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古代ローマの大衆浴場(見聞録)

 国民主権の民主主義国家の宿命なのか、政治家は国民の支持や人気を集めるため、ムチを隠してアメを使う。
 最近の例では民主党が自民党政権を追い落とした2009年の総選挙。「政権交代で無駄を省きます」と宣伝し、「子ども手当」「高速道路無料化」「農業所得補償」などを訴えた。
 国民の支持を取り付け、政権交代を果たしたが、人気取りのために富をばら撒いたのは現代政治だけでない。古代ローマでは、皇帝が民衆の不満を抑え、人気を集めるためにパンを配り、闘技場で決闘などの見世物を開催した。
 支配下に置く周辺属国から富を搾取し、ローマに運び入れ、市民にばらまいたわけだ。ローマ市民は喰うに困らず、闘技場という娯楽も与えられ、堕落していった。民衆の堕落と衆愚政治の代名詞として「パンとサーカス」と言われるゆえんだ。
 ここで書きたいのはそんな衆愚政治についてではなく、古代ローマで民衆の心をつかんだのは何もパンや闘技場だけではない、ということ。地中海沿岸に残る数々の遺跡に見られるように、公衆浴場もまた民衆の人気取りの道具だった。
 その公衆浴場を描いた漫画「テルマエ・ロマエ」が人気を集め、今年映画化されることになった。衆愚の古代ローマにおける公衆浴場というテーマが気になり、先日、読んでみた。
 主人公の浴場設計技師が現代日本にタイムスリップし、民衆の心をつかむ公衆浴場のヒントを得る物語。フィクションなのだが、古代ローマの支配者層が民衆受けと、自身の見栄、欲のために浴場整備を行う点が、今の人気取り政治と重なった。
 この漫画では浴場をローマ市民の憩いの場として描き、現代日本に通じるのが面白い。しかし、不思議なのが、今のローマにはこういった公衆浴場は残っていないし、そういう文化も継承されていない。なのに、ユーラシア大陸の東の果ての日本に古代ローマ人が愛した公衆浴場文化が生きている。そこを結んだのがこの漫画の面白さであり、日本の浴場や温泉文化の奥深さを世界に誇りたくなる。
 なお、「テルマエ」はラテン語で浴場、「ロマエ」はローマを意味する。

2012年01月24日 16:01 |


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