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「ぼけたらあかん」(見聞録)

 「年をとったら出しゃばらず 憎まれ口に泣き言ごとに 人の陰口愚痴言わず 他人のことはほめなはれ 聞かれりゃ教しえてあげても 知ってることでも知らんふり いつもアホでいるこっちゃ」
 先日、「ぼけたらあかん」とタイトルされた人生訓が近所に配布されていたと、社員が会社に持ってきた。含蓄とユーモアのあるその文句、そのリズムをたちまち気に入り、コピーして手元に置いている。
 「勝ったらあかん負けなはれ いずれお世話になる身なら 若いもんには花持たせ 一歩下がって譲るのが 円満にいくコツですワ いつも感謝忘れずに どんな時でもヘイおおきに」。
 関西弁のこの人生訓は6章まである。
 作者は明治期に大阪市内で古本店「天牛書店」を立ち上げた天牛新一郎翁。
 翁は「高く買って、安く売る」をモットーに良心的経営を行い、若き日の折口信夫、武田麟太郎、長谷川幸延、藤沢桓夫らが「われらが古本大学」と呼んで通い詰めるなど、文学青年のたまり場として愛された。日本橋店の2階に設けた100畳の大広間を演芸会場として開放し、素人浄瑠璃などが演じられた。常連客の織田作之助は出世作「夫婦善哉」で天牛書店を登場させている。
 司馬遼太郎や安藤忠雄も訪れ、永六輔は「僕は大阪に来て『天牛』によると、やっと大阪にいるという感じがしてくるのである」と語っている。
 これほどに文学人に愛された名物店主が94歳で新聞紙上に投稿したのが「ぼけたらあかん」だった。
 講演会や仏事の説法で紹介されたり、亜流が出回ったりと、今でも幅広い世代で共感を呼んでいる。
 「お金の欲は捨てなはれ なんぼゼニカネあってでも 死んだら持っていけまへん あの人はええ人やった そないに人から言われるよう 生きてるうちにばらまいて 山ほど徳を積みなはれ」
 「昔のことはみな忘れ 自慢ばなしはしなはんな わしらの時代はもう過ぎた なんぼ頑張り力んでも 体がいうことききまへん あんたはえらいわしゃあかん そんな気持ちでおりなはれ」
 翁の人生訓が心にこうも響くのはなぜだろうか。

2011年11月24日 18:46 |


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