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豊郷小を訪ねて(見聞録)

 「東洋一の学校」と呼ばれた豊郷町の豊郷小学校を27日、訪れた。
 一時、解体の危機に陥った校舎は改修されて、誰でも自由に出入りできるよう開放されている。
 学校を訪れるのは、2002年のあの騒動以来となる。
◇校舎は、1937年、同校の卒業生で、「伊藤忠商事」や「丸紅」の前身にあたる伊藤忠兵衛商店の専務だった古川鉄治郎氏が私費を投げ打って建築し、寄贈した。校舎、講堂の建築設計はアメリカ人のウィリアム・メレル・ヴォーリズ。
 当時としては珍しい鉄筋コンクリート構造で、その外観から「白亜の殿堂」とも呼ばれ、同町のシンボルとして住民から愛され続けていた。
 しかし、1999年に大野和三郎町長が就任してから暗雲が立ち込めた。校舎の耐震性欠如を理由に解体、新築を計画したからだ。
 地元住民は歴史ある校舎の解体に反対し、町長と対立。住民運動が実を結び、2002年には、裁判で解体差し止めの仮処分が出たにもかかわらず、町長はこれを無視し、解体工事を強行。業者が校舎内に入り込んで、窓ガラスを割るなど、暴力的行為に乗り出した。
 住民グループは校舎を守るために校舎に泊り込んだ。これは全国ニュースでも取り上げられ、町長は批判が高まったことを受け、方針転換。校舎の保存を決める一方で、新校舎の建設を進めた。
 後に、町長と業者7人は建造物損壊の容疑で書類送検されている。
 町長はリコール運動で解職されたが、その後、返り咲いた。
◇中山道に車を走らせると、改修工事で真っ白な外観を取り戻した校舎が見えてくる。70年以上経った今も、飽きのこないモダンなデザインだ。
 校舎内に入った瞬間、タイムスリップしたような感覚と懐かしさに包まれる。木の香りがたまらない。板葺きの廊下の古びた香りか、ワックスの臭いか。
 階段の手すりにはイソップ童話「兎と亀」をモチーフにしたブロンズ製の兎と亀が取り付けられ、階段を登るに連れて物語が進展してゆく。ヴォーリズの温かさと工夫が伝わってくる。
 1階には図書館や教育委員会が入居し、それ以外の部屋は一般開放され、自由に見て回れる。
◇今、軽音楽部の女子高校生を描いたアニメ「けいおん」に登場する学校にそっくりということで、全国からファンが見学に訪れている。「聖地巡礼」と言われ、備え付けのノートを見れば、関東、東北、四国など遠方からもファンが詰め掛けていることがうかがえる。
 駐車場にはアニメのイラストを描いた車が停まり、3階の音楽室は関連グッズや楽器で「けいおん」一色。カメラを手にしたファンが、盛んに撮影していた。
 8年前の住民運動が忘れ去られたかのような、異色の注目スポットとなった豊郷小学校だが、校舎内は必見の価値有り。

2010年06月29日 15:54 |


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