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医療と製薬会社の疑惑

 医科大学、病院、製薬会社、厚労省の役人をめぐる医療費のうさん臭い話は珍しくはないが、いま問題になっている降圧剤の臨床研究データの不正改ざんは余りにも生々しい。国民の医療費増大と国家財政にも影響するこの問題、徹底的追及と断固たる総括が望まれる。
 問題の降圧剤「ディオバン」は製薬会社ノバルティスファーマの看板薬で、京都府立医大の臨床研究データが、この薬の効能を過大に見せるように改ざんされていた。
 この治療薬は血圧を下げる特効を強調して年間1000億円余の売上げを誇っているが、他社の高血圧治療薬よりも脳疾患や心臓病にも効くように偽装されていた。この薬の臨床研究には京都府立医大のほか4大学も参加しており、製薬会社のノ社は5大学に奨学金を提供し、京都府立医大の研究室にも1億円寄付している。
 さらなる疑惑は、この薬の臨床研究のデータ解析にノ社の社員が別の肩書きで参加していたことである。
 以前にも、米国で使用禁止になっている血液薬剤を輸入した日本の製薬会社が当時の厚生省役人とつるんで不正利益をあげ、多くの薬害問題に発展した事件があった。国民の健康と国家の医療費を侵害する製薬会社の利益追求主義を断固清算すべきだが、それは不可能な悲願なのか。
 ところで、ぼくは、今、2013年の上半期ベストセラーの「近藤誠医師著・医者に殺されない47の心得」を読んでいるが、あまりにも衝撃的な内容で、その中に、やはり、製薬会社と国立医大医師の億単位の金の授受が指摘されている。
 近藤医師は、慶応大医学部講師。患者本位の治療を実現するため医療の情報公開を積極的にすすめ、抗がん剤の毒性を訴え、「患者よ、がんと闘うな」など多くの本を著し、昨年第60回菊池寛賞を受賞している。
 この本のなかに、「世界中で売れているコレステロール薬の病気を防ぐ確率は宝くじ以下」というのがある。
 コレステロールを下げるスタチン類は、世界中でよく売れている薬で、2009年の米国での売り上げは1兆円レベル(145億ドル)。2004年に米国ではコレステロールのガイドラインが改訂され、悪玉コレステロールの基準値を引き下げた。その背景に、改訂を決める委員9人中、8人が製薬業界から金をもらっていることが分かった。面白いことに、このスタチン類を飲んで、どんな薬効があるのか、データによれば、宝くじ以下で、本当に効いたのか、よく分からない、という結果が出ている。
 スタチン類は、長期間、服用し続けると、心臓発作のリスクを30%以上減らせると、製薬会社は宣伝するが、カナダのコロンビア大学J・M・ライト教授は、臨床試験を重ねた結果「年齢に拘わらず、スタチン類は女性には無効。中年男性では、悪玉コレステロールの値が大幅に下がったが、総死亡数は減っていない。ほとんどの人が、効果が無いどころか、健康を害する危険すらある」と警告している。
 低血糖の薬も同じ。薬やインスリン注射で血糖値を厳格にコントロールして、延命につながった、というデータは皆無。命を縮めたというデータはある、と皮肉っている。
 近藤医師は、医者の健康指導は心臓病を招く、と、これまたショッキングな指摘をしている。フィンランドの15年がかりの調査の結果についての話の中で、同医師の痛烈な一言が耳に残る。病気の早期発見、予防、早期治療、今や予防医学が大流行。痛みや苦しみがあって病院に来る人だけを診ていたら、人口減で患者が先細り。だから健康に暮らしている人の中から病気を掘り起こして、治療して業界の繁栄を図ろうとしている。すなわち「医者を呼ぼう医学」です(アスコム社刊・近藤誠著・医者に殺されない47の心得参照)。【押谷盛利】

2013年07月16日 21:02 |


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