1町の住民が合成洗剤追放運動に乗り出し、1985年には住民1万人が出資して「せっけん工場」を完成させた。近隣市町村の家庭から出される廃食油を回収し、せっけんに再生した。現在は第2工場も稼働し、バイオディーゼル燃料も作り出している。市民が共同出資するせっけん工場は全国的にも珍しいが、31年が経過した今も稼働し、生産した石けんは福祉施設や学校給食の調理場などで利用されている。また、地域住民や子ども達の環境学習の場としても活用されている。
 この取り組みは今年、日本河川協会主催「日本水大賞」の市民活動賞に輝き、先週、東京で表彰式・活動発表会が開かれた。
 高度経済成長期、経済活動を最優先した結果、河川や湖沼の水質汚濁、大気汚染などの公害を生み出した。石けん運動は自然環境を破壊すれば人間の暮らしも破壊されることに、住民自らが気付いたことよって始まった。行政やメーカーに責任を押し付けるだけでなく、住民自身が自然破壊の加害者であることを自覚し、自身の生活スタイルを変えようと取り組んだことが、今の他力本願な世相と異なる点ではないだろうか。
 滋賀のせっけん会議は後に「びわ湖会議」に衣替えし平成20年に解散したが、県民運動が行政や企業を動かし、環境保護への気運を高めたという身近な実例として、子ども達に詳しく伝えたい。

2016年07月01日 13:18 |


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