組織は40年でダメになる
新の包丁も使わねば錆びる。親からもらった手足も使わなかったら鈍くなる。頭もそうである。よい脳味噌がいっぱい詰まっているはずなのに有効に使わなかったり、磨くことを惜しめば早くにもうろくする。
しかし、人間の体でも機械でも使えばいつまでも長持ちし、機能が持続するものではない。今は亡き司馬遼太郎は「組織というものは40年でダメになる。懐中電灯の電池の切れるように」と蘊蓄のある言葉を残している。
年寄りは耳が遠くなるが、耳だけの話ではない。眼も疎くなるし、歯も悪くなる。ものが呑み込みにくくなったり、手足がさっさと動かない。心臓があやしくなったり、トイレが近くなったり、漏らしたり、寝つきが悪く、物忘れがひどく、と書けば踏んだり蹴ったりの惨状だが、すべては、これ賞味期限が切れかけた証拠である。
補聴器の専門家に聞いた話だが、人間の耳で一番よく聞こえる年齢は20歳までだという。だから赤ちゃんや幼児の耳は飛びっきりよく聞こえるはず。大人が子供に聞こえぬよう声を落としたり、ひそひそ話をするが、子供の耳にはちゃんと聞こえている。その鋭い聴感覚も20歳を超えるとだんだん鈍くなり、40歳になると、がくんと低下する。別人の耳かと思うほど耳が遠くなる。さらに40年経過して80歳になると信じられないくらい聞こえにくくなる。
人間のすべての機能は40歳でガタンと落ち、さらに40年後の80歳には情け容赦なくダメになってゆく。修繕しながらおだてたり、ごまかしたりして使うわけで、めがね、入れ歯、補聴器、杖、車椅子が必要となる。外形だけでなく、肉体の中へ入れる多種多様なクスリの厄介にもならねばならぬ。
賞味期限が過ぎれば、ご用済みとなるわけで、本当は「おやすみ」をもらって、元の天国へ旅立つ勘定になるが、現代医学は「ハイ、サヨナラ」と天国行きの切符を発行しない。だまし使いしている間は、神さまから「もう少し時間をやるから最後のご奉公をしなさい」と特別のご配慮を頂いたようなものである。だから延命医療などというものは邪道であり、もってのほかである。【押谷盛利】
2011年07月15日 17:33 | パーマリンク
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