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夏安居と長浜の夏中さん

 24日の長浜梶俳句会に「夏中さん」の句が話題になった。
 「祖母に手を引かれしながはま 夏中さん」(勝木岩松)。
 「夏中さん なつかしいねと東人」(武田蓉子)。
 「げちゅうさん」は「げちゅう」という言葉に親しみと敬意をこめて、さん付けにしたものだが、湖北地方以外の人に通じるか、どうか自信はない。
 ぼくの幼少期の記憶でいえば、あこがれの町、長浜での夏のにぎわう催しだった。
 「しっかり勉強して、家の手伝いをすれば、げちゅうさんに連れて行ってやるから」と、この父の一言に心わくわく、その日を待った。子どものぼくにとって、「げちゅうさん」は露店がいっぱい町に並び、人でごった返し、お旅で「あしげ」を見るのが夢であった。夏の盛りなので豊公園の湖岸で水浴びをするのも楽しかった。
 なんで、それが「げちゅうさん」なのか。高校へ行くようになってもそれを疑問に考えたことはなく、要するに長い歴史と伝統による「おこない」や「まつり」、「ほんこさん」、「えびすこ」くらいの年中行事の買いものや娯楽の一つくらいにしか思っていなかった。「げちゅうさん」が「夏中」であることを知ったのは、戦後、いい歳をしてからのことだが、最初に上げた2人の句を見る限り、両人とも似たり寄ったりの夏中通かもしれない。
 この日の句会に、夏中さんの意味を考えさせる句が印象に残る。
 「赤き靴ちょこんと並ぶ安居寺」(川上登代子)。
 安居は雨季の意で、仏語。僧が夏、一カ所に籠もって修行すること。陰暦4月16日から7月15日までの3カ月間で、この期間を夏という。雨安居、夏安居、夏行、夏籠りのこと、と大辞泉は説明している。ついでながら同辞書には「夏」について、仏語。僧が外出せず、安居を行う期間で、4月16日から7月15日までの90日間、と記す。つまり、夏中は、僧が夏行に入っている最中ということ。
 長浜の場合、一般に広く知られているのが東本願寺派別院大通寺の夏安居だが、西本願寺派別院や虎姫の五村別院でも夏の修行はある。また、一般の門徒や信者が参詣するので、寺参りの人が絶えず、その人出をあてこんで露店が並ぶ。いわゆる縁日がこれである。正確に言えば、神仏に特定の由緒ある日で、この日に参詣すれば特にご利益がある日と信ぜられる日。
 それはともかく、僧の修行やお寺参りに関心がなく、ただただ人の波の中で、見せものや買いものの喜びに酔うというのは昔も今も変わりなく、今流行のイベントを笑えない。
 ところで、ぼくの少年期体験で「あしげ」を取り上げたが、なぜ、あしげなのか、若いころは考えることもなかった。あしげは「サーカス」のことと、後で知った。辞書に「脚蹴」とある。足で蹴るとは馬じゃあるまいし、と思いつつ、納得したのは「足芸」である。足を使ってのはらはらする綱渡りやブランコ。だから昔の人は足芸と呼んだのだろうが、苦心の命名というよりほかはない。
 先の俳句に戻ると、安居の寺の本堂前に赤い子どもの靴がちょこんと並んでいるというのだから、おばあさんが孫を連れて夏中のお寺へ参っているのであろうが、嬉しい光景である。【押谷盛利】

2013年07月25日 19:32 |


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