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社会が病み人が狂う世

 不可解な殺人事件や自死を取り上げるたび悲しくなり腹が立つが、今の世の異常さはただごとではない。このまま手を拱いていては、この傾向がますます流行するのではないか、と、これが心配である。
 今の世は平和を口にし、物の豊かさと快適な生活を謳歌するが、社会が病み、人が狂いつつあるのに案外無頓着である。
 社会がどう病んでいるのか、どんなふうにまともでないのか。
 例えば飲料水の重要さが指摘されるが、昔のように地下水や河川の水が飲めなくなった。極端なのは山の水までが忌避される。空気や土壌の汚染が清浄であるべき水をも飲めなくしてしまった現代社会の科であるが、このため、魚も野菜も汚染が心配される。今の人間は空気、水、食料を通じて健康を慢性的に傷つけているがその反省と改善について政治も社会もほお冠りしているのはなぜか。いわば汚染の垂れ流しが、肉体的、精神的両面から健康の障害となり、心の狂いの原因となっていることに気がつかない。気づいていても見てみぬふりをしているのではないか。
 人は便利な世の中、スピードと快適さに酔っているが、そのことは手足や頭脳を使わず楽して生きることを幸せと勘違いする。車社会になって歩くことを忘れてしまった。電化製品の発達と普及で、生活上、考えたり、労働することをしなくなり、何から何まで指で押すか、自分の影を動かせばドアは勝手に開閉し、洗濯、炊事も省エネである。
 ケータイやパソコンが人間の目や耳、口の代弁をしてくれる。お金を払うにも切符を買うにもいちいち財布から出さなくてもいいシステムに乗り、時間があり余るのではないかと思われるのに、だれもが時計を気にしながらいらいらして、せっかちな日暮らしを続けている。
 いらいらというストレスは現代人の特徴であるが、これが諸病の因となり、とりわけ心臓や内臓によくない。精神病の欝は特にストレスと関係が深い。幸せであるべき豊かさと高度な文化社会が、結果として人を病気と薬漬けにし、それが心の病気にまで作用し、あげくは人を殺したり、自分を殺めることになる。
 社会の変革に目を転じよう。家族制度はなくなり、家族の心が子の成長とともにばらばらになった。家を守り、先祖を崇める古来からの伝統が消えた。集落内の親類、知己、隣人を通じての助け合いの美風も消えた。村を町をみんなの共同体として愛し守る気風がなくなり、路上や河川に平気で物を捨てる。地域の道や河川の管理は役所の仕事として、文句は役所にいうが、自分が清掃したり、汚さないという公共心はいつからか消え失せた。
 個々の人間の家庭や生活、服装は文化的で、きれいかもしれぬが、一歩外へ出れば地上を汚し、物を捨て、騒音、臭気、不快指数の高まる環境に追い込んでゆく。
 近代的な建物、施設のかげで、自然が破壊され、みどりが少なくなり、そこに住む人間関係が希薄になってゆく。人の心が物質的になり温かみがなくなってゆくから、人は孤立感を深め、逆境になればうらんだり、滅入ったり、絶望したり、ときには反社会的行動をとる。あらゆる意味での汚染社会に生きる必然の結果として、いらいらや精神疾患、自己喪失などの負の部分を醸成してゆく。
 社会のありよう、生活のありようを根本から見つめ直すことが他殺、自殺をなくする一つの大切な方向であろう。【押谷盛利】

2011年11月14日 18:28 |


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