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天人の五衰と盛者必衰

 どんな人間でも自分で呆けようと思うものはいないし、いつか呆けるかもしれないと思うこともない。ましてや、認知症の施設に入れられたあげく、火事の災難で命を落とすような不幸は考えたこともないはず。
 昔から聖者が諭したようにこの世は無常である。煩悩を解脱することも至難のことだが、わが身を健康に、いつまでも活力ある生き方を望んでもかなわない。
 平家物語に「沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりを表す」とある。盛者とは勢力の強いもの、勢いの盛んなものをいう。勢いの盛んなときは自惚れて、天下国家を自分で動かしているように驕るし、一般の人間なら死がそこに迫っていることなど思いもよらない。
 しかし、盛者必衰の道理は、どんな人間でも例外なく受けねばならぬ。
 ぼくが、いつも健康のことや、人生の生き方を述べるのは、暮らしの知恵のなかで、少しでも幸せな生き方を、と念じるからである。世の中には「幸せに生きる話」や「健康な生き方、丈夫な体」についての本は数知れずあり、心の癒しともいうべき宗教関係の本もたくさんある。
 しかし、いくら人の話を聞いても、あるいは名著を読んでも帰するところは実践にある。実行しない限り、知識として存在はしても実質的には何の役にも立たない。
 仏教語に「五衰」という言葉がある。天人の死に際して現れるという五種の衰えの相をいう。天人とは天上界に住む人、人間界を超越した人、仙人などをいう。
 その天人が死を迎えるときは五つの衰えの相が現れるというのである。
 涅槃経では①衣裳にあかがつく②頭上の花冠がしぼむ③からだが臭くなる④脇の下に汗が流れる⑤本来いるべき座にいることを楽しまない。これが天人の五衰で死の前兆だと教えている。
 一つの衰えでも気にかかるのに五つもの衰えが出ては無惨である。
 生き物である以上、必ず衰えることになるが、問題はいかにこれに立ち向かうか、抵抗するかである。いまの時点で30%に抑えるか10%に抑えるか、要するに衰えの速度をゆるめ、できることなら現状を維持、もしくは若返りを計るかである。
 この時点での心の持ち方、生活のあり方は直接的には身心の健康に影響するし、長い目でみれば本人はもとより、家族の幸せを左右する。
 極めて簡単なことだが、運動することが奨められても日常生活でそれを実践する人は少ない。特別にスポーツすることを指すのではなく、なるべく車や自転車に乗らず歩くこと、その他、手足を使うことを積極的にやる。タバコは吸わない。深酒はしない。食事はしっかり、そしてよく噛み、野菜を多く。
 これだけのことを守っても衰えの防止に役立つが、健康なものは健康を過信して実践をしない。どたん場でうろたえてもときすでに遅し。【押谷盛利】

2010年03月17日 15:35 |


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